だから統一してないのね

 騎士団から詰問されるし、領軍が激減するし全くとんでもない1週間だったな。

 まぁ、領軍はどうでもいいだろう。本来より数が多すぎて金が向こう持ちでもちょっと大変だった。特に食料補給な。


 おかげであれだけあった書類がササッと終わる。暇で暇でしょうがない。まぁ7000人も減ればこうなる、補充分の書類ほぼ無駄だった気もするが。

 それにしても2000人は残って新帝国式調練には耐えてるわけか、士官教育は新帝国って脳筋でアホそうと思ってたから高度の判断を要する部分も多少はいけると思ったんだけど行けたな。

 帝国の平民教育が異様なほどに手厚いかもしれん。貴族にとってはディストピア、平民にとってはユートピアだな。


 新帝国式の調練には耐えられる人材がそれなりにいるということは……帝国がクソ雑魚ということだけが判明したわけだ。

 敗戦でこうなったのか?敗戦でここまで引き上げたのか?定かではないがだからといって誰かには聞けないやつだな。領軍が弱いことはあの後だから公言してなんとか出来た。

 帝国軍は昔より弱いですかとは流石に無理だろう、騎士団もそうだな。新帝国より弱いですかとオブラートに包めば教えてくれるだろうが……立て直せましたか?出来ませんでしたとは言うまい。


 前の敗戦で帝国各方面軍がそれぞれ壊滅してる時点でかなりの人間が入れ替わってるのは間違いないんだが……。

 9分の2、新帝国は新皇帝レベルがいないなら4倍差以上と考えておけばいいか?ここの領はそこまで強くないはずと考えると……帝国兵や騎士団ではもう少し差は縮むはず。

 流石に新帝国式調練は取り入れてるはず、敗北の原因は領兵が崩れたからとかもあるのだろうか?帝国兵を領兵を含めたものではなくではなく画一した軍にすることができれば?帝国兵と領兵は区分されているのだろうか?




「実際どうなんですか?」

「帝国軍の区分はよくわからないです」


 詰問に来たガルバン第1騎士団長に聞いたものの知らんときた。まぁ、そういうものかもしれん。


「領兵は帝国兵と同じなのですかね?」

「帝国にいる兵は皆帝国兵では?」


 そういう話ではないんだが、そういう話で終わるのか?


「領兵は帝国軍指揮下にあるのですよね?」

「ええ、基本的には。騎士団は独立権指揮権がありますけどすり合わせはしますし……大規模な戦いは遊撃が多いですかね。騎士団が出る戦いでは領兵を率いて戦うこともありますし……」

「優先指揮権は帝国軍なんですね?」

「任じられた部隊ですかね、騎士団に命ぜられたら騎士団が、帝国軍が命じられたら帝国軍が。同時に命じられたらすり合わせするか得意な方に任せますよ。騎士団長が出る時はよく任されてますが」

「たとえばそれで周辺にいたゲール子爵が領兵を率いて出陣した場合は?」

「あー……どうなるんですかね……?」


 それを聞いてるんだが……?


「私だったらゲール子爵に任せちゃいますけどね、頭も武力も上ですから」

「まぁ私でも任せますね……領軍丸ごと」

「優秀な人間には任せるんじゃないですかね?どこぞの公爵とかだったらそうはなりませんけどゲール子爵だったら別でしょうし……そもそも今は軍務省だから帝国軍ですし」

「領兵自体はゲール子爵はお持ちですよね?前の謀反戦の人材も含めて」

「そういえば帝国軍指揮官なのか領兵司令官いなるのかわかりませんね」

「領兵のマニュアルと帝国兵のマニュアルは同じなのですか?」

「大まかは同じですけど土地柄によって代わりますね、山岳地帯ならそれを重視しますし」

「たとえばゲール子爵のような人材を領に派遣して指導して画一的にすることは可能なのですかね?」

「えぇ……私に言われても……」


 まぁ、騎士団だもんな。領兵解体しちゃえばいいじゃん。弱い領兵より強靭な帝国軍作れよ。

 強い領軍作れるやつを帝国軍に入れて領軍ごと帝国が抱え込めばいいんじゃないか?専門軍に分けてさ。ダメ?


「領の治安が悪いから領軍があるなら治安を良くすれば問題ないのでは?」

「出来ない領主が多いからこうなっているのではないですか……?」

「クビにすればいいのでは」

「カール様……貴族ですよね……?」

「そうですが?」


 貴族に利点なぞないが?5歳で察するレベルだが?


「流石に不可能ですよ、ねぇドントさん」

「やりたいんですけどねぇ……」

「ドントさん!」

「どうして出来ないんだろうなぁ……」

「出世したくて出来が良い人は帝国軍に入りますから!領兵の時点でそこまで目がないんで盾みたいなもんですよ!数合わせで呼ばれてるんです!だから前の戦いで負け前提で最前線に配置されたんですよ!帝国軍自体もあっさり負けたんでダメでしたけど!」


 ぶっちゃけたな。めちゃくちゃ問題発言だ……これはひどい。

 にっこりガルバン第1騎士団長を見るとみるみる真っ青になっていく。トーチャ副団長とガルバン第1騎士団長は脳筋とかカルマンさんが言ってたとおりだ。


「あー……領兵になる人間は死を覚悟するように言い含められているので……問題はありません、けして平民を使い潰してるわけではありません、貴族関係者も領兵指揮官とかになったり、負けがひどいと領兵とて帝国から裁かれますから……それに評判がいい領は出兵を免除されたり……なるべく安全地帯に配置されたり……領兵自体が使えんじゃじゃ馬のときは最前線に配置したりはありますけど……」

「口減らしと粛清を兼ねてるわけですか?」

「……」

「では領兵を帝国軍に統合はできませんね、ろくでもない貴族が多いなら」

「先の謀反で数は減りましたから……帝国側から人材を派遣してなんとかしてますし……統治で実績を上げてる人間に領兵を鍛えさせることまで期待してませんし……なんなら領兵に入れて激戦区に送り込んだりうまくやってますよ、流石にですよ……全部読まれて引き出しましたね?」


 いや、知らんよ。普通に聞いただけ。

 ドント臨時秘書相手だからじゃない?彼は俺を革新派と思ってるから本音を言っただけだし、俺も気にしてないからね。演技で引き出されたと思ってるみたいだけど本心だよ、いや本当に。


 でも、いやぁ……なるほどね。領兵自体を口減らしに使うことができるわけだ。平民至上主義とはいえ限度があるもんな、問題ある人材はそっちでってことか。そういや減税とか色々あるんだっけ?これ名前だけ所属して持ち回りで領兵になるシステムで問題児や目に余るやつをチョイスして処分することもできるわけだ。


 いや、安心したよ。骨の髄まで平民のためにとかいうディストピアよりは打算も見えて信頼できる。


「犯罪の証拠が見つからない真っ黒な平民は助ける理由もありませんからね、ギリギリ逮捕されないところを狙うようなやつは帝国にはいりません、真面目な平民が馬鹿を見ます。腐敗した平民は貴族揃って処分するべきだと思ってますよ。騎士団と言うより私個人の意見ですが。領兵制度はそういう身では便利ですね。腐敗した平民も裏組織もひっそり処分出来ますし、場合によっては領主も処分できますからね」


 やっぱディストピアだわ。

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