流星の出撃
「さて、ハイパードライブももう終わるわ。トウマ、サラ。コクピットで待機よろしく」
「あいよ」
「あいあい」
いつも通り2人並んで操縦室から出て、互いの部屋でパイロットスーツに着替えてから格納庫で合流。互いの愛機のコクピットに乗り込む。
最近ヤケに乗り心地が良くなったコクピットシートに体を預けながらティファからの通信を待つ。
一応、今回の待機はハイパードライブ終了直前にジャマーでハイパードライブを阻害され、急遽戦闘になった場合に備えての待機だ。
果たしてどうなるか。
『ハイパードライブ終了。目視できる範囲で船は…………見当たらないわね。残念、ハズレ』
ティファの溜め息が聞こえた。
どうやらそう上手く事は進まなかったらしい。
だが、ここまでは想定内。ティファは操縦室で通信の傍受を開始したらしく、ふーん? とちょっと楽し気な声が通信越しに聞こえてきた。
『なーるほど。奴等、こっちにいち早く気づいたみたいね。流石に露骨すぎたけど……なるほど、小惑星帯の外から通信していて……よし、相手の本拠地から通信が来た。後は受信先送信先の場所を座標として表示して…………よし、できた!』
「こりゃひでぇや」
『おかしいわね……最近の通信って結構強固な暗号化がされているって聞いたことあるのに……ほんとおかしい……』
これでも通信傍受が本業ではありません。
本業の人が聞いたらガチギレしそうな事を平然と行ったティファは敵本拠地の場所を特定を済ませ、それをスプライシングとラーマナのモニターに転送する。
それを確認すると、どうやら敵の本拠地はここから数光年ほど離れた所にぽつんと存在している資源惑星内に存在しているらしい。賊が賊なりに頑張ってダミーカンパニーを作って資源惑星を採掘という名目で中身をくり抜き、基地を作り上げたのだろう。
しかし、悲しいかな。その基地は今から天災メカニックと、その天災が作り上げた最高傑作たちを操る天才パイロットたちに蹂躙されるのである。
『ここからの作戦だけど、わたしはアイゼン公国軍に今回の件を通報と、基地内部のログを漁って人身売買が行われた形跡が無いか。形跡がある場合はどこに誰が売り飛ばされたのかを確認するわ。トウマとサラは基地外周の制圧と、可能なら敵基地の格納庫の制圧をお願い』
「おう、それはいいんだが、依頼の達成はどうするんだ?」
『軍に内部を制圧してもらった後、身元の確認が行われるわ。そこで対象の身元の確認ができたら依頼完了。拉致者は1か月ほどの時間は要すると思うけど、ちゃんと故郷に送還されるから安心しなさい』
ただ、そうじゃなかった場合。
人身売買により既にどこか遠くへと売られていた場合や、臓器摘出などにより既に死んでしまっていた場合。
それをトウマが聞いてみると、ティファは残念だけど、とだけ返してきた。
追える範囲では追うが、死んでいた場合はどうしようもない。
『依頼人は子供だから、同じ依頼を出していた老夫婦に伝える事にはなるけど……末路を知らないよりはマシなハズよ。とにかく、あたし達は目の前の事をしっかりとやらないと』
こういう依頼。特に、賊に攫われたのであろう人の救出依頼に関しては、助からない事が殆どだ。
依頼人も、せめて捜索対象が生きているのか、死んでいるのか。それを知るために依頼を出している面が無いとは言えない。
きっと覚悟しているはずだ。家族が死んでいると伝えられることは。
「……そうだな。じゃあ、ティファ。ハイパードライブを」
『了解。ハイパードライブ終了までには1分もかからないわ。だから、2人とも。すぐに発進する準備をしておいて』
トウマとサラは頷き、ヘルメットのバイザーを落とす。
やはり、賊は生かしてはおけない。悪だ。
だから、潰さなければ。
操縦桿を握り、出撃の時を待つ。
ハイパードライブ特有の揺れが始まり、そしてすぐに収まる。それを同時にハッチが開かれ、宙の光景が広がる。
その先には資源惑星にしか見えない、岩石でできた、数キロ程度の惑星が。
そこが、賊の基地。
『チッ、奴さんら、やけに対応が速いわね……資源惑星の一部のゲートが開いたわ。多分、ネメシスが出てくる』
「わかった。速攻で片づける」
『同上。秒殺よ』
シヴァと盾を握り、カタパルトに足を乗せる。
標的は人間の屑共。慈悲は無い。
「オーバースプライシング、トウマ・ユウキ! 行くぞ!!」
『ラーマナMk-X! サラ・カサヴェデス、出るわ!!』
真空の宙にオーバースプライシングとラーマナMk-Xが舞う。
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