こ、殺されるのか?
他人事のような国家運営実験が決まってから数日、俺は今日も元気にすることがなかった、本当に凶器すうることない?暇すぎるよ。
とりあえずキャスの、もといキャンディ・スー先生の著作を読み始めたのだが……爺さんめっちゃ濃いな。戦記物チート能力持ちみたいなことして内政が本職とかもう主人公だな、これ息子がどうあがいても過小評価されてるだけなんじゃない?没落した領地を立て直すどころじゃねぇな、ここ3巻は戦争のほうが多いけど大丈夫か?
「カール様、一大事です。脱出路へ!空き家になってるジョストン伯爵邸に入ればなんとかなります!」
「何だ!?」
「いいから早く!キャス!頼みますよ!私は時間を稼ぎます!エドワ!私の剣の支度を!」
「一体何が起こっているんだ!」
「屋敷が帝都騎士団に囲まれています、帝国軍もいます!帝都騎士団は帝都守護と大規模戦争、変事以外では動きません!わかりましたか?さ、時間を稼ぐのでお逃げを」
「とうとうこのときが来ましたわね、侯爵が不在だということは伝えましたか、いえ……それくらい知ってるでしょうね」
「まさか実力行使とは、侯爵も亡くなっているでしょうね」
え、親父殺されたの?何したんだ親父、どういうことなんだ。親父謀反関係者?金脈のロンダリングに手を貸していた?
「先触れは合ったか?」
「あるわけ無いでしょうアラン!」
「でしょうね、早くカール様を!」
「伯爵家家紋入りの物品がないとさすが厳しいから取りに行かせましたよ、伯爵を騙る平民が屋敷前で死ぬよりはいいでしょう」
「とにかく私が説得してみる、脱出路へ案内して差し上げてください」
「トーチャ帝都副騎士団長様からカール様にお会いしたいと連絡です。玄関で待つと」
「副騎士団長……これはダメですな。カール様面会に行きましょうか……ジョストン伯爵としてハリスン侯爵嫡子の立場は出さないでください。それならなんとかあがいてみます。これでは玄関も封鎖されてますね」
「わかった」
あ、俺死ぬんだな……。陰謀に負けたのか?どれだ……やはりアルミ金貨を吐き出さなかったこと?とうとうこの時が来たということは親父に関係しているなにか?先代からの恨みつらみ?まだ全部読んでないからわからんな。実力行使は計算外レベルのなにか?
これは仕方がないな、奴隷編か罪人編か亡命編か……それともBADENDか。
「玄関から失礼します、カール伯爵。帝都騎士団で副団長の任にありますトーチャです。さっそくですがジョストン伯爵領の視察に行きませんか?」
「ちょ、ちょっとまっていただけますかな?ジョストン伯爵領家宰のアランです」
「ああ、アランさん!お噂はかねがね、一緒に来たいただけませんかな?」
アランの顔はあっ、終わったなというように見えた。多分俺も同じ顔をしていたと思う。ジョストン関連、例の国家運営実験がアウトだったな、これは。
「それにしても兄上から話は聞いておりますが先触れ無しで来てもあっさり入れてくれましたな、いや話が早い!どうです?軍の方にも関わるつもりは」
「いえ、まだこの年齢ですので何に才能があるか、全部ないかもしれません。兄とは?」
「カルマンですよ、国土局長の。ジョストン伯領で例の謀反人が決起する可能性があるので我々が暴徒共と金脈を抑えに行きます。ですのでついでにいかがかと思いまして。露払いは我々が勤めるので後からごゆっくり」
「兵を割くのもよろしくないでしょう、私がトーチャ副団長と一緒に参ります。アランは今からいけるか?」
「少しだけ待ってください、領内の資料を持ってきますので」
「ここまで話が早いとは!即断即決ができるのは良いことです。戦場では最悪の一手を即座に行動することが考えた良手よりも良い方になることは多いですからな!」
「では、アランを待ちましょう。資材の買付も移動ついでに」
「我々が既に買い付けておいたので無用ですぞ!でもまぁ予備が合ったほうがいいですな……当初の予定をそのまま買っていきましょう。話がついていたら商人に損をさせてしまう」
「ええ、それで我々の視察場所は東の山ですか、それとも……ドルバーニュ領の現地視察、勉強会ですかね?」
「なるほど、勉強会ですか……伯爵は領都の視察は?」
「皇家直轄で管理された場所です、まさか問題がもう起きているわけはないでしょう?アランがもう担当してますが問題は起きてません。今一番視察が必要なところは領都ではありませんよね?」
「ええ、まったくそのとおり。私のような武辺者は視野が狭いのが欠点ですな。馬はまだ乗れないですね?軍事用の高官高速馬車を用意させます、ちょっと下がりますね。私のサインと書類が必要なので……軽く走っていってきます」
「ありがとうございます」
どうやら命の危機は免れたらしい。おそらく、多分、全力で媚び売ったけどどうだ?軍の迷惑にはなりませんアピール刺さったか?資材買付は先手を取られたから賄賂には屈しない感出してたな。なんの圧力だったんだ?カルマンさんに圧をかけられた?もしくは兄弟仲が悪くて兄のメンツを潰しに来た?重要ごとは先触れ不要と言っても初対面でこれをしてくるのはどっちなんだ?脅しか?それとも距離感がおかしくてフレンドリーなのか?
「できました」
「早いな、アラン」
大きめのスーツケースを持ったアランがてくてくとやってきた。
「それで、どうでしたかね?」
「わからん、東の山の視察、ドルバーニュ領土の勉強会かと聞いたんだが……多分そうっぽい」
「はぁ、まぁ一か八か戦になるのはよくあることですしね。それでそれだけなのですか?」
「資材の買付はすんでるそうだ、追加で我々が買うのも良しと」
「意図が読めませんねぇ……少なくとも殺されはしないのは確かです。脅しですかね?」
「騎士団と帝国兵で屋敷を囲むのって脅しとしてはどうなんだ?」
「攻められたのはいくつも見てきましたけど攻められずに終わった事例は始めてみましたね」
「珍しくてラッキーだったな」
「生きててラッキーでしたね」
全く面白くもない冗談を言ってトーチャ副団長を待ち続ける俺達。なんか武装してる帝都執事長エドワ、伯爵家の家紋の入った時計を持ってくるキャス、くたびれたアラン。滅亡が決まった家みたいだな。
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