流星無双

 真空の宙にオーバースプライシングとラーマナMk-Xが舞う。

 それをほぼ同時に開かれたゲートからネメシスが出撃してくる。

 見た限り、第5世代ネメシスは居ない。だが、その全てが様々な国で使われている第4世代のネメシスたちだ。

 その数は、およそ15機。ただの賊が持つ戦力にしてはやけに多すぎるし、豪華すぎる。

 

「多いな……どういうことだ?」

『バックがあるとは思えないけど……』

『そこはログを漁ってみないとね。2人とも、わたしは外からハッキングを始めるから、頼むわよ』


 ティファの言葉に頷き、敵ネメシスとの戦闘に入る。

 

『たった2機で攻めてくるなんて、おめでたい奴等だな!!』

『テメェ等も、テメェ等の機体も売っぱらってやるよ!』

「はーやだやだ。これだから賊っつーか蛮族は」

『ふぁっきゅー』


 射程距離に入った瞬間放たれるマシンガン。それをいつも通り避け、シヴァの銃口を向けて放つ。

 荷電粒子の光が宙を引き裂くが、一射目はハズレ。だが、次の二射目はしっかりと狙いをつけ、さらに一射目で敵を誘導したことにあり、敵を撃ち抜く。

 

『な、なんだ、ビーム!?』

『なんつーもんを持ってやがる、この傭兵共!!』

『散らばれ! 集まっていたらあのビームの的になるぞ!!』

「賊にしてはやけに手慣れているな?」

『歴戦の賊ってこと? まぁ、それでも大して変わらないわ。ただ、面倒だし……行きなさい、フェンサー!』

「それもそうだな。セパレートウィング、俺の敵を討て!」


 戦闘にそこそこ慣れている様子の賊の様子を見た2人だったが、焦る事は無い。

 流石にランドマンやハインリッヒ騎兵団レベルの猛者が100機近く出てくるのなら話は変わってくるが、奴らの動きはハインリッヒ騎兵団と比べても数段劣っている。

 例え残り13機が玉砕覚悟でビームセイバー片手に奇声を上げながら突っ込んできたとしても負ける事は無いだろう。

 そもそも賊にそこまでの薩摩魂があるとは思えないが。

 だが、あまり舐めプしていたら変な弾に当たるかもしれない。それを考慮し、2人はウィングを使う。

 

『今度は有線の自律兵器!?』

『こいつらもしかして軍の情報にあった、イカれ傭兵共か!?』

「ん? 軍って……」

『えー……何してんのよ、アイゼン公国……』


 思わず呆れるサラ。まさか自分たちの事が軍経由で賊に知られているとは思ってもいなかった。

 トウマも呆れるが、そんな2人にティファから呆れを含んだ追加情報が齎された。


『呆れてるサラに追加情報。こいつらのログの中にマリガンの名前があったわ』

「えっ、じゃあこいつ等ってガベージ・コロニー残党ってことか?」

『そうねー。ガベージ・コロニーが作られて間もない頃にマリガンのやり方を見て学んだっぽい。軍の施設から少量だけど武器やら弾薬やら情報やらを抜き取るのに成功してるみたいだから』


 なるほど、と2人は納得する。

 確かにネメシスオンラインプレイヤー仕込みのやり方を見よう見まねで学んだのだとしたら、このちょっとはデキる動きも、軍が被害にあっているのも納得できる。

 納得はできるが、そもそも賊に後れを取るってどういうことだよ、という意見は変わらない。


『まぁ、アレの元仲間ってだけなら怖くはないわね。あたしだって成長してるんだし』

「そりゃな。それに、今のサラなら当時の状況でも勝てると思うぞ?」

『え? マジ?』

「マジ。お前、そんぐらい強くなってるから。多分俺とレイトを除くランカー相手でも普通に五分の戦いできると思う。俺はサラ対策がある程度できてるから勝ててるだけだし、レイトは……うん、まぁ、ちょっとレベチなので」

『そうなんだ。やっぱサラの成長速度って異常なのね……』

『ティファに言われたきゃないわよ。特にティファには』

「そしてこの中で唯一成長速度が普通なのが俺なのであった」


 ティファの感想に思わずサラがツッコミを入れる。

 その間にもウィングは戦場を飛び回っており、セパレートウィングの光の翼とフェンサーウィングのビームセイバーがそれぞれ敵を貫いていた。

 これで残りは9機。

 

『クソッ、こいつら雑談しながら仲間を殺してやがる!! どんな神経してやがるんだ!!』

「人を文字通り商品にして命を食い物としか思っていない奴らに言われたきゃないかなぁ」

『まぁ、アレよね。害獣駆除する感覚っていうか』

「言えてる。マジでそれだわ」

『こ、このガキ共……!!』

「こう見えても20代なんだよなぁ」

『トウマの時代だとどうか分からないけど、この時代じゃまだ若造レベルよ』

「あっ、そうか。この時代だと老化って数十年止まるからそうなるのか」


 最大限、敵の攻撃に対して注意は払いながらも煽りながらウィングと荷電粒子砲で着々と数を減らしていく。

 サラに至ってはアーマードブラストの装備は弾薬費がかかるから勿体ないと言いながら荷電粒子砲を使っている始末。やっている事が本当に害獣駆除みたいな感じである。

 

『クソッ、こいつらこっちの事を人とも思っていないのか!?』

『人の所業じゃねぇ!!』

「は? いや、人を攫って人権無視して商品にしてる奴等が言えたことじゃねぇだろ。お前らは宇宙の害獣だよ、害獣」

『自分がこうやって虫けらみたいに殺される理由も分からないなんてね。今まで世界は自分を中心に回っているんだ、とか本気で思っていそう』

『もう話を聞くだけ無駄ね。トウマ、サラ、とっとと駆除しちゃいなさい』

「あいよ。サラ、お前も弾代ケチらなくていいから」

『そーする』


 賊の言葉に呆れかえった3人はとっとと戦闘を終わらせるために動く。

 セパレートウィングに加えて自身も突貫し、次々とビームセイバーで敵機を焼き斬っていくトウマと、アーマードブラストの弾幕に加えてフェンサーウィングで敵を貫くサラ。

 残り9機もいたネメシスは、たったの3分程度で残り1機にまで数を減らしていた。

 防御しても防御の上から荷電粒子で貫かれ、攻めようものなら視覚外からのウィングによる挟撃やトウマとサラの直感と読みによりあっさり回避され、反撃で落とされる。

 賊からしてみれば正しく悪夢のような時間と光景だっただろう。

 だが、それも終わりだ。

 

「じゃあな、害獣さん」

『今までの悪行でも後悔しておきなさい』


 そして、最後の1機もスプライシングとラーマナが放ったシヴァの荷電粒子により蒸発。

 15機もいたネメシスはたった2機のネメシスにより全滅させられることとなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る