トーナメント開始

「それで、無事でしたか?」

「リンチにされました」

「…………トウマ、あなたはやはり鍛えた方がいいですよ。割とマジで。あとそういう無謀なことはやらないようにしてください。馬鹿なんですか?」

「いや、騎兵団に混ざって頑張ってるんですけど、如何せん基礎ができてなくて……あと、本当に今回のは反省してるんでもう許して……」

「そうですか……では、護衛を雇う事をオススメします。セレスとか、今はフリーですよね? 彼女、メイド兼特殊部隊員みたいなものですから、腕は立ちますよ」

「そうっすね…………ちょっとマジで考えます」


 港でレイト、カタリナ、メルと合流したトウマはもうすぐ始まるであろうトーナメントに向けて備えていた。

 具体的には持ってきていたパイロットスーツに身を包み、いつでも機体に乗れるようにしていた。

 その最中でトウマは軽くメルと話していたのだが、そのまま先程のリンチの件の話になり、メルに護衛を雇うことを勧められた。

 ちなみにセレスは現在とあるコロニーでとある男を監視中なので、言葉は濁しておいた。

 そうこうしていると、端末に連絡が来た。


「おっ、来たな」


 端末への連絡はトーナメントの運営から。

 専用のチャンネルを用意したので、ネメシスか船で通信を開いて待機しておいてくれ、との連絡だ。

 それはレイトにも届いていたようで、レイトは端末を見てからカタリナに一言告げて彼女から離れた。


「よし、そろそろだな」

「だね。とっとと準備しようか」

「そうだな。で、レイト。お前なんで燕尾服?」

「カタリナお嬢様にこっちの方で出てくれってねだられて……」

「そ、そうか……その、大丈夫か? Gとか」

「ティファさんがコクピットを改修してくれたからね。楽勝」

「ならいいか」


 カタリナからのお願いでパイロットスーツではなく燕尾服に着替えたレイトはライトニングビルスターに乗り込んだ。

 それに続いてトウマも、補給を頼んでいた業者に礼を言い、この後も戦闘の度にペイント弾や推進剤の補給を頼むので、この後もよろしく、と告げてからユニバースイグナイターに乗り込んだ。

 コクピットでチャンネルを開くと、運営の人間との通信が繋がった。


「あー、こちらトウマ・ユウキとユニバースイグナイター。準備完了だ」

『はい、確認しました。トーナメント表は確認されましたか?』

「いや、まだだ」

『では、サイトへのリンクを送るので、そちらから確認をお願いします。出撃の際はこちらから声をかけますが、それまでは待機となります。一応、大会は中継してますので、中継配信を目安に出撃は遅れないようにしてください』

「わかった。じゃあ通信はこのまま、こっちは配信を見てる」


 という事でトウマは中継配信を見ることにした。

 視聴者数はそこそこ。

 今回はバトル・オブ・ネメシスの運営が協賛のゲームであるためか、コメント欄はバトル・オブ・ネメシスのプレイヤーのコメントらしきものが大量に流れている。

 機体の調整はよ、とか、次の解禁機体はよ、とか。


「なんかゲーマーってどこも民度は同じだな……」


 今回の賞金は200万。そして賞品はバトル・オブ・ネメシスに優勝者のネメシスの実装。

 果たしてこの中に賞品の方を楽しみにしているゲーマーや、賞品の方を目的に大会に参加した者はいるのだろうか。


「あっ、そういやトーナメント表見てなかった……」


 という事でトーナメント表を確認。

 トーナメント表には50人以上の参加者が記載されており、トウマとレイトの名もその中にあった。

 どこでレイトと当たるのかを確認すると、どうやらトウマとレイトは勝ち進めば決勝でバトルする事になる事も分かった。

 楽しみはお預けか、と楽しげにトウマは笑った。


『今回の大会は実況としてバトル・オブ・ネメシスの有名プレイヤーの──』


 トーナメント表を見ている間も配信は進んでいる。どうやらゲームの有名プレイヤーが実況解説をするらしい。

 果たしてあのゲームの有名プレイヤー程度が自分達の戦いを解説できるのか。そこは疑問だ。


「さて……何気に俺の1回戦、いっちゃん最初なんだよな。準備準備っと」


 何気に1回戦第1試合に選ばれたトウマはとっとと準備を進める。

 とは言っても、訓練用のプログラムを起動しておくだけだ。


『それでは、そろそろ1回戦が始まります!』


 さて、出番だ。


『トウマ・ユウキ選手、発進は可能ですか?』

「問題ない」

『相手選手は宙域で待機中です。そのため、トウマ選手が発進した時点で戦闘開始となります』

「わかった。じゃあ、カウントはそっちで頼む」

『わかりました。それと、選手同士で通信を繋げ、その通信を配信で流したいのですが、構いませんか?』

「構わねぇよ。どこに繋げばいい?」

『こちらで自動で繋げますので大丈夫ですよ。あちらからも了承の連絡が来たので、もう繋げて配信に乗せてしまいますね』


 という事で、自動で通信が繋がった。

 とは言っても相手もこちらも無言なのだが。

 そして配信の方も戦闘開始を今か今かと待っている。


『それではトウマ選手。こちらのカウントにあわせて出撃を』


 その言葉にトウマは頷き、エンジンに火を入れる。


『5、4、3……』


 後の言葉はない。

 故に、こちらでタイミングを合わせて、発進する。


「トウマ・ユウキ、ユニバースイグナイター! 出撃する!!」

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