よきにはからえ……

「ウインドウ司令官がカール様にお会いしたいとのことです。調整を……」

「今日の仕事はもう終わっているから会おう、呼んでくれ」

「……わかりました、それではお呼びします」


 隣の部屋にいますとかじゃないのか?まぁ、毎回そんなサプライズしてはこないか。




「本当に呼びに行っていたんだな」

「何だと思ってたんです?」


 扉開けたらもういると思ってた。普通に待つとは……言っておいてどうせサプライズだろうと思ってたんだけどな。


「……何か問題が?」

「いや、こっちのことだ。それでウインドウ司令官どのような事があった?」

「話が早くて助かります、総司令官閣下」


 総司令官?立ち位置的にはそうなるのか?まぁ実際指揮するのはウインドウだし別に言い回しや役職はどうでもいいか。


「早速ですが、兵力が過剰です。ドルバーニュでも過剰です、ジョストンでも過剰になると思われます。はっきりいえば数が多すぎて訓練効率も悪く無意味です」


 だろうね、経済的発展を見ながら拡張する予定だったようだし……。本来は1000人とかじゃなかったかな?その数なら戦死してたかもしれんがそもそも領都攻略やら何やらは任されなかっただろうしな。金がこちら負担だったら流石に心折れてそう。


「それは理解している、領軍を再編したのは帝都騎士団のトーチャ副団長でな……私の采配ではないから気にせずやってくれ」

「しかし、騎士団の人材が混じってる可能性があるのでは?」

「それほどの人間がいたら前の戦いで活躍してるだろう、だからいない、いてもせいぜい監視程度だ。堂々送り込んでくれば受け入れるし放っておけ。とにかく君が必要だと思うことを全部やり給え、全部だ全部」

「しかし……よろしいのですか?本当に?」


 いいよ、どんとやれ、俺は死にたくない!ここから戦略パートが始まるよ!兵が弱いから攻められて死にましたとかで打ち切りエンドだったらどうするんだ!とにかくなんでもやれ!やるんだよ!やれ!


「必要なことは実行する、それが帝国というものだ。そうは思わないか?」


 しらんけど。


「確かにそうですね、軍事的に必要なことは全てする必要があります、総司令官閣下は新帝国をどう思いますか?」

「何も」

「何も?」

「平民にとって過ごしやすければ後は国家間の政治の問題だ、私程度が口を出すことはない」

「では違うのではあれば?」

「私は新帝国を知らない、そうであるなら……平民のための戦争が始まるだろうさ」

「腕がなりますな」


 なんで行こうとしてるんだ?俺が行くなんて言ったか?ちょっと待てよ、向こうがプライヤーキャラの無双ゲーだぞ?俺なぞ兵卒のごとく一撃でギャーとか言って死ぬキャラだぞ?

 平民のための戦争は強い領主がどうにかするだろ!俺5歳だぞ!それくらいの責任からは逃げてもいいだろこの年齢なら!


「総司令官閣下に私が討ち取った新皇帝の首を捧げましょう、それを持ち本陣で勝利宣言を、新帝国帝都で新たな統治者として正しき政治を行っていただきたい……」

「いや、新帝国帝都で統治するかどうかは……」

「私が新皇帝を討ち取れば間違いなく新帝国の残り数郡の統治権をいただけるでしょう、いえ預かられせていただけるでしたかな?総司令官閣下はこの占領地で補給を万全に整え、不測の事態を処理し、戦場では我々の動きを読み切り、そしていなした」


 いや、統治はともかく戦争はボロ負けだったが?実質負けだが?ウインドウ手に入れてプラスだろうと言われたらそうだが……普通にやったら押し負けて死んでるわ!


「そして敵の小隊長程度の人間を領軍の司令官にして、さらなる戦いに備えようとしている。敵は神聖帝国か、新帝国か、それとも内部の不穏分子か……」

「さて、それは私にはわかりかねるな、なにせ5歳の子供に過ぎない」

「騎士団員のですね」

「免除されているがね」

「帝国と名前のつく国で、ただの名誉や金銭でもらえるほど騎士の肩書は軽くありませんよ、そう謙虚なところも騎士のようでよいですな」


 そうなのか?手紙の内容的に重そうではあるが……新帝国目線でもそんな感じ?帝国内の騎士ってやっぱそんな地位か……。差をつけるとは書いてあったがかなりあるか?貴族よりは評価はたいんだろうしなぁ……。


「お任せください、新帝国式の調練を行い出来が悪いものは首にするか自警団にでもします。9000人の弱兵より100人の強兵が必要です、」

「任せると言ったぞ?どんとやれ」

「御意」


 実際、ウインドウレベルの人間が100人いるなら9000人のジョストン領兵より強いだろうからな、新帝国皇帝にしろゲールさんにしろ前例があると否定はしきれん。異世界転生者は何らかの能力があって黙っている説は割とあると思う。




 翌日、領軍を解体した報告がされた。俺は事知り顔で頷いた。


 どういうことかわからんがすべて任せるぞ、ほんと頼むぞ!


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