L-V.O.O.S.T

 間違いない、ここは敵地のど真ん中。トウマの予想は当たっていた。

 その証拠に。

 

『うっ……!? 凄い羽音が……!?』

「奴らの羽音かよ……! サラ、外音を拾うマイクとスピーカーの音量を下げろ! 耳やられるぞ!」

『もうやってるわよ!』


 コクピット内に原生生物の羽音が響き渡る。

 即座に2人はマイクとスピーカーの音量を下げることで対応する物の、敵がそれで退いて行ったわけではない。

 異物が落とされた事に怒ったのか、次々と地下から原生生物が羽音を立てて2人の元へと上がってくる。

 それを見た2人は即座に行動を決める。

 このまま逃げても奴らを地上に連れてくるだけに違いない。ならば、ここで数をある程度減らしてから逃げなければ。

 

「サラ、アレを使って一気に切り抜けるぞ!!」

『えぇ、こういう数で勝負されたときのための武器でもあるのだから!!』


 V.O.O.S.Tはまだだ。アレはまだ切るべきタイミングではない。

 だからこそ、ティファが作った新しい力を使う。

 2人がそれを起動させた瞬間、オーバースプライシングのバックパックに取り付けられた増設スラスターが、ラーマナMk-Xの盾に取り付けられた増加装甲が、音を立ててパージされる。

 しかし、パージされたソレは有線で繋がっており、それぞれが独自に持ったブースターにより、オーバースプライシングとラーマナMk-Xの周りを飛び交う。

 そう、これこそがティファが作った新たなる力。

 スプライシングとラーマナを次の次元へと押し上げる翼。

 

「行けッ! 『セパレートウィング』ッ!!」

『貫きなさい! 『フェンサーウィング』ッ!!』


 その名は、有線式自律攻撃兵器『ウィング』。

 オーバースプライシングに取り付けられた『セパレートウィング』はバックパックとの接続部兼ブースターから火を吹き空を飛ぶ。

 その形は十字に似ているが、その内の三辺からビームの翼、光の翼とビームセイバーを展開する。

 これは文字通りV.O.O.S.Tと同種の光の翼であり、攻撃を防ぎ敵を切り裂く翼である。

 対してラーマナMk-Xに取り付けられたのは『フェンサーウィング』。

 こちらは半分に分割した盾が変形。コの字のような形となり、窪んだ中心からは太いビームセイバーが展開されている。

 また、二基のフェンサーウィングにはそれぞれビームのエネルギーがコーティングされており、敵を焼き切る事はできないものの敵の実弾とビームの威力をかなり減衰させて防ぐことができる翼となっている。

 

「セパレートウィング! 俺の敵を討て!!」

『やっちゃいなさい、フェンサー!!』


 2人の指示に従い、二基のセパレートウィングと二基のフェンサーウィングが原生生物へ向かって飛んでいく。

 有線式ゆえにエネルギー枯渇の心配がないソレは己の意志で飛び、次々と原生生物を切り裂いていく。

 

「す、すげーな、コレ……」

『いや、ほんとよ……しかもこれ、あたし達の脳波を読み取って動いてるのよね……』

『まぁその程度はね? 今どきはフルダイブ式のVRゲームだって珍しくないもの。ああいうゲームは脳波を読み取ってそれでアバターを動かすのだから、それを応用しただけよ』


 この新たなる翼、セパレートウィングとフェンサーウィングの凄まじい所は、リアルタイムで2人の脳波を読み取り、それに従って敵を攻撃するという所だ。

 フルダイブ式のVRゲームの応用だというソレは、トウマとサラからしてみればよく分からない。

 しかし、ティファからしてみれば、元からあるものを応用して作っただけ故に、S.I.V.A.Rよりは簡単な発明だったと言う。

 勿論トウマはこれを最初に聞いたとき、ニュータイプのみが使えるオールレンジ攻撃をする兵器を思い出した。


『これならあたし達が戦わなくても……』

「いや、数が多い。抜けてくるぞ!」


 地下から上がってくる原生生物は次々と四基のウィングにより切り落とされていく。

 しかし、その数はあまりにも多かったため、次々と原生生物は四基のウィングの合間を抜けてくる。

 それを見て2人は即座に迎撃に入る。

 ビームセイバーとS.I.V.A.Rを構え、迫ってくる原生生物を迎撃する。

 

