口封じ③

----気がつくと車に乗せられていた真琴。


ワンボックスカーの真ん中の席で横になっていた。


真琴が起きたことに気がつくと運転しながら雨林が声をかける。


「大丈夫ですか?篠田くん。」


「はい…大丈夫です。」


「初めての見学にしては少々血が流れすぎましたかね。でもあれぐらいは普通なので慣れていってくださいね。」


(なんかとんでもないこと言ってんな…)


雨林の常識はずれな言葉に先が思いやられる。


「そういえば雫さんは?」


「あぁ、服部さんなら遺体と現場の後片付けをしてくれていますので後で迎えに行きます。」


「そう…ですか。なんかすみません。俺、力になれる気がしません。」


「誰でも最初からできる人はいません。特に "殺し" の仕事は。どこか頭のネジが抜け落ちてる人にしかできないことです。でも篠田くんはそういう家系に生まれたのですから受け入れなければ逆に狙われ、命を落としますよ。」


雨林の言葉に真琴は黙って聞くことしかできなかった。


窓の外をふと見ると真っ赤に染まる東京タワーが見える。


(俺はこの街で生きていけるだろうか…)


真琴はただ茫然と星一つない曇天の夜空を眺めながら今日の出来事を思い返すのであった。

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