公共事業

「まぁ何にせよ、不足したら請求しやすくなって良し、それでいいだろう」

「大物ですねぇ……」


 結果的にそうなっただけだしな、特に考えることはないよそりゃ。


「それにしても12枚いれておくとはなかなかやるじゃないか?不足を見越していたんだろう?」


 そう聞くとアランは少し目を泳がせ、さてどうでしょうなぁとうそぶく、まるで入れた枚数を間違えただけですけど?みたいな態度にこちらも少し笑ってしまう。


「さて、物流回復に必要なことは何だ?」

「まぁ別の買付ですね、土砂崩れ地点の村はジョストン伯領の数カ所と友好都市でしてね。援助の必要もあるし同地点の特殊な材木が祭りに使われるので重要なものなのですよ」

「祭りねぇ……」

「まぁ為政者としてはどうでもいいかもしれませんがね、一応統治者に関する感謝の宴なのですよ。だから軽視できないのです」


 ああ、そりゃ出来ないわなぁ……統治者に感謝する祭りが開催不可で統治者が無関心とかダメだな。


「とりあえず買付だなぁ……」

「大分迂回しますねぇ……」

「通れない道があるのか?そこも土砂崩れか?」

「材木が大きいので通れないのですよ……」


 そう言うとアランは地図を出し広げた。持ち歩いてるんだろうか?それともこうなると思ったかな?


「ジョストン伯領のこちらは東は山で北は大きい川なんですよね、この特殊な材木は南から仕入れていましたが今回の土砂崩れで不可能となりました。あとは北東方面にあるので迂回するんですよ」

「東の山にトンネル作るとか北の川に橋をかけるとかは出来ないのか?」

「出来るとは思いますがそこまでする費用効果がないというか」

「南の復興はどれくらいかかる?」

「不明です」


 といってもな、あれば少なくとも移動による物流が生まれると思うんだが……不毛の地?


「ジョストン伯領の北方の移動手段は?船か?」

「そうですね」

「橋をかけたら物流は生まれないほど向こう側が貧しいのか?」

「貧しくはありません、別に名産も特産もないので旨味がないのですよ」


 普通の田舎みたいなもんか、まだやりようはあるだろう。


「川の向こうで名産がある領土はどれほどある?」

「3,4つ男爵たちの領土を超えれば商業都市ザツバルグがありますが」

「その恩恵の範囲は?」

「商業都市直通の道がある土地周辺だけかと」

「商業都市からここまで道ができれば潤うことはあるか?」

「……まぁ多少はあるでしょう、と言ってもある程度の街道ではないと……」

「よし、作るぞ」

「へ?」


 アランが多少あるということは損益にいかないということだ。つまりチャンスが有る!ある程度の街道であればということは主要道レベルで作ればいい。俺が視察に入る前に決めておけば税金使用したものではないし無駄金とも言われん!


「しかし橋をかけだけでは流石に……」

「橋を作りザツバルグまで道を作る、私が金を出す。可能か?」

「まぁ……帝国の利益に叶うなら説得可能です」

「ザツバルグまで道を引くことにより周辺、及び街道上の発展が見込める、私が金を出すので領主と帝国に許可を求める」


 帝国の利益として理由が立てば問題がない、それは間違いない。国益と帝国の利益は明らかに意味合いが違う。帝国に住まうものの利益が帝国の利益で帝国の運営自体にプラスに成ることが国益という認識がおそらくある。おそらくだが国益の言い回しを避ける理由は国益のために死ねということがあったからだ。これは帝国の利益になる事業、しかも費用はこちら持ち。通るはずだ!


「アルミ金貨を数枚は吐き出しますよ?よろしいので?」

「ほう、私は10枚、50枚は吐き出すと思っていた、構わん許可を取ってきてくれ!アラン、ツテはあるんだろう?」

「まぁそうですね、聞いてきます」

「あと、相続した公爵家の財産を売れ、宝石やらツボやら絵画でよほど有名なものではないなら優先的に、持っている事自体がステータスになるものは残して売るぞ、別荘物件で有用性がないものも処分してくれ。そこに持っている事自体が意味を見言い出せるものだけは残しておけ!勝手に勘違いしてくれるだろう」


 これを理由に扱いに困る財産を処分する、傍目には新しく統治を任される領地のために財産を切り崩すように見えるだろう。現金より先に手放せば関係ない貴族には資金が今回の金銭の返還でだいぶ尽きたようにも見えるだろう。妬みから少しは開放されるはずだ。


「なるほど、しかし足元を見られるかもしれませんぞ?」

「即座に帝国が返すわけではあるまい?不当に買い叩いて返ってくるはずの金が消えた場合誰を恨む確率が高いかの判断はできるんじゃないか?」

「たしかに、残った返還予定の貴族には大物がいないでしょうしな、そもそも相続金額も知らないでしょう。相続でアルミ金貨を持っているだろうと思ってもまだあるかはわかりませんしねぇ……」

「吐き出した後街道整備をすればどちらにせよ尽きたと勘違いするだろう。金だけは持ってる5才児なぞ面倒事しかやってこんさ」


 なんだこいつと胡乱な目で見るアランに対してお前が使うように言って俺が受けたことにしておいてくれといい許可を取りに行くアランを見送ることにした


「そうだ、忘れてた」

「…………なんでしょう」

「鉄貨の価値はどれくらいだ?」


 まだなんかあるのかと嫌そうな顔をしていたアランはキョトンとして軽く笑った


「鉄貨100枚で銅貨1枚です」


 と笑って答え王城へ向かっていった。

 鉄貨が1円くらいか……10円に類するものはないのか。もしくは銅貨の価値が上がって大銅貨か大金貨を生み出すしかなかったか。それとも鉄貨の価値が下がってしまったか。まぁ今は考えなくてもいいか。多分これで硬化は出揃っただろう、鉄貨の下にはもうないよな?もしくは廃止されたかね。

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