じゃあ辞めた兵士は?
「そうなると辞めた領兵はどうなるんだ……?何かをしでかしたりするんじゃないのか?」
「ご安心ください、カール様の意図はわかっておりますとも……何かをやらかしたものは殺しております」
えっ?ドント?
「具体的に?」
「手続きせずにドルバーニュ領都で生活しようとしたものは罰金を取りました。帝国共通の決まりですし……これは完全に意図的ですね。書類は提出したはずですが?」
「いや、記憶がない……申し訳ないが」
「…………右上に赤い印のついたものです」
「ああ、あれか。あれは一応軽犯罪の罰金であっただろう?殺した話の方を聞きたいのだが」
「ああ、これは失礼しました。殺した方は騎士団と帝国軍の管轄なので……」
「いや、騎士団や帝国軍から書類は来ていないが?」
そう言うとドント臨時秘書と俺の会話を聞いていたガルバン第1騎士団長はソワソワしだした。出してないんだな?
ドントも油が切れたロボットのように首を動かしガルバン第1騎士団長をじっと見つめる。
「その……報告書はそちらに届いていないのでしょうか……?」
「少なくとも戦闘の記録などの記憶はない、なにか違う文面とかになっているのか?ドント臨時秘書?存在は確認したのか?私が提出したのは?」
「カール様に直接渡されるものなので私は確認しておりません……誰か他のものが持ってきたということは?」
「手紙等ならあるが報告書と言うほどのものはない、戦闘の話もない、その程度で良いものか?」
「現状の領土はカール様が統治してるのにその程度の報告で済むわけがありません、必ず書面にして提出されるはずです。少なくともこの1ヶ月で数回は各文官から耳に入っております」
「私は知らなかったが?」
「緊急の要件でもないことと当然の判断ですので書類で伝えればよいかと、それに執務室からカール様が出ることはありませんし……仕事が終わると個室に戻ったり仮眠を取ったりするので……」
当然の判断なのか……。まぁ領兵が盗賊化する可能性もあるしな、領軍解体した後だし、こちらに報告したら解体した領軍でなんとかしなくちゃいけなくなるからかね?
「別に起こしてもよかったのだが……」
「大した要件でもないのに起こすのはちょっと」
領兵やめてなんかやらかしたやつを殺すのって大したことじゃないのか……悪い平民は殺そう、貴族はゴミみたいな行き過ぎた管理社会みたいな。
これ平民も暮らしにくそう。
「平民が関わることだしな」
「意図時な悪事を働く犯罪者に人権はありませんし……」
「そのうち能力で人権が変わりそうで嫌だな」
「生きるのを能力の有り無しで決めるような国なら私は滅ぼしますね」
「同感だ」
あーよかった、能力がない平民は生きる価値なしレベルでディストピアではなかった。貴族は能力がないと生きる価値なしだけど生かしてやってもいいみたいな評価なのに厳しくないか?
「しかし、地位とは責任と能力があって初めて得られるもの。地位と能力がある第1騎士団長としてはこの責任はどうお考えですかな?平民時代は仕事をして税金を収めるだけで良いかもしれなませんが騎士団に入り平民の守護者になったはずなのに、ああどうしてですかな第1騎士団長殿、もちろん団長自らが書類を作成して持ってくるとまでは思っていませんが帝国軍がこうも遅れるとは思えません、はてさて一体誰が担当したのか気になるところですなぁ?第1騎士団長は責任というものをどうお考えですかな私は……」
あーあ始まっちゃった。怒ってもああ言う会話になるんだな、機嫌よくてじゃないんだな大変だね、あんたも。
ガルバン第1騎士団長こっちを見てるけど俺被害者側でしょ?知らないよ。頑張ってね、役目でしょ。
書類書いてるから終わったら呼んで。
「さて、今日の私の業務は終了だが……やはり書類はなかったな」
「お疲れ様です」
「それで?殺した書類は?」
「聞いても答えてくれないのですよ、ガルバン第1騎士団長は部下の仕事を把握してないのかもしれません。いや、もちろん第1騎士団がその仕事を担当したとは限らないのですが……帝国軍に尋ねたほうが良いかもしれません」
「では帝国軍に尋ねておいてくれ、私が手紙を書く必要があるのものか?」
「いいえ、行政案件のたぐいですしこちらで書けますよ。すぐに届けにいかせます」
「来たら呼んでくれ。目を通す」
「いいえ、今日の業務も全て終了して机の上に仕事をすべきものはありませんから……本来なら緊急でもない限りは働かせないものですよ、労働法がありますからね、騎士団の方は恩恵によく預かっておりますよね?訓練時間もそうですが休憩時間の確保も……ここは戦場ではないのですが?元領軍の処理は貴方方が請け負ったはずですよね?文官の戦場における書類がでてないことになっているんですがそれは……確かに確認を怠った私が悪いですな、これほど重要な書類を帝国席次500番代で騎士団員で伯爵に提出しないと言うことも理解できない領都の文官が悪いんでしょう」
「すまんが上がるぞ」
一応客だけどもういいだろ、下を向いた置物みたいになってる。
カルマンさんもこれが部下なんて苦労してるよな、俺に派遣してきたとこもなかなかいい性格してると思うけどさ。
翌朝、トーチャ副団長が訪れたとのことだった。ドント臨時秘書が応対してるらしい、応対ね……お疲れ様。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます