報酬の行方

 『宇宙色(そらいろ)の流星』。それは白と黒のツートンカラーで構成されたネメシス、スプライシングPRとそのパイロット、トウマ。そしてスプライシングPRの産みの親であるティファ、その仲間であるサラの3人に付けられた二つ名のようなものだった。

 ガベージ・コロニー戦役でV.O.O.S.Tを目撃した者が零した言葉が元となり、付けられたその二つ名はちょっと気恥ずかしい物だったが、ロボアニメ好きなトウマ的には少し嬉しい二つ名だった。

 そんな3人はと言うと、直近の戦闘で得た泡銭を使い、船でプチ豪遊中だった。


「いやー、今回も儲かったわねぇ」

「だな。もうさ、ほんと俺達働かなくても生きていけるよな」

「そうねぇ。老後も余裕ってレベル」


 3人とも酒はあまり好きではないので、ジュースで素面のプチ豪遊。

 買ってきた高級フードカートリッジから出力した料理に手を付け、少しだけ騒がしく楽しむ。

 爆散し、ジャンクになったとはいえ4機分のネメシスと船1隻分の売却額と言うのはこの程度の豪遊を何日も繰り返しても問題ないほど。

 しかも3人は直近の依頼の報酬やらガベージ・コロニー戦役でのマリガン討伐の報酬やらもあるお陰で、懐はかなり暖かかった。


「それで、サラ。新しいラーマナの調子はどうだった?」

「前の8割って聞いてはいたけど、予想以上ね。最高だったわ」


 それこそ、新たなるラーマナを作ってもこれから先、働かなくても生きていける程度の貯金がある程には。

 新たなるラーマナ。その名をラーマナMk-Ⅱ。

 ニコイチ整備した際に余った部品や、結構な数余っていたラーマナの装甲を流用して新たに作られたラーマナMk-Ⅱは、オリジナルのラーマナの8割の性能を持つ。

 それでもこの時代の最新鋭機を超える性能を持つため、十分にMk-Ⅱを名乗れる機体に仕上がっていた。


「スプライシングも居るしラーマナも居る。いやー、まさに俺達最強の傭兵だな」

「ネメシス戦はね。生身で殴られたらアンタなんて1分もあれば殺されるでしょ」

「悪いがパイロットへのダイレクトアタックはNG」


 実際にトウマの顔面に拳がめり込んであわや大惨事、というコントみたいな悲劇があったわけだし。

 とはいえ、ネメシス戦に置いて3人は十分に最強を名乗れるスペックはあった。

 それでも軍一個を相手にするとか、キングズヴェーリを倒してこいとか、そういうのは流石に無理だが。


「にしてもあたし達、ここ半年働きっぱなしだったわよね」

「あー、そうねぇ……休憩は挟んでるけど、休日らしい休日は無かったわね……」

「そうだっけ……? そうだったかも……」


 そんな3人なのだが、ふとサラの言葉を聞き、最近休日というものを挟んでいなかった事に気がついた。

 傭兵業なんて勤務態度なんてものはないので仕事をする時だけ真面目にやってそれ以外の時間は好きな事をしているのだが、3人は暇だし依頼でも受けるか、程度のノリで仕事をしていたためマトモな休日なんて取っていなかったのだ。

 別にそれでもいいのだが、指摘されるとこう、なんか勿体無い気分になってくる。


「……それなら、この間話してたリゾートコロニーに行ってみない?」

「あー、あのすげー高いリゾート施設ばっか詰まった?」

「そうそう。あたし達の貯金ならそれくらい余裕でしょ? 折角休むんならいい所行きましょうよ」

「そうねぇ。まぁ行ってみたいっちゃ行ってみたいし。トウマは?」

「俺も別にいいぞ。興味あるし」


 リゾートコロニーはお隣のティウス国の富裕層である貴族様であってもそう簡単には行くことができない、メロス国屈指の高級リゾート施設だ。

 この時代のメロス国とその周辺国の人間であれば、一度はリゾートコロニーで思いっきり遊んでみたいと思うもの。

 サラはそこら辺の欲はしっかりとあるし、ティファも機械弄りが趣味ではあるが、別に興味が無いわけではない。トウマも未来の高級娯楽施設がどんな物か気になる。

 

「じゃあ異論なしね。それじゃあ、リゾートコロニーに近々行きましょうか」


 という訳で3人は、普通の傭兵ならまず一生に一度行けるかも怪しいし、普通に働いている人間でもしっかりと綿密に計画して貯金をしなきゃ行くことができないような高級リゾート施設への旅行をその場で決めてしまうのだった。

 既にこいつ等の金銭感覚はそこそこ壊れているのである。

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