YES TOGETHER

 それから1週間ちょっと。

 機兵団はトウマの指導によってみるみる力を付けていき、更にティファからの教鞭もあり、急激に力を付けていった。

 それこそ、今の機兵団は団長や副団長、その他小隊長等はネメシスのカスタマイズを行い、個人に合わせた機体にしてみようと、整備班が鍛え上げられた知識を使ってネメシスを改造。

 既にランドマンのブレイクイーグルはブレイクイーグル・カスタムに名を改められ、本人の戦い方に合わせたチューンアップがされている程。

 しかし、そんな訓練漬けの日にも休息は必要。この日は機兵団の隊員は半数以上が休暇であり、トウマとティファも合わせて休暇を貰うことになった。

 そして、偶々レイトもこの日は非番であり、トウマとティファ、そしてレイトの3人は屋敷から離れた街中をぶらつく事にした。

 とはいえ、徒歩だとそこそこ時間がかかるので、レイトの車に乗って、だが。


「屋敷の周りが自然溢れてるだけで、やっぱ基本はコロニーみたいな感じなんだな」

「そりゃそうよ。どこも技術レベルなんて同じなんだし」

「そういえば2人は普段はコロニーに居るんだっけ? ちょっと羨ましいかも」

「何言ってんのよ。惑星に住むことの方がよっぽど贅沢で羨ましいわ。コロニーなんて窮屈なだけよ」


 基本的に街並みはコロニーの中と似ていた。

 しかし、決定的な違いがあるとしたら、それは空だ。

 コロニーは円柱状となっており、空を見上げれば青空はあるが、その向こう側の街並みも薄っすらと見る事ができる。

 そのため、完全な青空というのはコロニー在住の人間からすると珍しい物なのだ。

 ティファは星に降りたこともあるが、基本的にはコロニーと船を行ったり来たりなので、星から見上げる空を見るのはかなり久しぶりだ。


「所でレイト。この車、お前の私物なのか?」

「そうだよ。仕事柄、徒歩の通勤も楽じゃないからね」


 それまでは徒歩での通勤だったため、大変だったとはレイトの感想。

 確かに敷地に入ってからもかなり距離があったので、徒歩で移動するのはちょっと考えたくない。


「ほんと、車も凄くなったよね。目的地を設定するだけで移動してくれるんだもん」

「目的地まで道に沿って移動するだけだもの。あんた達の時代ってそれすらもできてないの、意外過ぎるわ」

「課題が沢山あったんだよ、課題が」

「所詮は惑星単位での課題でしょうに。そんなんだから宇宙開発もできてないのよ」

「凄い暴論だね……」


 だが、トウマ達の時代は確かに惑星単位での課題すら解決できておらず、そっちを優先しなければならないためか宇宙開発は大きな成果が出ていない。


「便利な事はさっさと実用化すべきなのよ。そもそもあんた等の時代はレトロ過ぎ。レーシック手術、だっけ? 当時の視力回復手術。トウマからサラッと聞いたけど、目にレンズ埋め込むって何よ。力技がすぎるのよ、力技が。どーせあんた等の時代なんてそうやって力技で解決し続けたからレトロ止まりしてんのよ」

「すげーな、俺等の時代の最先端が力技扱いされたぜ」

「まぁ、ナノマシンとか見るとそう思わなくもないけどね……」


 ちなみにレイトも視力回復手術のため、ナノマシンを投与済みである。

 裸眼の世界は素晴らしい。

 しかし、ティファの言葉は暴論のように聞こえるが、これでもしっかりと成果を残した先の時代の人間だし、このロリっ子はその中でも最先端を突っ切る天才だ。

 言ってることはあながち間違いでもないのだろう。


「まぁ、アレよね。まずは寿命伸ばすところからよ」

「え? いやいやティファさん。流石にそりゃ無理だろ」

「何言ってんのよ。老化遅延の手術なんて今時当たり前じゃない。一応選択権はあるけど、基本はみんな受けてるわよ。トウマも受けたでしょ?」


 え?


「………………俺、そんなの、知らない」

「えっ」

「ティファさん……僕も知らない……」

「……………………あー、これは、あれねぇ。当たり前も当たり前すぎて選択肢出すことすら忘れてるやつ。よし、目的地変更! 病院行って手術してきなさい! ナノマシンで終わるから!!」


 ティファが謎に明るい表情でバンバンと2人の肩を叩く。なお、若干冷や汗をかいている。

 この時代では産まれた頃に老化遅延手術をするのは当たり前であり、成長した後にわざわざ手術をする者は少ない。

 ちなみにこの手術は成長は阻害しないため、成長が終わると何十年かは老化が何百分の一になるという便利な物になっている。

 そんな当たり前の事をしていないわけがない、という先入観のせいで、漂流してしばらく経ってから老化遅延手術に気付く漂流者は数多く、トウマ達も例に漏れなかったというわけだ。

 まぁ、数年程度の老化は誤差だ。2人は何とも微妙な表情を浮かべあわせ、とりあえず進路を近くの病院に切り替えるのであった。

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