色気なんてない(感じ方は人によります)

 女湯側の露天風呂にロリ2人が入ってきたが、トウマは気にしない事にした。

 どうせもう少し露天風呂に入ったら一旦出るし。

 

「にしても、温泉って結構いいわね。初めて入ったけど、なんて言うのかしら……なんかいつものお風呂と違う感じ」

「なんか分かるわ。実家のお風呂も広かったけど、なんか違うのよね。うーん……匂い?」

「独特な匂いはするけど、そうじゃない気が……」


 女湯の方ではティファとサラは、隣の男湯の方にトウマが居るとは特に思わず、普通に喋りながらお湯に浸かっていた。

 まかり間違っても男湯の方と繋がっているとか、壁にのぞき穴があるとかも無いので、ラッキースケベは起こりえない、安心安全仕様だ。

 まぁ、それが普通だが。

 

「なんか効能を見ると肩こりとか腰痛とか書いてあるけど……」

「今どきそれで悩むモン? そういうのって病院行きゃ普通に治るじゃない」

「そうね。肩こりなんてなったことないし」

『えっ、マジで!? 肩こりって病院で治るの!!?』

「わっ!? 急に誰……って、トウマ!!? あんたそっちに居るの!?」

『そりゃ居るわ! ってそうじゃなくって、肩こりって病院で治るのマジっすか!?』

「全然普通に治るけど…………えっ、まさかアンタ」

『知らなかった。マジで』

「そ、そう……今度病院行ってきて、肩こりのついでに体の悪い所全部治してもらっておきなさい。大抵治るから」

『そーする。んじゃ、俺もう出るから。牛乳いるなら買っておくけど、いるか?』

「いいわよ。後で自分たちで買うから」

『うい。んじゃお先』


 なんか急に男湯の方からトウマの声が響いてきたが、一旦忘れよう。

 幸いにも今日は貸し切り状態だし。

 ティファとサラはなんか急に割り込んできた外野が居なくなったのを、露天風呂に繋がる扉が閉まった音で確認してから、改めて一息つく。

 ちなみに肩こりは病院に行けば安価で治してもらえる。もう凝りなんてあったのかと疑問に思うくらいゆるっゆるにしてもらえる。

 

「ってか、ティファとこうやってお風呂入るのって初めてよね」

「そうね。まぁ、一緒にお風呂入る機会なんて早々ないし」

「それもそっか」


 ハインリッヒ家でも、流石に貴族の娘と一般人が一緒に入るのはどうかという事で、仲間ではあった物の一緒の時間に風呂に入る事は無かった。

 そのため、なんやかんやで2人が裸の付き合いをするのは初めてである。

 時折着替え中に普通に脱衣所に入っていくことは無い事も無かったが、流石に同性だし、そうまじまじと見たりもしなかった。

 

「……にしてもティファ、案外筋肉あるのね」

「そりゃまぁ、重いパーツ組み込んだりするし。逆にサラはあんまりね」

「貴族の女の子なんてこんなもんよ。ムキムキだとお嫁に行けるか分からないし。程々に留めておくのよ」

「なるほどね。で、お嫁の行き先は?」

「今は傭兵生活よ」

「そんな事言ってると行き遅れるわよ」

「うっさいわね。そっちはどうなのよ。行き遅れなさそう?」

「だまらっしゃい」


 つい先日、行き遅れだとか婚約だとかそういう話をしたばかりなのに急に蒸し返さないで欲しい。

 ティファからしたら知ったこっちゃないだろうが。

 

「えっと、所で今日って他に人いないの? 貸し切り?」

「みたいよ。明日辺りから人が来るみたいだけど、今日は貸し切りだって。ほら、普通平日のこんなお高い宿に人なんて来ないでしょ?」

「それもそっか」


 忘れているかもしれないが、この宿は一般人ならかなりの贅沢をしないと泊まる事ができない高級宿だ。

 さも当然のようにこいつらは泊まっているが、普通の傭兵ならこの宿に泊まる事なんて一生に一度できるかどうかも分からない程度にはお値段の張る場所である。

 貴族なら泊まれるだろうが、ただの傭兵なら無理だ。

 

「しっかし……この温泉、なんというか。色気がないわね」

「言わないでよ」

「あたしもティファも、ほら、ね?」

「言うなっての」

「身長は……ティファが数センチ上? でもバストは……わたしがほんの少し……ほんの、少し……」

「それ以上言うと自分の言葉で自分を傷つけるわよ」

「うん……」


 ティファはまだ分かる。まだ分かるが、どうしてしっかりと栄養を取ってしっかりと健康にいい生活をしていた自分は母や姉とちがってこんなんなのか。

 どうして人はこんなにも不平等なのか。

 もう何度豊胸と身長を伸ばす手術をしようかと考えたか。

 ちなみにこれをサテラに相談すると、割とマジで泣きそうな顔をするので、いっつも計画だけ立ててとん挫していたりする。


「……ティファなら手術すればもっと身長伸ばしたり胸大きくできるんじゃないの?」

「いや、できるでしょうけど……機械いじりって案外手先の感覚とか重要なのよ。それに、体が小さくないと隙間に突っかかるし。それ前提でイグナイターを作ったのもあるし、そう簡単に肉体改造できないのよ……」


 もしトウマが来る前、まだ傭兵として名を馳せる前に金があったら喜んでやっただろうが、今それをやると間違いなく体を慣らすのに時間がかかりすぎたり、整備の際に体が突っかかったりするので肉体改造しようにもできないのだ。

 ちなみに、身長を伸ばしたり豊胸したりの手術はナノマシンで老化が止まっている現在辺りにやらないと、ちょっと後遺症も出たりするので、やるのなら今の内だったりする。億単位で金がかかる場合もあるが。

 

「まぁ、別にいいでしょ。見せる相手もいないんだし、小さくっても」

「それもそうね」


 そのあと暫く2人は湯舟を楽しんだ後、湯から上がったのであった。



****



Q:ここでラブコメ的なハプニングがあったらどうなってましたか?

A:ガンダムさんでキシリア様を紫ババアと呼んだ赤い彗星と同じようにトウマくんが全裸宇宙遊泳の刑に処されて1乙ゲームオーバーとなってました。

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