Fire Wars
そこはかつてコロニーが存在していた宙域だった。
100年以上前にコロニーの老朽化が原因となり、コロニー内の住人が全員退去した後、爆破解体によってそのコロニーは廃棄された、筈だった。
某3人組の傭兵が捕らえた宙賊の頭の中を無理矢理覗いた事により、その宙域にはコロニーの残骸を基にして作った杜撰な作りのコロニーがある事がわかった。
宙賊の間では『ガベージ・コロニー』と呼ばれるソレは、つい数ヶ月前に幾つかの宙賊組織を武力で押し潰しのし上がった一人の人間により考案され、作られた。
それには各地から攫われた民間人も関与させられており、その全員がガベージ・コロニー完成と共に『商品』とされて人身売買にかけられたという。
ガベージ・コロニーは今後、宙賊達の拠点となり、宙賊の力を増長させる原因となりうる。
故にコロニー国家『メロス』の軍上層部はガベージ・コロニーの占領及び破壊を提言。
既に民間、軍の両方に被害が出ている現実を重く受け止めたメロス国首脳陣により、ガベージ・コロニー制圧作戦、宙賊殲滅作戦が可決され、軍は宙賊に悟られる前に侵攻を始めたのであった。
「すげぇな……周りの船全部軍の最新鋭の船だぜ」
『相当軍もやる気みたいね……傭兵もわたし達だけじゃない。ネメシスだけで100機以上は居るわね』
そしてこの作戦のために集められた穴埋め用の傭兵の数、合計500余人。その傭兵が持つネメシスだけでも100機以上はある。
この数の傭兵を短期間で集めてしまうほど、国も軍もこの事態を重く受け止めていた。
何せ、被害者は正確な数は不明だが、ここ数ヶ月で行方不明になった者はメロスだけでも20万人を超える。その過半数は、この宙賊達が誘拐したと考えられている。
「さて、そろそろか」
既にトウマとサラは互いのネメシスに乗り込んでいる。
作戦の詳細としては、作戦開始時刻になり次第、軍のハイパードライブに合わせハイパードライブを開始。指定の宙域に到達次第、ネメシス各機は発進。
軍のネメシスの侵攻の後ろに傭兵は陣取り、奇襲や強襲、軍のネメシスをすり抜け母艦へと攻撃を仕掛けてくる宙賊を殲滅するのが仕事だ。
事前に味方識別用のタグが配布されているため、誤射の心配はあまりしなくてもいい。
『サラの船はわたしが遠隔でコントロールして持ってくわ。あと、わたしも戦闘が始まったら船で撃墜したネメシスの残骸を回収するから、援護は任せたわ』
宙域でのジャンク回収は慣れたものだ。そのための設備も後部ハッチにある。
ネメシスの残骸程度なら数秒もあれば回収できるくらいだ。
故に今日の飯は豪勢なものに……いつもかなり豪勢だが、更に豪勢な物になるだろうと期待して待機していると小型船がハイパードライブ特有の揺れに包まれた。
さぁ、そろそろ出番だ。己に暗示をかけ、先んじてスプライシングをハンガーからカタパルトへ移動させる。
ハイパードライブは僅か数分。ハイパードライブ特有の揺れが収まり、後部ハッチが開く。
戦場は目の前だ。
『トウマ、サラ、危なくなったらすぐに戻ってきなさい。こっちもバリアはいつでも張れるようにしておくから』
「わかった。まぁ、要らねぇ心配にしてやるから期待してな」
『そうね。こことわたしの船がいっぱいになるくらいの戦果をあげてくるわ』
さぁ、出撃だ。
『さぁ、各機出撃よ!』
「トウマ・ユウキはスプライシングで出る!!」
『サラ・カサヴェデス! ラーマナ出るわ!』
黒と白のネメシスが宙域へと解き放たれた。
既に周りの船からはネメシス達が発進しており、傭兵達はそれぞれポジションについて獲物が来るのを待っている。
その前方ではハイパードライブで到着したばかりの軍が第5世代の軍用ネメシス、ファウストケーファーを順次射出し、ネメシス同士で編隊を組んでいる。
その先にあるのは明らかにボロボロなコロニー。そこからは待っていたと言わんばかりに次々とネメシスや武装した船が飛び出してくる。
軍ほどの量ではないが、それでも宙賊と呼ぶには余りにも規模が大きすぎる。
「すげー数だな……賊ってこんな規模になるもんなのか……」
『こんなのが今まで知られてなかったなんて……』
そして、軍と宙賊の戦闘が始まる。
漆黒の宙に花火が咲き始める。それは幻想的な光景にも見えるが、その花火一つ一つが人の命とすら言える。
中にはミサイルが何もない所で爆発しただけというのもあるが、それでも半数以上は人の命の最後の輝きだ。
アニメでしか見たことがないような戦争。それが目の前で起こっている。
「…………あの爆発が人の命、か」
『あたしもこんな大規模な戦闘初めて見るけど……この光景は何回も見たくはないわね』
この時代において軍が腰を上げての戦闘というのは少ない。それこそ、国家間戦争である程度だ。
この国はそういった戦争には長らく関わっておらず、時折同盟国の戦争に援軍として参加する程度であったため、この場にいる傭兵の殆どはこの光景に圧巻させられている。
エネルギー兵装による遠距離攻撃が確率されていないため、光の全ては実弾によるものだというのにも関わらず、光は絶えない。
そんな光景を恐ろしく感じるのは当たり前だった。
『できれば軍の奇襲が成功して相手が展開する前に勝負がついててほしかったけど……宙賊側はこの攻撃を察知していたようね』
「あ、あぁ……そうみたいだな。仲間が捕まったから敵が来ると思って備えてたんじゃないか?」
『多分ね。もしくは、わたし達があの時の宙賊を捕まえてから今日までの間に軍の関係者が奴等に誘拐されて作戦を把握されてたとか……』
『だとしても、数と質で勝ってるのはこっちよ。相手の機体にはファウストブラウも多いけど、基本は型落ち。対してこっちはファウストブラウよりもスペックが高いファウストケーファーばかり。負けようがないわよ』
戦争の勝敗を分けるのは、量と質だ。
兵士の量、兵器の質。それらを総合的に見て高い方が勝つ。
確かに宙賊の数は厄介だが、それでも烏合の衆。整備だって手が回ってなかったのであろうと思われる機体も散見される。
この戦い、相当なジョーカーが相手に無い限りはどうとでもなる。
「……そういえば、宙賊ってハイパードライブジャマーを持ってたよな? それって今も使われてるのか?」
『使われてるわね。でも、わたし達の船は賊のコロニーと船から離れてるから、まだハイパードライブは可能よ。あと、ちょっとした策もあるからハイパードライブジャマーに関しては気にしなくてもいいわ』
更に言うには、軍の船が最初に展開していた場所は丁度ハイパードライブジャマーの効果範囲ギリギリだったらしい。
そこら辺も考えられている辺り、プロは流石だと感心する。
感心するが……さて、仕事の時間だ。
「右翼側に回り込んでる部隊がいるな。ティファ、あれを叩きに行けるか?」
『ちょっと待って。えっと……アレね。少し連絡するから待ってちょうだい………………よし、許可が出たわ。二人は先行して。わたしも追いかけるから』
『了解。さ、行くわよ』
軍はあまり戦力を割けない。故に傭兵がいる。
横っ腹から奇襲を仕掛けようとしてくる賊の元へとトウマとサラは向かう。
結果は、聞くまでもないだろう。三人の小遣いが増えただけだ。
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