EYES

『V.O.O.S.T残り、5、4、3……!!』


 V.O.O.S.Tの制限時間が迫ってくる。

 ここで外せば、明日はない。

 そんな状況で、レイトは集中していた。

 息を吐いて、なるべく自然体に。

 まるで周りの光景がスローモーションのように見えるほど、集中する。

 狙撃用の小型モニターを座席の横から引っ張りだし、それを覗く。スナイパーキャノンのスコープと連動しているソレは超高画質で狙うべき的を映してくれる。

 故に、スナイパーキャノンの銃口を素早く核がある場所へ向ける。

 何、心配はいらない。

 あの核は確かに小さい。小さいが、ラーマナのように高速で動いていたりはしない。

 視界が悪い? 的が見えないかもしれない?

 そんなのは関係ない。

 いつもレイトは外せない状況でスナイパーキャノンを当てていた。

 頭部? コクピット? ブースター? そんなの関係ない。どこだって、露出しているのなら、数秒でスナイパーキャノンの照準を合わせて敵を穿った。

 ホワイトビルスターとは、それを共に成し遂げてきたのだ。

 ならば、今回だけできないなんてことは無い。

 いつも通り、穿つだけだ。


『V.O.O.S.T、稼働限界だ!! レイト!!』


 トウマの声が通信越しに聞こえた。

 それと同時に光の翼が消え、ビームの繭の中からホワイトビルスターとスプライシングPRが露出する。

 しかし、ビームの繭が消えたという事は、視界が確保されたということ。

 濁った水中のような視界だが、ビームの繭という視界を阻害していたモノが消えた事で、少しだけ視界はクリアになる。

 その視界で、一瞬で索敵して。


「……見えた」


 見つけた。

 スコープと連動した小型モニターの中に、確かにソレはあった。

 ライフル弾1発分の大きさしかない、キングズヴェーリの命の源。

 キングズヴェーリの核が。

 故に、スナイパーキャノンを構える。

 既にキングズヴェーリの体は再生を始めている。ホワイトビルスターが奴の体に接触するのも残り数秒だ。

 それでも、問題はない。

 既に穿つ的は、見えている。

 操縦桿のトリガーに指をかける。

 照準は合った。

 ならば、後はどうするかなんて、決まっている。


「──狙い撃つッ!!」


 引き金を、引く。

 スナイパーキャノン特有の物凄い反動と共に、弾が飛んでいく。

 綺麗に、真っ直ぐに、核へ向かって。


『行け……!!』


 トウマの声が聞こえた。


『行け……っ!!』


 サラの声が聞こえた。


『届け……!!』


 ティファの声が聞こえた。

 仲間達の声を受け、弾丸は真っ直ぐに核へと向かっていく。

 キングズヴェーリの体内を引き裂き、真っ直ぐ、真っ直ぐ、敵を穿つために。

 そしてその弾丸は、核へと迫っていき、当たるまではもう瞬き1回分もあれば十分な所まで突き進み。

 ──止まった。


『……うそ、だろ?』


 ここまでやって、ここまで必死になって。

 弾は、届かなかった。

 ──本当に?


「あぁ、嘘だよ」


 レイトはそれでも、諦めちゃいない。

 まだ、ホワイトビルスターのスナイパーキャノンは弾を撃てる。

 まだ自分達は、死んじゃいない。


『レイト、撃てェ!!』


 ミーシャの声が聞こえた。

 そうだ、後ろには友がいる。

 ならば、カッコ悪いところなど、見せてたまるか!!


「もう、いっぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁつッ!!」


 自身の体を食われながら、ホワイトビルスターが最後の弾丸を放つ。

 その弾丸は1発目の弾丸が通っていった跡を綺麗に通っていく。

 そう、これこそが本命。

 1発目で当たればそれでいい。だが、有効射程ギリギリな以上、1発目が的を穿つかは分からない。

 だからこそ、その後を追う2発目。これこそがレイトにとっては本命だったのだ。

 その本命は1発目が空けた穴を綺麗に通っていく。たった1ミリでも角度が違えば明後日の方向へと飛んでいく弾が、1発目の弾丸と全く同じ軌道でキングズヴェーリの核へと突き進む。

 正しく神業とも言えるソレは、レイトが何度も繰り返してきた基礎にして必殺。

 レイトとホワイトビルスターが放った弾は、決して外れることはない。

 故に。


「──どう?」


 その弾丸は、1発目の弾丸のケツを叩き。


「カッコイイでしょ」


 押し出された1発目の弾丸は、キングズヴェーリの核を穿ったのであった。

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