3 浄化する

実家に戻り、父に、大雑把に起きた出来事を伝えた。


父は、


「あー、そうだろ。あの親子は、昔から本当に霊感があるからなぁ。


妹は亭主が早死にしてから、ハッキリ見えるようになったんだよ。


サヨコは、何時ぐらいからかなぁ?いつの間にか占いの商売を始めてたんだ。

それで、あの豪邸も建てたんだ。凄いよなぁ。」


と、何故か誇らしそうに話した。


私は今日見た、立派な門構えの占い御殿を思い返す。


こんな身内がいたとは…。


父自身は、霊感のたぐいは一切信じていない。なのに、身内なら補正が掛かってOKのようだ。


何か狡いなとは思いつつ、翌日実家から家路に向かい、サービスエリアで休憩しながら一日がかりで帰宅した。


家に着いて、早速、クリスタルの細石を塩水に浸けた。

その間に、盛り塩用のコーン型に塩をぴっちり詰め、小皿にひっくり返す。


それを三つ用意し、アドバイスされた通りに、各部屋の隅に置いた。


細石は清潔なタオルで水気を拭き取り、小さなトレーに敷き詰め、携帯電話置き場にした。


これで、私に憑いた、生き霊や邪念を浄化出来るそうだ。

巡って、コウタの運も上昇するらしい。


ふぅ。

今回の帰省は、たったの二泊三日だったが、何だか長い旅路の様に感じた。


そして、嘘か本当か分からない、変テコなリアクションの、気味の悪い親戚たち。

それに、まんまと乗っかる間抜けな私達か。


疲れがドッと出て、バタンと眠りについた。


翌日、軽くブランチを取ってから、予備の粗塩を買いに出掛けた。

最初の数歩を、教わった吉方角に進んでから、目的地の店へ行く。


本当に、こんなんでコウタの厄が落ちるのか?それに、私に生き霊が憑いている、といっても、実際、正体は何なのか?


私は購入した粗塩をエコバッグに仕舞いながら、ぼんやりと考えた。


帰宅すると、やっとコウタが起きてきた。


「モーニン。こうた、寝覚めはどう?」


「おはよう、ママ

うーん、こんなによく眠れたなんて、久し振りだよ。

やっぱり、盛り塩効果かな!」


なんと、効き目があったらしい。いや、気の持ちようか。


こうして、私達親子は、厄払いの深みにはまっていくのである。








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