話が早すぎて

「それと此度のことで席次が上がることが内定したようですよカール様」

「本当ですか?やはり今回の事業ですかね」

「まぁもしかしたら最悪の場合はアルミ金貨10枚は吐き出すでしょうしね。本当にドルバーニュから流れて一旦公爵家の所有になっていた違法な金の返還は不要ですか?」

「いりませんね、ご自由にどうぞ」

「確かに証明できる金額はアルミ金貨50枚分に近いですが、本当に?ゴネれば100枚分は無理かもしれませんが80,90枚分くらいは手堅く取れると思いますが……」

「重ねて不要です、使うべきところに使ってください。帝国側が申し訳なく思うことがあるのか法的な問題があるのかわかりませんが……それなら一度いただきます。そしてそのまま国庫に納めます、形の上では寄付でもなんでも結構。我が領内以外で金銭的な問題があるところにでも支援してください。体面の関係でないならやはりいりませんし受け取った事実も不要です。」


 絶対にいらない!余計に財産が増えたら困るしここで帝国から銭ゲバ扱いされたくない!隙あらば殺すだろ貴族に価値を見出してないんだし……ゲールさんほどの人が爵位いらねぇ……と思ってるのが割と貴族制度の末期だし帝国政治の真実に近い気がする。これ以上銭を増やすことは鴨になることを意味している。なぜなら信じたくはないが親父は無能っぽいからな。より一層気をつけなければならないんだ……本当に。


「……そうおっしゃると思っていましたよ。私の目に狂いはなかったようですね」

「カルマンさんからそう言われると照れますね」

「ではこちらをどうぞ」



 カール・ジョストン伯爵様


 帝国及び皇家は貴公を個人として帝国に貢献して頂いたことを認めます。

 内々ではありますが公爵家財産の一部放棄、及びそれをあまねく帝国の人々のために使うべしという想い、皇帝始め帝国閣僚級は胸を打たれました。

 必ずこの金額は帝国に住まうすべての人のために使うことを誓います。保険としてお持ちください。もし帝国、皇帝、閣僚が約束を違えた時はこれを見せ腐敗した帝国を打ち倒すことを望みます。

 以上の功績を持って帝国席次590番代、調整終了後までは帝国席次599番と同格の地位を授与いたします。


 平民の守護者兼皇帝

 帝国全大臣承認



 ひぃっ!俗に言ういざとなったらお前が立ち上がれ系の遺言みたいなやつだ……怖い……。

 前の文面より長いし閣僚や皇帝の名前が出てきてるし……人事省承認じゃないところがなんかより一層怖い。全大臣?席次の微妙さ何よ。


「いや、無駄になりませんでしたな。やはり金が必要と言われたらこちらではなく馬車のアルミ金貨を持ってきましたよ。ですがやはり馬車に置いたままでよかったですな」

「席次はこう……上がるものですか?」

「多少は前後しますよ、同格同順位なんていっぱいいますしね」

「680番から590番代もですか?」

「まさか、500番代の数字は壁ですよ。今は599番ですが詳細の数字がない時は大きな数字と番台でいいのです。そのへんからは同格が増えるのと差が小さいのと上下も多いので582番でも501番でも500番代でもいいのですよ。まぁあまり変動しないと自称でずっと590番代とかはありますが」

「壁ですか?」

「500番代から上は帝国の舵取り側ですからね」


 じゃあ作家のキャスも400番代だから帝国の舵取り側なの?マジ?教科書書いてる人みたいな枠?いや、俺も舵取り側なの?


「えーと……私にはとても……」

「まぁ指針枠もいますからね、ですから590番代という曖昧な感じだと思います。カール様は一応新内務省の所属になると思います、流石にこの席次は帝国省庁に席を置く必要がありますからね」

「それはなにかする必要があるのでしょうか?」

「再編中なのでありませんね、再編後は……アランさんがなんとかしてくれるでしょう」

「私はこの仕事手慣れてますしね」

「500番代より上は全員所属しているのですか?たとえばその……作家の?」

「キャンディ先生?文部省ですよ。細かい所属はわかりませんが」


 まぁ……どうなるにせよ俺が一番偉くないってことだな。結局それは変わんないわ。というか壁を超えたってことは結局嫉妬と恨みに晒されるよね?ギリ500番代に入ってますってより恨み買うでしょ。俺もうどうしたらいいんだよ……。


「再編された内務省ではカルマンさんはどの地位ですかね?」

「さて、わかりませんなぁ……」


 大臣かな?ここまで出張って席次昇進の神を大臣署名含めてさらっと持ってくる当たり内定してるかなぁ、これは。


「では将来の上司に花を持たせるために道路や河川工事と……国土局自らジョストン伯領の改革をしてみませんか?」

「……地方局はどうしますか?」

「地方局で必要な人間を連れてこられるのでは?」

「確かに、そうですね、ええ……予算は……」

「今回の工事で浮いたので使えるでしょう?」

「最悪で10枚使うと……」

「ブラフでしょう?この席次を渡す前の、カルマンさんがあそこまでやってて10枚いかないと思ってますよ、あの時点でも追加1枚に抑えてましたしね」

「いや、ここまで大きく出るとは思いませんでしたな。統治者として任せるということができるのは良いことですよ、アラン先輩をこき使ってください」

「えっ?」

「ではジョストン伯領の改革をしてみますか?」

「ええ、地方局のやり方含めそれ以外で探っていきますよ、失敗してもアルミ金貨が数枚あればなんとでもなりますからね。失敗できる国家運営実験なんてそうありませんよ。男爵領子爵領では小さすぎる、伯爵領としては少し大きくジョストン伯領はちょうどよいのですよ……公爵領、侯爵領あたりは大きすぎたり、地方格差が大きすぎて適切な効果が出てるかわからないですしね」


 国家運営実験とかヤバすぎて困る、まぁ金さえあればケツはふけるみたいだし……失敗してプラマイゼロに戻せれば金も出てくしカルマンさんに恩も売れる。運営は国土局であるといって帝国がきっちりやりますと姿勢を見せればいい。5歳のガキが頑張りますと言うよりよほど良いだろうしな。


「おまかせしますよ、未来の内務大臣殿」

「承りました、スポンサー様」


 まぁ俺はよきにはからえと言う以外何もしないんだけどな。

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