追加

 あれよあれよとやることが決まり、あれよあれよとその計画まで決まる。シミュレーションゲームのようにボタン一つで決まってすぐ開始することなぞ現実ではないだろう。やはりゲームか?ラノベなら急に神が出てきて世界観変わるとかチャンスがあったかもしれんがシビアだな……。


「見積もりはいかがしますか?」

「アルミ金貨10枚、よりよくなるなら多少の予算追加を認めますよ」

「ほう……ほう……いかほどですか?」

「アルミ金貨もう10枚追加なら収まりますよね?」


 カルマンさんはまたアランの方を見たがアランも特に反応がなかったので安心したようにメモに書き込みを入れた。するとなにかに気がついたように俺の目をしっかりと見て再度尋ねてきた。


「カール様、カール様自身はどれほどの金額がかかると思っていたのですか?」

「残念ながらあまり公共事業の予算だか試算だかもくわしくないものでして……10枚から50枚の間だろうとは思っていましたが」

「それはなぜでしょう?」

「ない場所に道を作ること前提でしたからね、後伯領東の山脈?山間部?地図では私はわかりませんが……そちらもトンネル作る予定でしたし」

「ほう、トンネルですか?それはなぜ?めぼしい場所もないようですが」

「めぼしいものが出来てから慌てて作るよりもいいんじゃないでしょうか?感謝されるでしょうし」


 あまりな言い分にカルマンさんはあっけにとられたのか少し口を開け何かを言おうとしたものの閉じてしまった。すがるようにアランを見たがアランは目をそらしてしまったので困ってるようだ。聞いてないぞみたいな感じだろうか。


「まぁ優先は北方の商業都市ザツバルグ直通路ですよ、予算が浮いたら山脈開通ですね、後は伯領をどうするか……お力添えがほしいですね」

「いえ……そうですか……ジョストン伯領の東にあるドルバーニュ伯爵領……噂はご存知ですか?」

「まったく、新聞でしか情報が仕入れられないもので」

「…………」


 なんだか考え込んでしまったな……。アランを見るとなんだか冷や汗をかいてる。なんか許可取るのに齟齬があったか?


「こうなれば一蓮托生ですな……ドルバーニュ伯爵は族滅が決まりました、数ヶ月以内に執行されます。内務省の重職にあったのですが色々とやっておりましてね。ドルバーニュ領で金鉱を隠匿していたのですよ。それは謀反人共に流れていましてね……ああ、ご安心ください……ウェラー公爵がそちらをばらまいていたのでカール様の財産が遡って没収されることもありません、違法ですしね。むしろ一部は返還する必要もあるかもしれない微妙なところですな、いかがしますか?働きかける必要があるのなら」

「無用です、国庫に入れて必要な時に使うべきでしょう、私が使えるのなどせいぜい自分の伯領だけ。受け取ってなにかしても過剰投資でしょう?屋敷を大きくする気も特にありませんし……必要なところに分配して必要な金額使わせてあげてください」


 これ以上増やされてたまるか!なんのために金を吐き出してると思ってるんだ!睨まれたり嫉妬されたりはこりごりだぞ!

 異世界で悪役無能貴族の無能次男に憑依した俺は父と兄貴に殺されないように立ち回る~義母を処刑して金持ちになりましたまだまだ金が入ってきて笑いが止まらない~とかキャスが書いたらどうするんだ!こいつ我が家のヒミツで金食ってるし、スパイみたいなもんだろ!仕事できるみたいだけど。


 なんかカルマンさんが感動してる目で見てる。まぁ普通はぶんどりたいだろうしな……。俺は大金を取れても守りきれる自信はないんだ。勝手に株が上がるが、下がるよりはいいだろう。純粋な子どもの意見ですよー?


「……どちらにせよ、まぁ、どちらにせよですが……金鉱の関係でドルバーニュ領に道を通すことは決定事項だったのです……本当にご存じなかったのですか?」

「私は社交はまだなので……それに伯領の資料が上がって手を打つのを決めたのが今日ですからね」

「恐ろしい嗅覚と判断力ですねぇ……わかりました旧内務省地方局の人間を何人か引っ張ってきますね、無役ですが」

「大歓迎です、優秀さが必ずしも役職に反映されるわけでもありませんから……内務省は優秀な人間が多いことは存じています。それでも書類精査が上手い人間、交渉が上手い人間、現場の実務が上手い人間とそれぞれでしょう?今後は優秀なら無役でも、カルマンさんが推すのなら内務省以外からでも歓迎いたしますよ」

「話が早いですね、紙をいただきますよ」


 そう言うと置いてある紙にスラスラと書いてアランがまたそれに判を押した。残念ながらキャスがいないのでさっと持ってかれることはなかったが、カルマンさんはそれを手にとって。


「すぐ戻ります、先触れは……」

「無用です、お待ちしています」


 まぁこれでなんとかなるといいな。

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