いい湯だな
「ほんとあんたら、こういう時は役に立たないわね」
「いや、サラはよく対応できるわね」
「んー、まぁ、こういう場所に最低限対応できるように学校で習うしね」
「そういやサラも学校行ってたんだっけか? 義務か何かで」
「そ。貴族って15歳から18歳までは学校に行く義務があるのよ。こう見えてもそこそこいい成績で卒業してるわよ」
「そうだったんだ……あれ? でもわたし達が会ったのってサラが18歳の頃じゃ……」
「卒業、帰宅、2週間経たないうちに家出実行」
「お転婆にも程があるだろ」
というよりも、このお転婆が大人しく学校に通っている光景が想像できないのだが、そこは一旦スルーした。
ちなみに、ティファは14の頃までは学校に通っていたが、両親が亡くなってからは不登校になり、裏で傭兵活動をしている内に在学期間を過ぎ、義務教育こそ額面上は終えているが……という事になっている。
ちなみにサラは普通に学友がいたが、ティファはあまり友達が居なかった。キツめの性格と機械いじりという女子にしては変わっている趣味が災いした結果である。
閑話休題。
「さて、じゃあ俺は風呂行ってくるから」
「え? もう? ちょっと休んでから行ったら?」
「いやいや。こういう時は風呂に入ってさっぱりしながら休むんだよ。ティファ達も行ってきたらどうだ?」
「んー…………まぁ、確かにお風呂がどんなもんか気になるし、行ってみますか。別段やる事もないし」
「ティファが行くんならあたしも行く」
ということで、3人揃って温泉に向かう事に。
トウマは浴衣を探したが、見つからず。流石にそこまで日本テイストではなかった。
着替えの下着とタオルを片手に温泉に向かい、男湯女湯のプレートの前で別れる。
「んじゃ、多分俺の方が早く出るだろうし、出たらここら辺で待ってるから」
「おっけ」
この旅館に混浴なんてものはあるわけもなく。普通にトウマとティファ&サラで別れて男湯女湯に入る。
日本にいる頃はコンタクトしたまま温泉に入る事が何となく怖かったのでトウマはいつもコンタクトを外していたのだが、もうそこを気にする必要もない。
いつも通り脱衣所でコンタクトを外そうとしたが、目に指を突っ込む寸前で止められた。
あぶねー、と呟きながらとっとと服を脱いでタオル一枚を片手に温泉へ。
「おー、広いし綺麗だ。それに、露天風呂も結構広いっぽいな」
肝心の温泉はかなり広く、そして綺麗だった。
流石高級旅館の温泉。かなり本格的だ。
ほんのりと硫黄の匂いがするのもポイントが高い。天然温泉に入っている、という気分になれる。
マナーに従って先に体を洗い、ついでに髪も顔も洗い、ようやく入浴。
「あぁぁぁぁぁ…………」
普段から船の中とは思えない程度には広い風呂で足を伸ばしてお湯に浸かっているが、やはり温泉は開放感があっていい心地だ。
最近は船の中で体を動かしたり休んでいたりしていたが、やはりこういう風に温泉に浸かってゆっくりとすると、日本人故かいつも以上にリラックスできる。
そんな事を思いながら暫く。体も火照りかけたところで一旦湯から上がり、今度は露天風呂に。
どうやら露天風呂の方にも人はいないらしく、一人で温泉に浸かれるようだ。中々な贅沢である。
「あー、やっぱ露天風呂もいいなぁ……」
風呂に浸かってふやけながら息を吐く。
この時が正しく至高だ。
なんて思っていると。
『へー、露天風呂ってホントに外にあるんだ』
『外にあるけど、ちゃんと外からは見えないようになってるみたいね。ほら、真上は偏光ガラスでこっちが見えないようになってる』
『あ、ほんとだ。じゃあ外にあるって言っても、厳密には完全に外じゃないのね』
『ちゃんと外気は取り込んでるみたいよ? 壁とガラスの隙間はちゃんとあるし』
『考えられてるのねぇ。ってかサラ、あんたよく一目でアレが偏光ガラスって分かったわね?』
『案外見抜けるもんよ』
露天風呂の壁の向こうからなにやら聞き覚えのある声が。
間違いない、あのロリ2人だ。
どうやら偶々トウマが露天風呂を楽しんでいるタイミングで露天風呂に入ろうと移動してきたらしい。
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