急襲、宇宙害虫

「なぁ、この辺の宙域ってどうなってんだ? ずっとこんなスペースデブリ帯が続くのか?」

「確か近くにコロニーと資源採掘惑星があったはず。宙域図と現在地をモニターに出すわ」


 サラがパネルを操作し、宙域図と現在地が表示される。

 宙域図を確認すると、今いる場所から1日ほど移動した場所にコロニーが。そこからさらに1日ほどかかる場所に資源採掘用の岩石惑星が存在している事が確認できる。

 それぞれこの船のハイパードライブを使わない全速で1日の距離なので、ハイパードライブを使えば数分で到着できる距離となる。

 

「けど、今このコロニーも資源採掘惑星も使われている最中の物よ。で、依頼にあった奴らの目撃地点ってのが……ここね」


 更に宙域図に情報が追加される。

 コロニーと資源採掘惑星。そこから更に離れた場所。

 今はもう資源を採掘し尽くし、廃棄された廃小惑星。そこで目撃例が多発しているらしい。

 

「こんな所で……?」

「資源採掘に使われていた小惑星ね。どうやら、今使われている惑星に取り掛かる前はこっちで資源を採掘していたみたい。もう既に機材も運搬し尽くして誰も行かない場所ね。そこに用事があって訪れた人が、あの害虫共を見かけたらしいわ」


 偶々この辺に用事があった人がそこへ赴き、見かけたと。そういう事らしい。

 

「…………ん? なんかおかしいわね」

「どうした?」

「いえ。今この小惑星について調べてたんだけど……ここ数年、この近辺では害虫以外にもズヴェーリがよく見られていたらしいわ。ただ、もう使う人もあまりいないしって事で駆除は後回しにされていたみたいだけど……」

「ズヴェーリと害虫……? よく分からない組み合わせだな。もしかしてズヴェーリの巣窟だったのを害虫が乗っ取ったとか、その逆とか?」

「さぁ。分からないけど……もしかしたら宙域生命体連合軍と戦う事になるかもね」

「勘弁してくれよ……」


 そんな連合軍、まぁ相手してもなんとかなるだろうが、流石に気分が滅入る。

 ただ、目撃例があるという事は覚悟をしなければならないという事か。幸いにもズヴェーリはただの的、害虫に関してはビームで焼き切れば問題なし。しかも宙域故にこちらの動きはさらに自由になっている故に敵ではない。

 流石に目の前の光景を埋め尽くすほどの量で来られたらヤバいかもしれないが、それ以下の量ならば問題はない。

 全て駆除できる。

 

「念のため、ここで一旦周辺宙域を目視で確認。その後にもう一度ハイパードライブをしてこの小惑星から数万キロ離れた場所に移動するわ。で、移動後に小惑星外部を調査。もしも奴らが居なければ内部を調べることになるわ」

「内部にはなるべく居ないでほしいけどな……流石に重力下と無重力下じゃやりやすさが違う」

「そう願うしかないわね。さっ、周囲を確認したらもっかいハイパードライブよ」


 サラと共にカメラが映す外の様子をモニターで確認。

 特に動くものが無い事を確認してからもう一度ハイパードライブで移動を始める。

 それと同時にトウマとサラは格納庫へ移動。機体の整備を終えたティファとすれ違った。

 

「お疲れ。特に外には居なかった感じ?」

「えぇ。だから、奴らの本拠地に潜り込むわよ」

「了解。わたしはいつも通り通信を繋げて管制をするわ。2人とも、後はお願いね」

「任せときな。害虫如き敵じゃないって所を見せつけてくるぜ」


 操縦室へと向かうティファを尻目に、2人は格納庫へ。そしてピカピカに整備されたばかりの愛機のコクピットに乗り込む。

 いつも通りの完璧な仕上げ。OSを立ち上げ唸りを上げる愛機からソレを感じ、ハンガーにかけられた武器をその手に持つ。

 さて、敵の数がそこそこ少なければいいのだが……

 

『そろそろハイパードライブが終わるわね。さて、どうなる事やら……』


 サラの言葉にトウマも頷き、出撃の時を待つ。

 それから暫くしてハイパードライブ特有の揺れが収まる。

 さて、外の様子は……

 

『やばっ!!?』


 ティファから様子を聞こうとした時だった。

 彼女の焦ったような声が通信から聞こえたと同時に、船が大きく揺れた。

 間違いない、この揺れは攻撃を貰ったときの揺れだ。

 

「ティファ、外の様子は!?」

『囲まれてるわ!!』

『囲まれてる!? そんなにも数が多いの!?』

『多いなんてもんじゃないわよ!』


 ティファの悲鳴に似た叫びが聞こえた直後、外の様子がスプライシングとラーマナのモニターにも映される。

 そこに映ったのは、外の様子。

 この船を囲むように宙域を飛ぶ害虫と、ズヴェーリ。それらがこの船に向かって体当たり等の攻撃を仕掛けてきているのだ。

 バリアがあるため今は何とかなっているが、バリアが無ければ間違いなくこの船は既に轟沈していた。それほどの攻撃を先程から受けている。

 

「なんだこの量!? っつか、マジで宙域なのに羽根で飛んでやがるのかこの虫共は!?」

『文句はあと! 一旦ここから全速で離脱して、ある程度振り切ったら2人を射出するわ! 10秒はバリアが再展開できないから、あいつらの針だけは死ぬ気で防いで!』

『了解! 後は任せなさい!!』


 ティファの指示の直後、船がかなりの速度で飛び始める。

 大気圏すら突破できる程の速度で飛ぶ船だが、それでも害虫共はそれを追ってくる。ズヴェーリは引きはがされているようだが、害虫共は明らかに地上の時よりも遥かに速い速度でこちらを追いかけている。

 だが、それでも徐々に距離は離せている。

 それを確認したティファは格納庫のハッチを開く。

 

『トウマ、サラ、後は任せた!』

「了解! カタパルト射出と同時にバリア解除! 頼んだぞ!」

『えぇ! 行ってきなさい!!』

「あぁ、行ってくる!!」

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