口封じ①

黒のワンボックスカーに乗り、30分ぐらい走っていくと目的の廃ビルが見えてきた。


車を降りて廃ビルを見上げる。


まだ少し夜の寒さが残っているせいか、それともこれから起こることに対する武者震いなのか…。


真琴は雨林と雫の後についていった。


 廃ビルの中は暗くて周りがよく見えないが夜目が効くのだろう、雨林と雫は慣れた様子で足音を立てずに階段を上がっていく。


真琴も最大限に注意を払って進む。


 2階へ到達すると何やら物音が聞こえてきた。


遠くには灯りも見える。


どうやら目的の人物、原田 修造がいるのだろう。


雨林が真琴の耳元でヒソヒソと話す。


「篠田くん、ここで見学していてください。私たち2人で向かいます。」


真琴が頷くと雨林と雫は気配を消しながらターゲットに近づいていった。





 ----その頃、組織を抜けだそうと逃走した原田 修造は蝋燭の灯りを見ながら物思いに耽っていた。


(もう俺は組織にいられねぇ。朝になったら電車で県外に移動して--)


「…動くな。」


低い声にハッと気がつくと原田の首にはクナイが突きつけられており、身動きが取れない。


思わず両手を上げて降参の意を示していた。


「まさか、人を使ってここまで追ってくるとは思わなかったぜ。だが、さっさと殺さなかったのは…甘いな!!」


原田は袖に隠し持っていたサバイバルナイフを出すと


シュッ--


背後の人物に向けて振り回した。


しかし、その人物である雫は華麗に宙を舞いながらかわしていく。


(ターゲットの顔で間違いない。)


雫は物陰に隠れる雨林に目で合図を送るとターゲットと対峙する。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る