到着
「やーいお前の婚約者ゲロイ」
「死ねやオラァッ!!」
「前が見えねぇ」
それから十数分後、トウマ達はコロニー内に入っていた。
港は本来、何時間も待たされる場所ではあるが、ネメシスのような小さな機体なら案外すぐに入ることができる。
そのためスムーズにコロニー内に入ったトウマはレイトの拳により梅干しみたいになった顔で勝ち抜きトーナメントへの登録を行った。
登録はコロニー内に入れば可能であり、機体名、パイロット名の登録だけで済む。
「よし、これで登録完了っと。ところでレイトくんや。これはやり過ぎでは?」
「あ? 僕の婚約者に対して次変な事言ったらこんなもんじゃすまねぇかんな? わかってんのか???」
「うっす」
なんでこの愛を真正面からあの子にぶつけてやらねぇかなぁ、とトウマは少し呆れる。
ちなみにカタリナはトイレで口を濯いだりしている最中である。メルはそれの付き添い。
「ところでお前、カタリナ様との恋愛事情はどんなもんなのよ」
「え? 普通に休日は僕が王都に行ってデートしたり、カタリナお嬢様がこっち来たときはこっちでデートしたり」
「お泊りとかは?」
「できないできない。まだ婚約者って段階だからね。未婚の子には手ぇ出せないの」
「ふーん。それでいいのか?」
「寧ろ、これが精一杯だからね。本来は貴族の子と使用人がデートなんてできないんだよ? 最大限色んな方面が譲歩してこれ」
「なるほどねぇ。貴族ってやっぱお硬いなぁ。サラが逃げるわけだわ」
「あはは。トウマさんは絶対に合わないね」
しかし、こう聞いているとやっぱりレイトってカタリナにベタ惚れである。
最初はどうしようとか言っていたのに1年半でこれである。
なんて思っていると背後から気配が。
よし。イタズラしよう。
「……ところでカタリナ様の事、どんくらい好き?」
「え、言う必要ある?」
「うん。おせーて」
「…………ぶっちゃけるとこの世で一番愛してます」
「そりゃまたどして?」
「いやだってさ? あんな可愛い子がこっちに好き好き言ってくるんだよ? 恋愛経験皆無のオタクなんて秒で落ちるさ。そりゃ、普段はこっ恥ずかしいからおふざけでもない限り、ここまで直球には言わないけどさ……」
「なるほどね? ちなみに後ろ見てみ?」
「ん?」
レイトが後ろを向いた。
そこには顔を真っ赤にしてお目々をぱっちりさせたカタリナと、ニヤニヤしているメルが。
「ピャーーー……」
しかもカタリナは顔を真っ赤にしたまま完全停止。変な声を上げて茹だっている。
先日ふざけてカタリナに愛を耳元で囁いたときみたいな事になっている。
それを見たレイトは笑顔でトウマの方を向き、顔面パンチ。再びトウマの顔面を梅干しにした。
「いっそ殺せぇ!! 殺せよぉ!!」
『ごちそうさまです』
「黙れ社不傭兵と愉悦メイドォ!!」
レイトくんの悪口が絶好調である。
「どうしますメルさん。この2人ホテルの一室に閉じ込めます?」
「いいですね。お2人とも奥手ですから」
「ほんとに黙んねぇとライトニングビルスターで撃ち抜くぞテメェら!!? あとカタリナお嬢様、いい加減再起動してください!!」
流石にレイトがマジギレしかけたのでこれで揶揄うのは終了。
カタリナはメルが猫騙しで無理矢理再起動をかけてなんとかなった。
「で、だ。エントリーは完了したけど、こっからどうする? 推進剤やペイント弾と専用ライフルは業者に頼んで補給してもらってるから、ネメシス関連でやれることは無いな」
そう言いながらトウマがユニバースイグナイターの方を見ると、今まさに推進剤の補給などが始まっていた。
補給が始まる前には業者の方からしっかりと連絡が来るため、そこそこ安心ができる。
後は所定の時間になったら今回のトーナメントの役員が知らせに来るため、あちらの要請に従って発進すればいい。
「んー、そうだね……どうしよう?」
「やること無いんならお前とカタリナ様でデート行ってきたらどうだ? 2人とも折角の休日だろ?」
「それもそうだね。行こっか、カタリナお嬢様」
「あ、うん。そだね」
「メルさんも、2人の護衛よろしく」
「えぇ、任されました。それからあなたも、お気をつけて」
「はいよ」
レイトとカタリナが手を繋いで港から離れていき、メルもそれに続いた。
それを見送ってから、トウマは懐に手を忍ばせてから歩き始める。
向かう先はユニバースイグナイター……ではなく、ライトニングビルスターの元だ。
****
あとがきになります。
今回もQAをば。
Q:傭兵って宙賊になられるよりはマシ程度?
A:そんな感じです。よっぽどの事がない限りはならない方がいい、なるんなら荒くれ者に揉まれて殺し合いが起こる事も覚悟しなきゃいけないって感じなので。
前話みたいなのは割とよくある話なので、基本的に倫理観ゆるゆるの馬鹿ばかりですね
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