交渉の結果
意外と読んでた時間が長かったのか、はたまたアランのコネのおかげで早かったのか、2人は一緒に戻って来た。
「あっさりと許可をいただけました、拍子抜けですな。まぁ取り潰しが決まってる家もあったり担当領地の実家の方にカール様が金銭を返済していたようなので好意的でしたからね。反対意見もなかったですし帝国公認事業なので反対者は実力で潰すことも出来ますね。いやー帝国の利益に叶うと公式のお墨付きですよ!さ、担当官を任命して派遣しましょう。いかがしますか?」
「任せる、ツテを使って優秀な人間に頼んでくれ。帝国お墨付きだろう?帝国にいる官僚にも立ち会ってもらうぞ!」
「…………いいですねぇ、担当地域の統治者からは?」
「優秀なら入れてくれ、そうでないなら権限を与えず監督官的名誉職でも与えておいてくれ」
「いやー手間が省けました。キャス侍女長、外で書類を持ってる国土局長カルマンさんを通してください」
国土局長?絶対偉そうなんだけど外で待たせてたの?印象悪くないか?おい、アラン……大丈夫か?
「お初にお目にかかります、カール・ジョストン伯爵。私は旧内務省で国土局長の任にあったカルマンと申します。再編まではまだこの職にあります」
「これはどうもカルマンさん、カルマン国土局長のほうがよろしいですか?爵位で進める事業ではありませんのでカールで結構ですよ」
「私もカルマンで結構です、いやー流石にアラン先輩が褒めていた方です。話が早い、どうせすぐ呼ばれるから屋敷に来てくれと言われた時はまさかと思いましたが……」
アラン!!俺が無駄話したら危なかったじゃないか!俺がヘイトを買うかもしれないことはやめろ!
「一緒に入ってきてくれてもよかったのですが……」
「館に主の許しもなしに入るのも非礼ですのにさすがに……アラン先輩は無駄なやり取りはかえって不興を買うと言われましたが」
「ええ、たかだか5才児です。重要なら先触れとていりませんよ、5才児は暇ですが時間は金より大事な時は多いのですから」
「本当にお話が早いですね、早速ですがこの計画の試案です」
試案もう出来たのか?早いな……内務省が権力の大半を握ってただけはある。優秀な人間の巣窟だったんだろうな。えーとここがザツバルグでジョストン伯領が……結構遠いな……
「距離はどれほど?」
「80キロくらいですね、多少は前後します。単位は?」
「1m=100cm=1000mmでよろしいですか?」
「はい、問題あありません」
どうやって求めたんだメートル法。
「聞きたかったのですが1mは何を基準したのでしょう」
「初代宰相閣下の持ってきた巻き尺です」
「なるほど、話がそれましたね。子供悪いところです」
「関心を持たないよりはよほど良いかと、ではこの道なのですが……」
またお前か!異世界転生者達のハードルを上げていく男。すなわち初代宰相。お前のせいで異世界転生者を名乗れなかった人物多分いるぞ、というか異世界から来ましたとか名乗るな!転移も憑依も転生も黙っておけ!地球と同じ規模の星なのではという期待を奪うな!
「よろしいですか?」
「既存の道の拡張でよろしいのですか?」
「ええ、欲を言えばこの道を通したいのですが……」
「技術的な問題ですか?金銭的な問題ですか?それとも新道開通で旧道が廃れる可能性ですか」
「そこまで考えつきますか、神童は伊達ではありませんね」
5歳だから褒められてるだけなんだよな……。10で神童、15で才子、20過ぎれば只の人。より早まって10をすぎれば只の人になるかもしれんな。
「いっそ旧道になるであろう道を伸ばして何処かにつなげませんか?」
「30キロ伸ばせばここの領都ですが……カール様には利もなく関係ないのでは?」
「帝国の利益には叶うのでは?」
「……」
カルマンさんはちらっとアランを見るが、アランが何も言わなかったためもう一度俺を見た。
「失礼かもしれませんが……ひょっとして異世界から……?」
「まさか、それなら今頃……」
勝ち組ですよ!と言おうと思ったが傍目には復讐を果たして公爵家の財産をすべて得て、他人が巻き上げた金を奪った相手にばらまいて恩を売る子供って少なくとも負け組じゃないよな……。より何かを求める欲深い人物っぽくないか?どう答えるべきだろうか……?
「今頃……兄上は教師ではなく次期当主として官僚か統治者として功績を上げていたでしょう」
「……失礼な質問をいたしました、謝罪いたします」
あぶねー……前聞いてた異世界転生者か?みたいな問答の答え覚えててよかった。それならもっと良くなったのに構文で逃げられる。
「いえ、兄も異世界転生者か異世界憑依者だと思われていたようですし……もしかしたら父もそうかも知れませんよ」
「ハリスン侯爵が?ふふ……プッ、あはははは!あ、いえ失礼しました。冗談もお上手ですね」
お、親父……本当に無能なのか……?違うよな……?
「それでは異世界転生者ほど能力のない私の案はいかがでしょう?」
「アルミ金貨が2枚は多く飛ぶでしょうね、まぁ帝国の利益にかなうのなら帝国も諸手を上げて手伝うでしょう、では紙を一枚いただけますか?」
そう言われた俺は紙を一枚渡すとカルマンさんはスラスラと何かを書いた後アランに目配せをした。するとアランはキャスに目配せをした後委任用の印字を押した。それを横からキャスが取るとすっと出ていった。何だこの連携は。
「これでアルミ金貨1枚以内に収まると思います。ところで橋の建築ですが……ウチの道路課と河川課2名入れてもよろしいですか?無役の一般職員ですが」
「カルマンさんが優秀だと推すのでしょう?喜んで」
「これは全力でやる必要がありますねぇ……旧内務省は再編中なので色々引っ張ってこれますよ?侯爵家からの人員はどうしますか?」
「アラン」
「私で十分です、伯爵領の人員は直属、近々帰るのでしょう?なら私一人で事足ります」
「さすがですね先輩、宰相か内務大臣程度ならいつでもなれる男と言われるだけはありますよ」
「まさか、彼のほうが宰相に向いていますし内務大臣をやるには不得意な分野が多すぎます。万能な人間など……それこそ私が直接見た中では宰相と前内務大臣、先代侯爵くらいでしょう。後は直接見てないので知りません、有名になる前なら見た人物はいますが……今は報告以外でこうして帝都に行くことは少ないかったですしね」
アラン、お前そんなすごい人物なのか?俺の中でお前の評価だけ爆上がりだぞ。アランの感じからして本当にそう思ってそうだ、調子に乗ったらアランより出来ない現実が押しつぶしてくる気もするが。
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