店巡り、懐かしさと共に

 風呂上がりは牛乳、と言わんばかりにトウマは自販機の前で定番の牛乳を飲みながらティファとサラの事を待っており、2人が上がってきた時を見計らって2人にも牛乳を買って渡した。

 

「ふーん、ココノエってそんな文化があるのね。なんか変な感じ」

「お風呂上がりなんてなに飲んでも変わらないと思うんだけど」

「なんて言うんだろうなぁ……こればっかりは癖と言うべきかなんと言うべきか……」


 トウマ自身、何故風呂上がりは牛乳なのかを説明することはできないが、何故か風呂上がりの牛乳ほど、美味いと思える物はないと思えてしまう。

 ティファとサラはどういう文化だ? と首を傾げながらもぐいっと牛乳を飲み干し、瓶はしっかりと指定の場所に捨てる。

 そうして身も心もさっぱりした状態で部屋に戻ると、トウマは部屋の中心にあるテーブルの前に置いてある座椅子に座り、大きく息を吐いた。

 

「座椅子に低めのテーブル……やっぱりココノエ風ってちょっと不思議ね」

「確かにティファとサラからしたら不思議だろうな。でも、案外こういうのもいいもんだぞ? こう、座椅子を軽く倒してみると結構気持ちよくてだな……」

「そう? なんか落ち着かないけど……ちなみに、飲み物って何かある?」

「……緑茶とほうじ茶があるわね。紅茶は無いのかしら……?」

「そんなもんだろ。あとでほうじ茶飲もっと」

「トウマって本当にココノエは初めてなのよね……? なんか凄い慣れてない?」

「俺の故郷がこんな感じの文化でな。だからすげー気が楽っていうか、ちょっと懐かしい気分」

「ふーん。まぁ、そういう事もあるか」


 そうして暫くは3人でゴロゴロとしながらそれぞれの時間を過ごし、気が付けばもう夕方に差し掛かるかもしれない時間になっていた。

 トウマは半分意識が飛んでいたが、時間を見てすぐに目を覚まして立ち上がった。

 

「そんじゃ、俺ちょっと外を見てくるから」

「そとぉ……? なんかあったっけ……」

「うわすげぇ顔……いや、なんか宿の前に店があったの見えたからさ。なんか珍しいモンがないか見てくる。サラは……」

「ぁ…………ぅぇ……」

「えっこれ生きてる? ……いや、寝てるだけだけどすげー顔してるわ……ティファはどうする?」

「いくぅ……いくからすこしまって……」

「お、おう……」


 ちなみにサラは座椅子をある程度倒した状態で天井を向くどころか限界まで体も首も沿っている状態で意識が落ちているためとんでもない顔をしている上に、やはりその体制が苦しいのか時折呻いている。

 ちょっと女の子として見せられないのでモザイク案件の顔である。

 そしてティファは完全に床に寝転がっており、ついさっきまで涎を垂らして寝落ちしていた。なんだったら軽く白目を剥いていた。

 今はもぞもぞと動いて何とか洗面台がある方へと向かっている。

 折角の美少女もこれでは台無しである。

 それから10分ほど経ってからようやくティファが洗面台がある所から出てきた。

 

「ふぁぁ……なんか床で寝転がるのってヤバいわね。案外寝れる。体痛くなるけど」

「分かる。なんかベッドとか布団とはまた違った魅力あるんだよな。地獄見るけど」


 時折呻いてぴくぴくしているサラは放って置き、2人は外へ。

 宿を出てから少しだけ歩くと、色々な店が並んでいた。

 店を冷やかしながら色々と見てみると、どうやらココノエ特有の工芸品やらが売っている店や、ココノエでしか食べられないような……トウマからしてみれば日本で見る感じの食べ物が売っていたりした。

 

