問題発覚

 それから2日、トウマ達は温泉に浸かったり部屋でゴロゴロしたり美味しいものを食べたりして思い思いに過ごした。

 あの少女、トウマ達は名前を知らないが、ミサキはあれ以降現れなかった。

 まぁ、現れなかったのならそれまでの縁だったという事だ。

 心配ではあるが、これ以上肩入れするわけにもいかない。

 という事で、3人は宿をチェックアウト。そのまま船の前まで帰ってきた。


「いやー、案外良かったわね、ココノエ」

「だな。次はどこ行く?」

「もっかいリゾートコロニーの予定。今度はロールを拉致ってね」

「ロールさん、湯水のように使われる金に胃を痛めるんだろうなぁ……」


 車はレンタカーなのでそのまま所定の場所に移動させ、3人はそのまま船へ。

 の、前に船の横に置いてある小さなコンテナを確認する。ここにはミサキが土産を置いていた筈だ。


「まぁ、中は確認しなくてもいっか。盗られてたら盗られてたで」


 と、言いながらティファはコンテナの中は後で確認すればいい、と思ってコンテナはそのままに。


「トウマ、ユニバースイグナイターであのコンテナ、格納庫に入れておいて」

「わかった……けど、返さなくていいのか? あのコンテナ」

「あーいうのって使い終わったら他のコロニーで返せばいいのよ。所謂レンタルってやつ」

「はーん、なるほどね。んじゃ、イグナイターで運んどくよ」

「よろしく」


 普通なら重機を使わないといけない工程もネメシスがあれば大丈夫。

 ユニバースイグナイターに乗ったトウマは格納庫から出てコンテナを拾い上げ、それを格納庫の適当な所に固定。

 さて、あとはコロニーから出るだけだ。


「一応、格納庫と船内部の生体確認も行って…………よし、問題なし」

「生体確認ねぇ。義務だからやってるけど、まず引っかからないよな」

「まーね」


 そんな事を駄弁っている内にコロニーから船は離脱。そのままコロニーから離れていった。


「さて、じゃあハイパードライブ…………ん?」

「どうした?」

「いえ、これは…………こっちから無理矢理通信回線をこじ開けて繋げるわ。チッ、ネメシスの内部までは生体確認の義務は無いからって怠ったのがマズかったわね」


 ティファは舌打ちをしながら通信を繋げる。勿論、コクピット内の様子がわかるようにカメラも付けて。


「さぁて…………そこで何してるのかしら? 密航者さん?」

『ひっ!? な、なに!? なんで!? 見つかった!?』


 船のモニターに表示された、コクピットの様子。

 そこに映されたのは無人のコクピットではなく、少女が困惑しながら座っている様子。


「お前…………あの時の」


 2日前に別れたっきり、姿を見なかったミサキが座っている様子だった。



****



 あの晩、ミサキはトウマ達のお土産を詰めた小さなコンテナの中に潜り込んだ。

 何日後に彼等がこの船に戻ってくるかは分からない。それに、船が出るときの生体確認でバレる可能性も大いにある。

 そんな、見つかる方の確率が高い賭けに出た。

 途中、安そうな土産を1個だけ摘んで、時折水を飲みに近くの公園まで移動して、なんとか生きながらえながらコンテナの中に潜んでいた。

 そうして、トウマ達は帰ってきたのだが、運はミサキに向いた。

 まず、ティファはコンテナの中を確認しなかった。しかも、鍵がかかっているかも確認しなかったのだ。

 更に、そのまま格納庫の中へ入れてくれた。

 そして、ユニバースイグナイターに乗っていたトウマが格納庫を出たタイミングでミサキはコンテナの中から脱出した。


「や、やった、見つからなかった……! あ、あとは……」


 そしてミサキはコンテナからの脱出から生体確認がされるまでの短い間に格納庫を見渡し、次の潜伏先を探した。

 コンテナ、変な機械、3機のネメシス。

 その中の青と白のネメシスに目をつけ、コクピットハッチまでよじ登り、ハッチのパネルを確認し、それっぽいボタンをポチッと。

 その結果開いたコクピットハッチからネメシスのコクピットに潜り込み、これまた適当に操作。

 すると、コクピットハッチが閉じ、ネメシスが起動するという、今までの屑運を払拭するような激運に見舞われたのだ。

 だが、運が続いたのもそれまで。

 生体確認は逃れられたが、ハイパードライブ前にティファにイグナイターがアイドリング状態になっているのを見つかり、通信回線をこじ開けられ、犯行がバレた。

 と、言うのがこの騒動のオチだ。


「はぁ……真面目に仕事してるかと思ったら、まさかネメシス泥棒なんてね。同情はするけど、失望もしたわ」

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