雑用ってことですよね?

「臨時でつけようと……話が通っていませんか?副団長の責任です」


 速効で副団長を見限ったな。内部でどれだけ問題があったのかは知らんがそれでいいのか?騎士団の統制と信頼感はボロボロなんじゃないか?


「私はそう通達されただけです、臨時後方本部長に伝わっていないのは副団長の責任です。帝都から許可を得られたと通達はきました。だから副団長が連絡してないのが悪いと思います」

「帝都の騎士団本部からの連絡は?」

「副団長にいくはずです、つまり副団長が悪いので私にはわかりかねます」

「そもそも後方本部長の仕事とは何なのですかね?」

「初めて聞いた役職ですが臨時職らしいです」

「後方本部長に臨時で就任したか臨時で代行してるのではなく役職自体が完全な臨時と言うことですかね?」

「おそらく、詳しい説明はされていませんが後方業務を統括すると副団長が言っていました、副団長が!言っていました」


 清々しいほど責任の所在を明らかにしたな。

 ちらりとドントを見ると複雑そうな顔をしている、利益のほうがでかいから怒れないのかね?目があったが視線で会話はできないんだよね。


「相談なく役職につけるの騎士団だから致し方のないところはあるかもしれませんが、優先するべきは領土の臨時統治。なぜそのような連絡一つも騎士団は出来ないのでしょうね?騎士団が役職を理由にこれを優先しろと行政に割り込んでは困るのですよ、軍人政治時代に戻るおつもりですかな?いや、騎士団ともあろう方たちが……ありえませんよねぇ、軍閥でもあるまいし。カール様の地位をお忘れようですが席次500番代ですね、そしてドルバーニュ伯爵領の差配、行政処理……ああ騎士団と帝国軍に輸送する物資の割当仕入れ全面的に担当してましたね?覚えていただけるか疑問ですが」

「副団長には困ったものです、いや本当に、呼んできましょうか?呼びましょう!」


 俺は何も読み取れないし、特に何も目で伝えてないがなんか察したか受信したらしい。電波系臨時秘書かな?

 白旗を上げるのが早い第1騎士団長は軍を素通りさせ副団長の元へ案内するようだ。

 君たちさぁ……この2ヶ月で何を学んだのというだけのことを言葉を手を変え、品を変え吐き出し続けている。いや、本当におかしいな?書類紛失してるか伝令死んでるんじゃないか?


「まぁ、とりあえず聞きましょうか。伝えるのを忘れたのか伝えたはずなのに伝わってないか。私にはわかりかねますからね……ひょっとしたら帝都からの書類が届くまでは曖昧な立ち位置である可能性もありますし」

「……そうですね、カール伯爵がおっしゃるのなら帝都の連絡が遅れている可能性は大いにありますからね、なにせ西部の山間工事が特殊爆薬実験場とかしているようなので」

「……何だその情報は」

「おっと、カール様。大したことではありませんよ、工事用に山を吹き飛ばしたり道を作るために新しい爆薬の実験をしているだけです、工事報告は必要でしたか?」

「領地の運営に支障が出てないのならいらん、あったときは報告するように」

「はっ!」


 しれっと伯爵と呼び方を使い分けて騎士団にプレッシャーを与えてるな。ガルバン第1騎士団長は俺は知らん、上が勝手にやったって感じ。横にいる部下は真っ青だな。


「じゃあ、副団長は私が連れてきます。これはもう許せませんよ!この程度のことも出来ないなんてもう……こう……許せませんね!」

「いえ、ここでお待ちいただいて結構です。もしも副団長の連絡役がこのことを伝え忘れていただけなら聞き取りの必要もありますので」

「いや、そんな……メモを取ってるんでそれはないですよ、な?な?」

「第1団長の習慣は私は知りません……」


 絶望に染まるガルバン第1騎士団長を見ながら多分メモ取ってないんだろうなと思った俺は適当な人間に副団長を呼びに行かせることにした。これでまた連絡ミスだったら本気でなんとかしたほうがいいと思う。

ウインドウは……呆れてるなこれは。





「帝都から連絡が届いていないのですか!?」

「ありません」


 呼び出されたトーチャ副団長は役職に関してのことで聞きたいと言われた際は最初はその程度のことで呼び出すなんて何事だろうと思って後日にしようとしたようだが、本陣づとめの人間から伯爵から呼び出されるときなんて緊急か説教のどっちかだし行った方がいいと言われて来たようだ。職務で聞いてこないなら大丈夫だろうと思ってたらしい。


「帝都の連絡はほぼ同時で来るはず……職務内容もそちらに記載されてるはずです。それに問題も起きずにスムーズなのでてっきり……」

「就任していたと?」

「はい、臨時職なのでミスがあっても責任は取らされませんし、そもそも最近の出来事で考えても騎士団が責める側にはいませんし……あくまで臨時なので就任要請も許可もいらないので……騎士団の運営も他に書類が得意なものを派遣する前に戻ったので……うまく回ってるんだなぁと」

「私に通達がなかったのは帝都からの連絡が優先だったと考えても?」

「役職を決めるのは人事部門とカストラーゼ騎士団長ですので、私は無関係ですし……私が通達するとカール様より上位になってしまいますし……」

「平団員でも臨時後方本部長でも副団長より下なのでは?」

「騎士団長の人事担当に私が口を出したり上位者にはなれませんよ、後方雑務で問題を起こしたあとで就任してもらった臨時後方本部長に上として接してきたら端的に言って無能ですし……むしろ戦場意外の業務では……この遠征軍では役職的には臨時後方本部長のほうがNo.1なんじゃないかなと……知らない職なのであれですけど……戦場ではともかく平時業務では……ちょっと、その……訓練やら巡回に口を出された訳でもないので……反骨心もないと言うか……書類仕事から開放されてありがたがってると言うか……そのぉ……連絡に不備があったのは帝都なので……私じゃないと思います」

「騎士団は私がここにいると知っているんですよね、戦闘報告書とかも出したでしょうし」

「…………」


 戦闘報告書出してないんじゃないだろうな?帝都のお偉方には報告したけど騎士団に出だしてませんでしたとか止めてくれよ?


「あの~カール様は予定ではもう帰領でしたっけ?」

「いや?その予定はまだだな、引き継ぎが来てからか何かではないか?」

「本来この2ヶ月以内で変える予定だったりしましたかね?」

「そもそも今後の予定がない、行政やら何やらの最終判断をしているだけだ」

「じゃあなんででしょうね?」


 知らんわ!

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