さらば新帝国

 そこからは本当に早かった、まぁ農民も平民も全員軍人経験があるからな。早速徒党を組んで蜂起日を合わせた。

 私は戦死する予定だ。ウインドウ・シュテッツェルはこれでサヨナラ。以降はウインドウとだけ名乗ろう。


「東部総司令部、周辺貴族を集めて会議をするとのことです」

「周辺貴族は全員集結すると」

「ウインドウ中佐はどうしますか?」

「出席したことにする、そしてそれで死んだことになるだろう」


 さて、後は滅ぼせるかどうかだが流石に帝国に任せたいところだ。だが向こうの兵はそこまで強くないからな……。

 周辺に新帝国の失政を伝え帝国側への離反を促進させよう、まずは東部総司令部を壊滅させる。




「あっさりと落ちましたね、同じ新帝国軍同士苦戦すると思ってましたが」

「あっさり寝返ったんだろうな、旅団長も師団長も農民出身が多いのに挑発命令を出したのは理解ができん」


 私の粛清か忙殺かとおもったがそこら中に命令を出していたとは流石に理解できなかった。食料庫はスカスカ、士官用食料庫はそこそこ。

 まぁ、そこそこでも農民達の怒りが爆発して寝返らなかった連中は滅多打ちにされて殺されている。

 皇家の人間も滅多打ちだ。皇家を笠に着て無礼だ何だと騒いだアホがいたが多分皇家の末端だろう。お陰で農民も私の連隊も失政の多い皇家への敬意というものが全くなくなった。


 最後に殺した皇家の中将くらいどっしり構えていればもう少し温情があったかもしれないが……逆だったら反乱が収まる可能性があったな。いや、反乱ではなく自衛だ。もしくは……誅伐だ。


「皇帝遠征軍を叩きます。情報が入る前に本隊を動かします!合図を出したので遠征軍周辺で蜂起……いえ、挙兵します!」

「必ず全員討ち取れ!徴発を見て見ぬふりをする皇家なぞ皇家の価値すらない」


 シュテッツェル公爵家の者が生きてると私の生存がバレるからな。関係者は全員殺して移動する。




「皇帝軍防衛迎撃部隊総司令部を殲滅しました」

「我々が動く前に終わったか」

「農民たちの恨み骨髄に徹すですからね、内部からも裏切ったり、もとい我々に帰参したりで首脳陣は全滅です」

「では、第2段階だ!新帝国領に帝国への帰順を持ちかけろ!」


 これで終わりだ。飢饉の地域は非常に多く食料を帝国から送ってもらい恭順させるだけだ。帝国軍が弱ければ我々が新帝国を滅ぼせばいい。


 と思っていた。


 新しい皇帝が帝国軍を散々に打ち負かし、甘やかされていた帝都周辺の村や都市に激怒した農民たちが攻撃をして無駄な戦闘状態になり中途半端な和平。今後は新皇帝次第だろうが……。


 皇帝崩御も突然だったな、まぁ皇太子が殺したのだと思う。

 最も、あっちも文官との関係はよろしくなかったから即座にどうにかるとは思えない。


 それに帝国軍を散々に打ち負かす能力があるとは思わなかった、数の差で押し切れると思っていたし、我々が戦えばなんとかなるとも思ったが帝都周辺の騒乱や周辺の工作で戦場に迎えなかったことが重なったのが運の尽きだった。


 私は部下、経歴上は死んでいるから別なのだが……彼らを率いて帝国に恭順。隠すのも疑われるので帝国側に情報を開示して退役した。






 それから7年、職を転々として数年前から隠し金鉱で鉱員や密輸の輸送護衛稼いでいたら領主が粛清されて金鉱が攻められることになった。

 小隊長としてセコセコ働き、金をひっそり運び出し脱出計画に乗っかって逃げようと思ったら策を読まれて虜囚になるとは流石に思わなかった。

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