役職に騙されて

 ドルバーニュ領都を接収して数日、書類仕事をしていると補給面で問題があったとの連絡が来た。やはり奇襲か領都占領による誘い出しかと思ったが、単純に西方のジョストン領からの補給が山間部を通るため遅れていたらしい。それでは仕方がない、南方方面の輸送量を増やしてバランスを採るしかない。北方は騎士団と帝国軍、東方がこの領都が拠点だから仕方がない。南方輸送に関して手厚く保護をするように頼みに行き領軍の視察をした。


「わざわざ来ていただけるとは」

「領主の仕事のうちですが……問題は?」

「待機中ですので特に何かあるわけでもありませんし……」

「それでもだよ、クレマンソー。計画は順調にいっていると報告は来てるが今後は?」

「領都で補給路を再編した後は当初の目的どおりに行います。指揮は領軍に任せるとのことです。トーチャ副団長からの連絡ではですが」

「では、それでいい。敵のいる金鉱は領都から北東10キロ我々は領都を抑え、金鉱正面は騎士団と帝国軍、金鉱裏は帝国軍が抑えている。金鉱から迎撃して西方、東方に脱出する敵を騎士団遊撃隊が強襲する。それで変わりないんだな?」

「場合によっては我々も動きますが……」

「例えば?」

「こちらに向かってきた場合や補給路を狙う場合ですね。領都が一度占領されたので向こうの手のものがいるのか探しているのですが見つかりません。何かあるかもしれません」


 見つからない?離反も脱走もしてないし潜伏もしてない?補給を絶たれて撤退したのもよくわからんな。書類仕事をして理解はしたがここは東部補給の要だし……確かに接収時に食料は殆どなかったのでてんやわんやではあったが……周りは補給を拒否した?担当者も死んでいたようだし。金鉱に補給できるようなものはあるのか?金鉱の北方と南方は抑えられている。西方は山伝い、東方も同じく。どちらも少数の騎士団遊撃隊が監視をしている。敵の戦略では防衛戦から隙を見て一撃離脱だろう?

 ドルバーニュ邸で差し押さえた書類では金鉱規模も大きいが構造は筒抜けだしそうはないはず……全力で遊撃隊にぶつかって山伝いに逃げ出せない理由は金の重さが原因。負けた場合は諦めてといった感じなんだろうが……国境封鎖が早かったから金鉱に篭ったんだよな?早めに逃げたやつはいるが。


「ドルバーニュ側の高官で誰か捕まってないやつはいるのか?」

「さぁ……?」

「連中が領都で問題を起こすと思うか」

「蜂起などはないと断言できます。もしするとしたら最初からこの町の住人が全員敵であったことになりますから死んでお詫びをすることになりますが……」


 何が目当てでこんなことを?クレマンソーは軍人であって政治担当ではないから誰が捕らえられたかはわからないか。領都で捕まったやつは把握してるかもしれないが帝都で身柄を押さえた奴らに関しては俺も知らないからな……領都で捕らえた人間は皆事前の調査結果で決まってたやつは処刑はしたし、一部は護送のためすでに敬語をつけ帝国軍に引き渡した。さて、どうしたもんかな。

 俺は話を打ち切ってカルマンさんとアランが派遣してきた秘書のドントに対して話を聞くことにした。


「ドルバーニュ伯爵関係者でいまだ捕まっていないものは?」

「一族ではいません、全員死亡しています」

「親族では?」

「いますが無関係であるとのことです。実際領内にはいませんし取引先にも謀反計画にもいませんでした。今回の件でもなにか動いたりはしておりません」

「そうか……」


 貴族同士のツテで交渉をしてるか何かではないかと思ったんだがな。浅はかすぎたか。そもそも許されんだろうが……だめか。


「神聖帝国が介入してたりするだろうか?」

「ないとはいえませんが、少し遠すぎますね。神聖帝国のためにそこまでする帝国臣民はいません」

「そうか……」


 定番どころは全滅だな。そういえば貴族平民含めて神聖帝国に対しては悪感情が強いもんな。まぁ軍にしろ個人にしろよくわからない動きをしていたって歴史の話でもよくあるし意味なんて多分ないんだろう。いやちゃんとした理由があったけど残ってないだけかもしれないけどな。


「金鉱関係者は?」

「担当者含めて死んでますね」

「金鉱作業員側の担当者は?」

「死亡を確認しています」

「金鉱作業員側で担当者に近しいものは?」

「把握しておりません」

「まぁ、金鉱作業員のリーダーが死んでるのなら問題はないか……」

「いえ、それは生きておりますが」

「金鉱作業員側の担当者は死んだのではないのか!?」

「金鉱作業員を総括する担当者が死亡しています。作業員のリーダーはおそらく今回の主犯です」

「は?」


 あれ?もしかしてまずいかこれ?

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