「へぇ、色々とあるな。工芸品とかも……おっ、これ竹とんぼじゃん。懐かしいな」


 食べ物に関しては今食べると夕飯が入らなくなるのでスルーし、工芸品やら独自の玩具なんかを見て回っていると、懐かしい物を見つけた。

 竹とんぼ。売っている所はよく見たが、実際に買った事は無い。精々小学校時代に触ったのが最後だ。

 実際に触ってみるとしっかりと竹っぽい手触りで少し驚いた。


「竹とんぼ? えっ、何これ。木の羽根と棒が付いてるだけじゃない。これで何するの?」

「これ飛ばして遊ぶんだよ。おっちゃん、これちょっと飛ばしてもいいか?」

「おう、いいけど壊したら弁償だぞ?」

「わーってるよ。それっ」


 店主に許可を貰ってから両手で棒の部分を挟んで勢いよく回しながら飛ばす。

 空中を回りながらゆっくりと落ちてくる竹とんぼを見ると、どこか懐かしい気持ちになれた。

 

「へー。こんなちっぽけなのにちゃんと飛んで滑空するんだ」

「よっと。だろ? まぁ、失敗すると真横にぶっ飛んでそのまま落ちるんだけどさ。おっちゃん、ありがとな」

「おうよ。ってか兄ちゃん、これの事よく知ってるな。ココノエ出身か?」

「いや、漂流者。俺の時代だとこういうのはまだよく見たんだよ」

「ほー、漂流者。じゃあこいつの事は知ってるか?」

「ん? なんだ、けん玉じゃん。知ってるけど……俺、けん玉苦手なんだよ。皿に乗せられた試しがない」

「なんだい、ぶきっちょさんかよ」


 うるせぇ、と悪態つきながら、試しにけん玉でも遊んでみる。

 糸を垂らして、なるべく揺れを無くしてから玉を持ち上げて皿に。

 しかし、皿に玉は乗らず。かつん、と木と木がぶつかる子気味いい音を立てて玉は弾かれてしまった。

 

「あー、やっぱり」

「ふーん。ちょっと貸して」

「おう」


 ぶきっちょなトウマの代わりにティファが挑戦。

 けん玉を奪い取って暫く玉を揺らした後、一息で玉を持ち上げ、そのまま皿の上に。

 おー、と思わずトウマが声を漏らす。

 

「なによ、簡単じゃない。これで終わり?」

「いや、上手い人だとこっから下の皿に乗せたり、反対の皿に乗せたり、後はこの棒の部分に玉を刺したりするな」

「最後のはちょっと難しそうね。でも、他の皿に乗せるくらいなら……よっと」


 かつん、かつん、と。子気味よくティファは皿の上から皿の上に玉を移動させていく。

 普段から機械いじりという繊細な作業をやっているからか、ティファは時折失敗するものの、初めてとは思えない遊び方をしていく。

 

「じゃ、最後に」


 そして、最後に玉を一回落としてから持ち方を変えて玉を持ち上げ、玉にある穴へ棒を突き刺してみせる。

 

「中々面白いわね。電気とか何も使ってないのに」

「いや、すげぇなティファ。俺なんていくらやっても無理なのに」

「あんたがぶきっちょなだけよ。店主さん、これ買ってくわ。案外面白かったから」

「おう、毎度」


 そしてティファはけん玉を購入。

 まぁ、ここまで遊んだのだから買わないと失礼か、と思っての購入でもあったが、いい暇潰しの道具ができた、とティファは少し嬉しそうだ。

 そうしていろんな店を冷やかしつつ、珍しい物はちょくちょく買って、とココノエの店を2人は結構満喫していた。

 トウマとしてはどこか懐かしい店が沢山あるから、日本に帰ってきた気分になれて。ティファは物珍しい物を見れて。

 互いに満喫の仕方は違うが、それでも満喫はできていたのだった。



****



 あとがきになります。

 どうしてもこれだけは答えたかった。


Q:やっぱり巨乳ヒロインは必要じゃない?

A:うるせー!! いらねー!! 俺はこのまま貧乳のヒロインを書き続けるんじゃー!! 例え時代背景的に肉体改造可能でも何らかの理由を付けてこのままやってやるー!!

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