Roll out
ティファが船を乗り換え、更に購入した業務用パーツプリンター。
これは言ってしまえば金属用の3Dプリンターであり、ネメシスのパーツや宇宙船の補修パーツなど、様々な物を高速で出力できる、メカニックからしてみれば憧れの一品だ。
これを使い、ティファはラーマナMk-ⅡとスプライシングPRが兼用できる新たなる強化プランの開発を進めていた。
「ハッキリ言って、スプライシングもラーマナも、中身を弄るのはいつか限界が来るわ。だから、この間のキングズヴェーリの戦いの時に設計したコレを改良して完成させることにしたの」
そう口にするティファの目の前には、ラーマナMk-Ⅱが立っている。
ただ、その姿はトウマの愛機だった頃からガラリと変わっていた。
ラーマナMk-Ⅱの装甲の上から、胸部、肩部と腕部、脚部、スカートに追加装甲が取り付けられ、更に盾にも追加の装甲が取り付けられている。
更に武装面では胸部と肩部の装甲内部にはマイクロミサイルを搭載しており、右肩にはレールガン、盾にはガトリングが搭載されており、右腕部の装甲にはビームセイバーが仕込まれており、ライフルをマウントしなくてもセイバーが使えてしまう。
ここまでてんこ盛りだと機動力が落ちそうだと思えるが、その欠点をカバーするため、バックパックにはスラスターが増設。更には腰に新たなブースターが取り付けられ、脚部装甲にもブースターが内蔵されている。
「コレこそが、火力、装甲、機動力の全てを向上させた兼用強化プラン、『アーマードブラスト』よ」
アーマードブラスト。トウマ風に言うならば、フルアーマーやヘビーウェポン。
それこそがティファが作り上げた、新たなネメシスの強化プランだった。
「…………えっ、なんかとんでもないもんできてんだけど」
「でも、ここまでブースターとか増設すると、推進剤がすぐ無くなりそうな気が……」
「背中にプロペラントタンクを装備してるから推進剤に関しては通常時とほぼ変わらない感覚で運用可能よ。ついでにアーマードブラストはその場でパージも可能。デッドウェイトになったとしてもデコイにするなりなんなりできるわ」
「なんつーもん作ってんのよ……」
こんなのネメシスオンラインにあったら間違いなくみんな使ってただろうなぁ、とトウマは一人思った。
何せ、ラーマナの弱点はその装甲の薄さと火力がライフルとセイバーに依存しきっている事だ。
ライフルは急所に当てねば大ダメージを与えられず、セイバーは少しでも気を抜けば逆にこちらが斬られるか離脱時に蜂の巣にされる。
しかし、このアーマードブラストはその弱点をカバーしてしまっている。
「1個弱点があるとすれば、スプライシングに付けると装甲が邪魔してV.O.O.S.Tが使えなくなるのよ。だから、V.O.O.S.Tを使う時はパージする必要があるわ」
「な、なるほど……ちなみにラーマナの場合は?」
「機体が太くなった程度で、それ以外は純粋な強化になっちゃったわ。我ながらこれを実現させた才能が恐ろしいわ……」
「うん、マジで恐ろしいわ」
「これ軍に売ったら多分世界変わるわよね……」
ちなみにスプライシングがV.O.O.S.T使用中も装備可能なアーマードブラストは現在開発中である。
「と、いう事でサラ。ちょっとラーマナに乗ってトウマと模擬戦してみて」
「データ取るのね? わかったわ」
「あー、なんか今回ばかりはマージでヤバい気がする……」
一応アーマードブラストは完成したが、それでも実際に使ってみたデータ等はまだ取れていない。
理論上問題なく動くはずだが、実際に動かしてみなければどうなるかは分からない。
そのため、サラとトウマで一度模擬戦する事に。
サラはアーマードブラストの装甲で更に守られたコクピットに乗り込み、OSを立ち上げる。その対面ではスプライシングPRが動き始めている。
『そんじゃお先に。スプライシングPR、行くぞ!』
そのままトウマはカタパルトに足を乗せ、開かれたハッチから宇宙へと飛び立った。
それを見送ってからサラもラーマナの足をカタパルトに乗せる。
「よし……サラ・カサヴェデス。ラーマナ・アーマードブラスト、出るわ!」
スプライシングPRの後を追い、ラーマナMk-Ⅱ・アーマードブラストが出撃する。
出撃してすぐの感触としては、普段と変わらない。いや、普段よりも速い、という感想を持てた。
装甲を追加した筈なのに普段以上の速度で飛べるというのは少しだけ違和感を持ったが、すぐに追加されたブースターにより可能になった動き等を試してみて、思わず声を漏らす。
速い上に繊細な操作ができる。しかも腰部のブースターにより真横への移動も今まで以上に直感でできる。
思わず唸る程度にはアーマードブラストは完成度が高い。
「こりゃ凄いわね……今度こそトウマに勝てそう」
『やべーって……なんか見てるだけでトンデモねぇ動きしてるって……』
少なくともV.O.O.S.Tよりはマシである。
「さーてトウマ? 今日こそ引導を渡してあげるわ!!」
『ちょっ、引導渡されたら俺死ぬが!!?』
そして、そのままサラのライフルの一撃から模擬戦が開幕したのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます