金銭感覚測定ゲームその1

「にしても、最近はズヴェーリ退治ばっかり……刺激が足りないわね」

「ズヴェーリ退治って普通、相当入念な準備をしてやる大事のはずなのに、わたし達は片手間だしねぇ。しかも総資産から見るとあまり稼げてるとは言えないし」

「片方のロリは仕事に刺激を求め始めたしもう片方のロリは数百万をとうとう小銭みたいに見始めやがった」


 ズヴェーリ退治は儲かる。

 小型だけをちまちま潰すだけなら弾代やら何やらで収支はあまりよくならないが、中型以降を2機のネメシスで、弾を使わずに狩れるのなら本来は相当収支はよくなる。

 それこそ、10回程度仕事をこなせば億、とまでは行かないが億に近い額が稼げるほど。

 だが、このロリ達は、本来命懸けで行い、その結果得られる報酬を刺激が足りない上に稼げないと言い始めた。

 彼女達の中の価値観はすでに崩壊している。

 ちなみに、2人の事を思いっきりロリと言ったトウマさんはティファのスパナ投げで額が凹み、その上からサラのドロップキックを顔面に貰って無事沈黙した。自虐ならまだしも、他人から言われるのはムカつくお年頃の2人であった。

 トウマは多分死ぬでしょう。

 

「でも、トウマの言う事も一理あるわね」

「っていうのは?」

「刺激はまだしも、金銭感覚よ。あたし達、間違いなく金銭感覚ぶっ壊れてるわよ」

「そう?」

「ティファ。例えば100万の買い物ってどう思う?」

「安くない?」

「安くないわよ。あたしも安いって思っちゃったけど安くないのよ。100万よ? 一般人なら数か月かかってようやく貯まる額なのよ?」

「…………あっ」

「ね? ヤバくない?」

「ヤバいわね……いや、マジでヤバいわね。そりゃわたし、500万のリゾートコロニーを奢るのもちょっと高い程度で済ませちゃうわ」


 具体的には、ちょっとお高めのお土産を買う程度の感覚だった。

 最近ティファが買う物は大半が100万を超えるのは当たり前な機材だったり、ネメシスのパーツばっかりだったため、見事金銭感覚がぶっ壊れていたのだ。

 そしてサラも元々が貴族であり、庶民とは金銭感覚が違った事が災いし、最近は貴族時代の金銭感覚に戻ってしまっていた。それ故に船の内装やら家具やらも貴族感覚で揃えていたし。

 唯一トウマだけは自分から食料の買い出しに行ったり、この時代からちょっと古めの漫画やらゲーム機やらを買っていたため、マトモな金銭感覚だった。それでも貯金残高のせいで軽く壊れてはいたが。

 

「ったく、俺が食料の買い出しとか行っていたのって、金銭感覚を壊さない為でもあったんだぞ? だってのにお前らは……」


 蘇生したトウマが額からスパナを引っこ抜きながら溜め息を吐く。

 船の内装は馬鹿高い物を買うわ、家具も貴族ご用達のお高めの物を買うわ、服なんかもブランドものばかりとは言わないが、多少高くても特に何も言わずに買うわ、お菓子なんかもグレードが上がりすぎているわ。

 明らかにブルジョワの使い方そのものである。

 

「いや、金は使わないと経済にも悪いってのは分かるけど、明らかにお前ら使いすぎだろ。仕事で必要なモンならまだしも、必要ないモンも高いモンばっかり買ってんじゃん」

『はい……』


 珍しくトウマからの正論に言い返せない2人。

 この間の牽引の時だって、2億で船と鉄屑が売れたと聞いて、そんなもんか、数日あれば稼げるしそこそこだな、程度の感覚でしかなかった。

 金銭感覚がブレイクしている証拠だ。

 金に物を言わせて好き勝手しないだけまだマシだが、もしも今後、若くして傭兵に飽きて引退でもして機械いじりだけして過ごそうものなら、数年で二桁億ある今の貯金も食いつぶすに違いない。

 そうなってもまた稼げるだろうが、流石にそんな生活を続けるのもどうかと思う。

 という事で。

 

「一回、買う物決めてお互いに買い物でも行ってみないか? 俺1人と、ティファとサラの2人で。で、どれだけ使った金額の差があったかで勝負するとか。それで嫌な思いしたら多少は矯正されるだろ。嫌な思いをしなかったらちゃんと金銭感覚が意図して戻せたって事になるし」

「なるほど、確かにいいわね。で、勝敗はどうつけるの?」

「俺とお前らで差が10万以下なら俺の負けでいいよ。で、負けた方は、そうだな……罰ゲームで」

「ふーん、罰ゲーム? いいじゃない。どういう内容にする?」

「ティファはパイロットスーツを無しでO-V,O.O.S.T使ったオーバースプライシングに相乗りな。最近コクピット周りを整備して生身でも絶叫マシンレベルの揺れと衝撃しか感じないようにしたって言ってたしいいだろ」

「えっ」

「サラは……1時間虫をド近距離で撮った動画を強制視聴で」

「ちょ」

「俺は……そうだな、負けたらなんでも言う事聞く。これでいいか?」

「い、言いたい事はあるけど、それでいいわよ。アンタが社会的に死ぬようなこと命令するから」

「流石に吊りあってなくね???」


 という事で。

 流石にトウマへの命令は程度を考えるという事になったものの、罰ゲームありのお買い物ゲームが決行されたのであった。

 買ってくるものは、1週間分の食事、最近切れかけていたシャンプー&トリートメント、常備薬。前回とある人を乗せた際に明らかに客室の準備ができていないどころか、ベッド、布団、椅子等々、必要最低限な物すら無いことが分かったため、仮置き兼、予備として倉庫に入れておく用の安いベッドフレームと布団となった。

 これらを買った際の金額差が10万を超えていたらティファ&サラの罰ゲーム。10万以下ならトウマへの罰ゲームとなった。

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