金ならある
「……にしても、結構買ったわね。ロールのお土産もそこそこの量になっちゃったし」
「だな。カートリッジから特産品から色々と……」
「まぁいいでしょ。最近あの子、仕事に追われまくって拗ねてたみたいだし」
ロールはここ1年半で昇進……はできていないが、仕事が結構忙しくなったらしく、1月に一度顔を合わせる毎に毎回泣き言を漏らしている。
ハゲ上司がどうのだとか、近くのコロニーのズヴェーリ退治がこうのだとか。
最近はストレスのせいで体重が減ったり増えたりして色々と大変らしい。ティファとしてはご愁傷様、としか言えないが。
「ここを出たら次はロールを連れてリゾートコロニーに行くのもいいかもね。わたし達の奢りで」
「それはいいけど、あの人、前にそれを断ったって聞いたが」
「断ったっちゃ断ったけど、息抜きは必要じゃない? わたし達だってお金は使わなきゃいけないし」
「そういうもんかなぁ。別に税金払ってんだからいいと思うんだけど」
「それはそれ、これはこれよ。もうネメシス何機作れる分の貯金があるのか分かったもんじゃないもの」
「そりゃそうだが……ってかリゾートコロニーって幾らかかるんだっけ?」
「前は1週間で1人頭500万とか。だから、ロールの有給的にも同じくらいはかかると思うわ」
「500万か……いかん、安くないはずないのに安いって思える。俺まで金銭感覚が……!!」
「一度壊れた金銭感覚って戻らないわよね……マジで……」
例の金銭感覚測定ゲーム以降、なんとか金銭感覚を昔の物に戻したティファだからこそ言える言葉だ。
壊れた金銭感覚は中々戻らない物である。特に、現金を紙幣などではなく電子マネーでしか扱った事しかない世代にとっては、より一層。
「……にしても買い過ぎたわね。これだと部屋の中まで運ぶならまだしも、持って帰るのが中々めんどくさそう」
「あー、確かに。どうする? 宿の人に運んでもらえるように手配してみるか?」
「そういうのやってるかしら? 困ったもんね……」
増えすぎた手荷物を見てうーん、と首を傾げる2人。
宿の人をチップで叩けばやってくれるかもしれないが、そういうちょっと金に物を言わせた行為は本当にどうしようもなくなった時の最終手段にしたい。
宅配業者を見繕ってもいいのだが、わざわざ両手いっぱい程度の荷物でそれを呼ぶのも勿体ない。
そんな感じでどうしたものか、と歩きながら困っていた時だった。
ふと、トウマの服の裾が誰かに摘ままれ、引っ張られた。
「ん?」
振り返ってみると、そこに居たのはティファよりも少し身長が低い少女だった。
ティファみたいな合法ロリではなく、恐らくまだ本当に子ども。
「お兄さん、よかったらあたしがお兄さんの船まで荷物運んであげよっか?」
少女の身なりは、どっちかと言ったら貧乏な感じ。
不潔、という程ではないが着ている服はちょっとボロが目立つ。典型的な貧乏少女、と言うべきか。
別に汚いわけじゃないので服の裾を掴まれてもうげっ、とは思わないが、ちょっと訝しんでしまう。
「そりゃ運んでくれるならありがたいけど……そのままこれを持って盗んでも、大していいモンは入ってないぞ?」
「盗まないよ! あたしの家、港の近くだからさ。よかったら持って行ってあげるよって。勿論、お金は貰うけどね?」
「ふーん……」
チラッとティファの方を見る。
彼女は好きにすれば? とトウマに視線を向けた。どうやら自分はあまり関与する気はない様子。
「……なら持って行ってもらおうかな。で、幾ら欲しい?」
「えっと、こんだけ!」
少女が自分の端末らしき、明らかに古臭くてボロボロな端末を操作してホロウィンドウを表示する。
そこに書いてあったのは1万という数字。ただの荷物運びにしてはいささか値が張る。
宅配業者に頼めばこの10分の1程度の値段でしっかりと運んでくれることだろう。
「……まぁいいか。ほらよ」
だが、トウマは暫し悩んだ後、端末越しにその金額を払った。
****
あとがきになります。
そういえば設定は作ってたけど描写忘れてた……と思った案件がコメントできてたので、こちらで回答します。
Q:船の中って重力発生してたっけ? してなかったらけん玉遊べなさそう
A:船は基本的に常時重力が発生しています。重力発生装置に専用のバッテリーが繋がってて、余程船を放置しない限りは重力が常に発生してる仕様です。ただ、唯一格納庫は無重力化が可能です。
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