予定調和
トウマの1回戦第1試合が終わってからは、どうやら配信の都合上、いくつかの試合を同時進行で行い、トーナメントはそこそこスムーズに進んでいた。
そして、レイトの番も比較的すぐにやってきた。
『あっ、僕の番だ』
通信を繋げて駄弁っていると、レイトがそんな声を上げた。
どうやら瞬殺劇がこれから始まるらしい。相手には少し同情する。
「わかった、行ってこい」
『あいよ。僕にはトウマさんみたいな魅せプはできないけど、代わりに瞬殺してくるよ』
レイトはそう言って通信を切った。
きっと運営と通話を始めたのだろう。トウマは配信の方の音声を上げて、中継を見る。
『続いての試合の選手は、レイト・ムロフシ選手とライトニングビルスター・ガーディアン? これはまた聞いたことがないネメシスですね……』
『自分、嫌な予感してきましたよ』
またトウマみたいなのが出てくる、という意味で。
実際、配信のピークは先程のトウマの試合であり、それ以降の戦闘はそこそこ盛り上がったが、トウマの試合ほどではなかった。
変形で魅せ、ワンセコンドイグナイトで魅せたあの試合は視聴者にも大分ウケていたらしい。
だとすると、レイトの試合はどれだけウケるのか。
多分、盛り上がる前に終わるだろう。
『それでは、選手の準備が整ったようです。レイト・ムロフシ選手の出撃と同時に試合開始です』
さぁ、全一の暴力の時間だ。
『レイト・ムロフシ。ライトニングビルスター・ガーディアン! 目標を撃ち貫く!!』
レイトの口上の後、隣のライトニングビルスターが出撃した。
さぁ、相手はどれだけ持つか。
『おぉ!? ライトニングビルスターも航宙戦闘機の姿をしている!? ということは、まさか!!』
『変形したぁ!! あの機体も可変機!!? しかも狙撃機だぁ!!』
『狙撃機は1対1の戦闘では相当不利ですが……しかし、あの背中の2枚の盾は何なのでしょうか? デッドウェイトになるだけだと思──』
『──狙い撃つ!』
『おや? レイト選手、相当離れているのに撃った!! これは当たら…………は?』
『あ、当たったぁ!!? あ、あの距離でコクピットに一撃だぁ!!?』
10秒も持たなかった。
やっぱこうなるよな、とトウマは苦笑。そしてチラッとモニターの端っこに映る観戦中のカタリナを見ると、彼女は大はしゃぎしていた。
婚約者がいつも通り強くて嬉しいのだろう。
『機体の情報が多すぎて解説する前に試合が終わってしまったぁ!! 紛れ当たりなのか狙ったのか……! 相手に何もさせずに勝ったのはライトニングビルスター・ガーディアン! 腕と一体化したスナイパーキャノンの担い手、レイト・ムロフシ選手だぁ!!』
まぁ、分かりきっていたことだ。
トウマとて、イグナイトシステムを切ってもレイトには勝率4割が限界。サラ並の天才でなければあの一撃は防ぐことはできない。
避けることは誰にもできない。
配信のコメント欄は盛り上がるどころか荒れている。紛れ当たりだ、とか狙っていた、とか。
まぁ、そんなのはどうでもいい。決勝までに彼が狙って撃っている事は嫌でも分かるだろう。
そう思っていると、横にライトニングビルスターが戻ってきた。
『はいおつかれー』
「おつー。やっぱお前反則だわ」
『でも、こういう荒らしを求めて参加したんでしょ?』
「まーな。さて、試合の中で腕温めて決勝で勝たねーとな」
『そう簡単には勝たせないよ。優勝トロフィーは僕の愛しい婚約者に渡すんだからね』
「そう言われると絶対勝ちたくなるなぁ!?」
そして、大会は進む。
トウマとレイトは順調に勝ち抜いていき、無名の傭兵と無名の使用人は見事今大会のダークホース。優勝候補に名を連ねた。
トウマは極力魅せて戦い、レイトは試合開始直後に扱いづらいスナイパーキャノンで瞬殺。
コメントでは決勝もそれで終わるのでは、なんて言われていた。
──そうして、試合は決勝を迎えた。
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