聞いてないぞ!

 敵の金鉱要塞の包囲も終わり、すべての準備が整った。おそらく脱出口を掘っているであろうから帝国軍工兵部隊の協力を得て起点になる場所周辺に部隊を置いた。予想を超える可能性もあるので遊撃部隊も置いた、鉱山ごと破壊する可能性も考えて救出部隊の部隊も万全。


 あとはカール伯爵がドルバーニュ領都の補給体制を整えてくれれば問題ないしな。兄貴が評価するのもわかる、アラン先輩がいなくても仕事は回ってるし書類仕事は実際早い。要点をまとめて把握するのが早い。騎士団に欲しいな、任せたい、それ系のやつ連れて来るの忘れてた!すぐ動けるのがこういう奴らしかいないしな!まぁ急いできてくれとは頼んだけど。


「カール司令官からお手紙です!」

「お手紙?報告書ではなくて?」

「お手紙です!」


 報告書以外では初めてだなー……なんだろう?必要なら報告書か伝令でも出しておけばいいのにな。戦勝パーティーのお誘い?自分ではしなそうだけど周りから言われたらやりそうだよな、5才児では押し切られるだろう。その場合は面倒だな……互いにやりたくないのにやらなければならないってのは辛いことだ。特に軍人が勝利したのではケチるわけにもいくまい。出世祝パーティーなら拒否できるんだけどなぁ……平民たちの税金を無駄遣いしたくないで逃げられないんだよ、戦勝祝と言われると。伯爵も苦労なさっておる。


 ま、なんでもよろしい、報告書でないならそう大変なことでも……えーと……金鉱作業員側の担当者と金鉱作業員のリーダーが別だった?へー……そうなんだ。普通は同一人物を置くんだけどね。間挟みすぎるとめんどくさいことになるし……領都で押収した金鉱の図面とそちらで持ってる図面は同じか?…………微妙に違うような気がするな。


「おい、帝国側の指揮官は誰だっけ!?」

「えっ……?トーチャ副団長ですよね?」

「ああ、そう……じゃなくて実際は別だろうが!誰が戦闘指揮をするんだ!」

「カバル中将です」

「え、中将?帝都副騎士団長って帝国軍だとどの地位だっけ?」

「カストラーゼ騎士団長が元帥か上級大将でしたっけ?1つ下なんじゃないですか?」

「ガルバン!お前帝都第1騎士団長だろう、帝国軍だとどの地位だ中将か!?」

「少将です」

「じゃあ俺中将じゃねぇか!どうすんだ!指揮官とはいえ同格であーだこーだ言って最低限の扱いもしてないならそりゃ仕事はしても顔は出さねぇわな!空いてるやつはリハビリ戦するから俺の指揮のもと着いてこいって同格が来るなんて思わねぇよ!」

「でも皇帝陛下直属の騎士団ですし我々数字持ち騎士団より統括するほうが偉いんじゃないんですか?」

「…………いや、どうなんだろう……?カバル中将って賢いか?」

「騎士団ならともかく将軍は馬鹿ではなれません」

「よし、直接行く!着いてこい!」





「カバル中将!こんにちは!おはようございます!帝都騎士団副団長のトーチャです。ご挨拶が遅れました!」

「え、ええ存じております……が、その取次とかはなさらないので……」

「緊急時です!早速ですが今回の金鉱要塞の地図を見せていただきたい!」

「えーと……騎士団は持っていなかったのですか?」

「本体は周辺の遊撃がメインだったので今金鉱前後に布陣してる部隊以外は持ってませんでした!」

「えぇ……えー……そうですか」

「こちらカール伯爵から届いた領都の金鉱図です、どうでしょう!」

「わずかに違いますね、日付が3年前?おい!早く金鉱図を!」


 よし!今までの無礼をパッションで押し切ったぞ!あわよくば騎士団ってバカだし仕方ないよねと思ってもらえるように頑張るぞ!


「これが帝都ドルバーニュ邸で差し押さえた金鉱図、こちらがカール伯爵が送ってくださった金鉱図、一番最後の図面が3年前で区画の長さが違う。押収した図面の日付はないが2番目に新しいものとほぼ同一、それでも送っていただいたほうが少し区画が大きいようにも思える、半年の差でこれか……ブレイクニー工兵中将を呼んで欲しい!無礼であるが緊急なので金鉱、鉱山採掘に詳しい人員もつけて!」


 え、工兵中将もいるの?もっと低いやつだと思ったのに……ふーん……俺無礼すぎて失脚しそう。兄貴に殺される方が先かもしれんけど。



「どうした、ガバル!何があった!ああこれはトーチャ副団長閣下、なにか?」


 ひっどい温度差だな、自業自得すぎて何もいえねぇ!でもそれどころじゃないんだよね!騎士団のハグを喰らえっ!


「よく来てくださった!帝国随一の専門家が来てるとは知りませんでしたぞ!あなたほどの人物が来てるなんて本当に知りませんでした!我が軍勝利間違いなし!」


 本当に知らなかったからね、マジで。これ兄貴知ったら真顔でぶん殴ってきそう。俺の指揮権入って付いて来い!で同格くると思わないじゃん!っていうと何されるかわからん、これカール伯爵に言い訳考えてもらいたいことも返信に入れよう。


「いや実はカール伯爵が押収した金鉱図面が帝都ドルバーニュ邸にあった図面と違うのですよ!」

「ほう」

「それでこの図面とこの図面が違う」

「ガバル、3枚か?」

「いや、私に届いた手紙では4枚、こちらが残り2枚」

「…………おい、再計算だ。機材をもってこい」


 部下に何かを持ってこさせるブレイクニー工兵中将。ふーんこの状況やばいね。うちは機動力と突撃力でやらせてもらってますんで頭使うのは団長意外はダメなんすよ。いなくもないけど、ここにはそんな騎士はいないんでお願いしますね~

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