『クソッ、数が多い!!』

「けどウィングのおかげで本来相手するよりも大分数が少ない! 同士討ちだけ気を付けろ!!」

『あんたもね!!』


 2人の迎撃とウィングの攻撃により次々と原生生物は落とされていく。

 しかし、原生生物とて虫ではあるが突っ込むだけが能の生き物ではない。

 ウィングの射程限界まで一気に下がると、針を一斉に発射した。

 100以上の針は半ば弾幕のように放たれ、避けようにも避けきることができない。故に盾で受け止めるしかないのだが、盾で防いでもただでは済まないだろう。

 しかし、2人にはこの状況を打破する翼がある。

 

「セパレートウィング、俺達を守れ!!」

『フェンサー、盾に戻りなさい!!』


 セパレートウィングがトウマ達の前に戻り、光の翼を広げセパレートウィング本体とトウマ達を包む。

 更にスプライシングの前にラーマナが立ち、フェンサーウィングを盾に合体。

 盾表面をフェンサーウィングのビームエネルギーでコーティングし、防御力を底上げする。

 次の瞬間、セパレートウィングの光の翼に針が直撃、爆発する。

 ネメシスの盾すら吹き飛ばすほどの威力であったが、それでも光の翼はその程度では消える事は無い。

 大量の針による攻撃をしっかりと守り切ったのだ。


「さっすが、光の翼だ。ならこのまま集まれ、セパレートウィング!!」


 それを見届けてから、トウマはセパレートウィングを再びバックパックに接続する。

 しかし、今度はブースターとして接続するのではなく、バックパックの横に、翼のような形でセパレートウィングをドッキングさせる。

 そしてエネルギーをオーバースプライシング本体から供給。

 更にセパレートウィングのドッキングにより、自動的にオーバースプライシングのリミッターが一部解除される。

 

「これもセパレートウィングの力だ! L-V.O.O.S.T(リミテッドブースト)ッ!!」


 そしてV.O.O.S.Tが発動する。



****



あとがき失礼します。

今回は2機の追加武装、ウィングについて


セパレートウィング

オーバースプライシング専用の武装兼補助装置。天才(災)メカニックの技術的ブレイクスルー第二弾。

普段は増設スラスターとして使えるが、有線自律兵器として使用が可能。

形は†を反対にしたような感じ。

2基のウィングはそれぞれ柄から光の翼、刀身からビームセイバーを展開可能で、それを応用した攻撃と防御が可能。

しかも脳波コントロールができる! の言葉通り、トウマの脳波でコントロールが可能。

その内、この刀身から放たれるビームセイバーがビームライフルとなる時が来るのかもしれない。

しかしこれは飽くまでも副次効果に過ぎず……?


フェンサーウィング

ラーマナMk-X専用の追加武装兼追加装甲。トウマがちらっと見かけた変形しそうな盾の正体。

V.O.O.S.Tは発動不可だが、フェンサーウィングそのものからビームセイバーを生やして突撃させることが可能。

また、ビームセイバーのエネルギーをウィング全体に纏うことでビームシールドもどきのような事もできる。しかし、有線とは言えエネルギー供給のスピードの問題でセイバーかシールドのどちらかしか展開ができない。

そもそもフェンサーウィングが盾と同じくらい堅いのだが。

また、盾とフェンサーウィングがドッキングした状態であれば、ガトリングをパージした後、ビームセイバーの刃は出力を抑えてフェンサーウィングの外縁を囲うように展開して投げつける事が可能。

その様は某バグ。人だけを殺す機械かよ!!


P.S

セパレートウィングの事を予言してる方がいました。

なんでファンネルって分かったんや……

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