戦いのさだめ

 宙賊殲滅作戦。

 某3人組の傭兵達により捕らえる事ができた宙賊から、軍は超大規模な宙賊組織の事を知った。

 構成員は万以上。装備も最新鋭から1世代前の物に加え、商売のルートもその規模に見合う大きさになろうとしている。

 している、というのは、単純にその宙賊組織はここ数ヶ月で誕生し、驚異的な成長を遂げたが故に商売のルートの構築が間に合っていないことが原因のようだ。しかし、成長中の今でも既に規格外の規模になってしまっている。

 そんな宙賊軍団により齎された被害はかなりの物で、民間から傭兵、企業が被害を受けている事が発覚した。

 特に企業に関しては何十機ものファウストブラウを強奪されてしまったが、敵の居場所が分からず泣き寝入りするしかなかったという。

 更には、噂ではあるが軍も被害にあったとの事だ。だが、ハイパードライブジャマーの件を考えれば、これは事実だろう。

 それ故に見逃すことなどできやしない。敵が12機もの第5世代ネメシスを失った今だからこそ、と軍は宙賊の本拠地へ電撃作戦を立案。可決された。

 それこそが宙賊殲滅作戦。最早戦争の領域の戦いとなる作戦だ。

 その作戦に参加するよう、ティファ、トウマ、サラは軍から直接依頼を受けることとなった。

 断るならばこの依頼は無かったことにして他言無用。受けるのであれば軍に一報入れ、所定の日に所定の場所に来るように、との事。勿論報酬はかなり弾まれている。


「とんでもない事に片足突っ込んじゃったわね……」


 その依頼を知り、ティファは額を抑えて溜め息を吐いた。

 軍隊並みの規模を持つ宙賊組織。正しく悪夢としか言いようがない現実がそこにはあった。

 最早そんな組織は賊等ではなくただのテロリスト集団だったり武装カルト集団だったり。少なくとも最早賊の範疇には収まらない。

 故に軍も重い腰を上げたのだろう。

 いや、上げざるをえなくなった、か。


「今まで見つからなかったのは、一度も奴等は失敗しなかったから、か。武装も装備も整っている以上、民間船や傭兵の船はなすすべも無い。軍の船だって小規模のモンならどうにでもなる。それで誰も逃さず、誰も捕まらなかったから今まで軍もその存在を知らなかった」

「で、知った頃には大惨事……国のトップが何割か入れ替わってもおかしくはないわね。この国、民主主義国家だし、次の選挙が荒れそう」


 そんな正体不明の賊の尻尾を掴んだのが、某3人組の内の2人であるトウマとサラだった。

 たった2機のネメシスで12機のネメシスを10分で全滅させるその腕があったからこそ、この件は露呈したのだ。

 幸いにもまだ賊は力を付けきっていない。故に、このタイミングしかなかったのだ。

 この宇宙で育ち始めた癌細胞の駆除は。


「……別にわたし達はこの作戦に参加しなくてもいい。けど、コイツらが力を更に付けたら傭兵どころの話じゃないわ。下手したら、コロニーにすら手を出して略奪の限りを尽くす」


 ティファの脳裏に浮かんでいるのは、幼馴染であるロールの姿だ。

 戦える力があるのに幼馴染がむざむざ宙賊の玩具にされるかもしれない現実を、受け入れたくはない。


「トウマ、わたしは参加してもいいと思ってる。ここまで関わった以上、見てみぬふりはできないわ」

「なら俺も参加するさ。俺だって、力があるってのに悲劇を見逃したくない。そんなことしたら寝覚めが悪いしな」

「右に同じ。あたしも参加するわ」


 偽善だろうと構わない。自分達ならばやれるのだから、やらない手はない。

 人助けして金が貰えるならいいじゃないか。


「それじゃあ参加って事で、当日は教えられたポイントにハイパードライブで向かうわ」

「おう」

「それと、戦闘に関しては基本的に軍がやるから、わたし達は奇襲や戦闘空域を抜けてきたような余りと戦うことになるわ。まっ、キメ顔しといてなんだけど、露払いね。気張らずにいきましょ」

「まぁ、そりゃそうよ。所詮あたし達は雇われの素人。肝心な所はプロに任せるべきよ」


 とは言うものの、やはり戦闘の中心は軍が担う事になる。

 トウマ達は雇われたものの、求められているのは一騎当千の活躍ではなく、戦力の水増し。万が一を防ぐための穴埋めだ。

 その穴埋めを、二人の腕ならば可能だと判断したのは軍である以上、トウマ達は軍の指示に従うのみ。


「まぁ、いくら相手が大規模な宙賊組織とはいえ、軍が相手だ。負ける訳がない」


 トウマの言葉にティファもサラも頷いた。

 この時代の軍の事はよく知らないが、それでもゲーム上では宙賊よりもマシなNPCとして、様々なイベントで姿を見せていた。

 少なくとも、賊に負けるような質でも量でもないのは確かだ。トウマとサラのような規格外の一騎当千ができる者がいない限りは。

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