第2話 妹が箱の世界に飛び込み兄を説得

「お兄ちゃん、このままじゃダメなの!」


真美は必死に叫ぶ。だが、箱の中から返事はない。真美は諦めきれずに、毎日のように一郎のアパートを訪れては、箱に語りかけた。


「お願いだから、箱から出てきて。私はお兄ちゃんが心配で…」


真美の声は、徐々に弱々しくなっていく。


箱の中で、一郎はボックスとの会話に夢中だった。


「ほら、一郎。外の世界なんて君には必要ないだろう?」


ボックスが甘い声で囁く。


「ああ、そうだね。でも、真美が心配してるみたいなんだ」


一郎は少し迷いを見せる。


「彼女も君を理解できない外の世界の一部だ。気にする必要はない」


ボックスは一郎を説得する。


真美は、もう言葉だけでは一郎に届かないことを悟っていた。彼女は重大な決意をする。


「お兄ちゃん、私も箱の中に入るわ!」


そう告げると、真美は迷うことなく箱の中に飛び込んだ。


狭くて薄暗い箱の中。真美の目に飛び込んできたのは、想像を絶する光景だった。


一面に広がるファンタジックな世界。一郎とボックスが、その世界の中心で楽しげに会話している。


「ここが、お兄ちゃんの理想郷なの…?」


真美は息を呑む。


「真美!?なんでお前がここにいるんだ!」


一郎は驚きを隠せない。


「お兄ちゃんを連れ戻しに来たのよ!」


真美は一郎に歩み寄る。


「君には関係のないことだ」


ボックスが真美を遮る。


「お兄ちゃん、ここはお兄ちゃんが作り出した幻想の世界なのよ。ここにいたら、現実から遊離してしまう!」


真美は必死で訴える。


一郎は戸惑いを隠せない。ボックスの世界と、真美の言葉。一郎の心は揺れ動く。


「でも、ボックスは俺の親友だ。ここが俺の居場所なんだ」


一郎は弱々しく呟く。


「違うわ。お兄ちゃんの居場所は、私やお母さんのいる現実の世界よ」


真美は一郎の手を取る。


ボックスは真美を睨みつける。


「彼は私たちのもとにいればいいんだ!」


一郎は、ボックスと真美の間で揺れる。


果たして一郎は、どちらの手を取るのか。


箱の中の理想郷と、外の現実世界。


一郎の決断の行方は――。

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