返還完了

 まさか本当にすることがないとはね……。貴族教育以外にもなんかあるかと持ったけど読み書きに関してはなんか問題がないから免除だしな。俺の目からだと読むものも書くものも日本語に見える……これが本当に日本語がこの世界における公用語なのか、はたまた実はこれが異世界チートで言語に苦労しないようになっているのか、聞くのが怖くてよくわからない。


 もしも異世界転生者だとバレたらどんな知識を持っているか?とかどうやってこの国を発展させされるか?とかすごく聞かれそうな気がする。でも俺にできることはないんだCG設計とか加工ってないよね?検品位はありそうだけどさ。じゃあ俺役立たずだねで終わる気がする。


 仮に魔法の世界だったらそれはただの錬金術でいいじゃん、いらねぇってなるだろうな。もしかしたらうまく作用したかもしれないが逆にまずいかったかもしれないし、まぁ……いいか。

 あとは三歳くらいから軽い木剣の素振りをするようには言われてるが……せいぜい10回、5歳になっても20回だしなぁ……そこまで本格的なことはしないらしい。とりあえず振り方だけは覚えておけよみたいな感じだな。まぁこの家文官係だしな。振り過ぎたらいけないからストップがかかるし木剣も没収なのでとにかく暇だ。


 今ままでは絵本でも読んで時間を潰せばよかったんだが流石に厳しいな……。なにか読むものがほしい。なんでもいいんだがなにかないか……?


「休憩中のところ失礼いたします、カール様」


 ノックをしたあと入ってきたアランを見て暇が潰れるかもしれないが嫌な潰れ方をしそうなことを察した。


「かまわない、どうせ予定もないしな」

「助かります、今日の新聞はご覧になりましたか?」

「多少は」

「いくつかの領地で土砂崩れが起きました、物流の問題にジョストン伯領が巻き込まれるかもしれません」

「あったな、対処はできるか?」

「多少は、色々考えることはありますがひとまず物流に関する報告を優先させております」

「任せる、私にしなければならないことがあるなら教えてくれ」

「クレイン様の持ってくる返還リスト、アレを今月中に方を付けていただきたく」


 なんでまた急に……?疑問を浮かべる俺に気付いたアランが少し考えた後口を開いた。


「公爵家財産相続の際にこの件がすべて終わるまでは公爵家財産には手を付けないと宣言したので緊急自体以外では使うことは望ましくありません、物資買付はともかく事前策は金がかかるものしかありませんので……」


 確かに言ったな……なるほどそれほどなのか……遠い場所だと思ったが重要物資があったりしたのか。とりあえずクレインさんに……。


「失礼いたします、クレイン様が緊急でお会いしたいと」

「ここに通していただいて!」

「助かりますね、さすがの判断です」


 どちらに対してだろうか?とにかくなんとかしないとな……。




「先触れもなしに申し訳ありません、お急ぎかと思いまして」

「緊急時なら来てくれる方が助かるので今後も緊急時はいりませんよ、クレインさん」

「話が早くて助かります、こちらが最後の返還リストです。必要ならば私に渡していただければカール伯爵の代行として帝国が返還いたします。その場合はこの場を持って元侯爵夫人の金銭事件を終わりとすることを帝国が確認したことになります。こちらは証拠である宰相閣下からその場合は事件の終わりを帝国が見届けたとの書状です」


 行動が早すぎる、昼前だし情報が入って即座に動いている上に宰相まで動かしてる。俺を評価してではなくアランの力量を評価してか?足を引っ張ることだけはしてはいけないな……そうなるとここの答えは。


「わかりましたこの場でクレインさんに委ねて帝国にお任せします、金額はどれほどですか?」

「全てまとめて白金貨10枚、大金貨3枚、金貨2枚、銀貨9枚、大銅貨1枚、銅貨4枚です、金額自体は細々したものが多いですが鉄貨は急ぎなので我々が負担します、崩してそれぞれに返すのも我々がやるので内役の金額を個別に作るなどはお気遣いなく」

「白金貨11枚渡します、後は手数料としてください。アラン直ちに」

「こちらに」


 想定していたな?一度も席を外していなかったことから事前に正当な理由で堂々と持ち出したうえで俺のところに来たな?出入りや持ち出し記録にも残るから俺が判断が遅かったり、やたらと金を気にしていたら危険極まりなかったというのに……クレインさんが来ることも想定内だったか、先程の判断を褒めるたのは俺に対してだったか。危ないところだった……ここで無能を晒したら本当に危なかった。


「12枚ありますが……」

「緊急でリストの作成を早めたのでしょう?それは手数料とは別です、手伝ってくれた方を盛大にねぎらってください。一流の店でも貸し切れるでしょう」


 だよな?とアランに聞くと真顔のアランはええもちろん、帝都一の店も貸し切れるでしょうとしれっと返してきた。なかなかいい性格してるな、有能だからか?流石に偏見か、兄貴は普通だったし。やっぱ席次を得て貴族教育も終わると厳しくなるものかな?


「もしも貸し切りの金額が足りなかったら私が全て負担します、なにせ急いでいたのでしょう?通常業務と合わせて大変苦労成されたかと……数日貸し切って家族と美食に舌鼓を打っても許されるかと」

「ご配慮感謝いたします……!」


 見た目感じだとクレインさんはとても感動してくれたようだ、アランは真顔のままだが……もう少しうまく立ち回れということだろうか。


「そ、それでは現時点をもって元侯爵夫人の金銭問題における事象は解決されました、帝国がそれを認めます!では失礼いたします、直ちに担当家に返還をいたします」

「お願いいたします」


 いや、なんとかなったな。アランは未だに真顔のままだが……なんかしくじってるか?


「いや、いい手ですな……足りなかった負担するというのは」

「そうかな?」

「緊急で完成させたので多少の間違いはあるでしょう、最初期の報告で金額の齟齬が多いか疑わしいものを見せた時の反応で悪質でなければ証拠がなくても確実性があればいいだろうと判断したではないですか。だから以降は向こう側で正確な金額を精査していたのですよ、最後の詰めで急遽完成させたので大きな差が出ることはありえます、もし足りなかった場合追加でお金を請求しづらいでしょう?」

「最初期だけが齟齬のあったものではないのかな?」


 意外といい判断だったらしくちょっと笑顔で答えてしまった、そんな深い考えはなかった、普通に労いのつもりだったしな。


「おわかりで聞いているのでしょう?今まで返した貴族平民の数、あれらは精査に時間がかかるのですから。あんなに早く齟齬の多い人間がこれだけとは出ませんよ、一度会いに来た際に悪質でなければ証拠なくて良しと判断したからその方向性を決めてリストを精査して送っていたのですよ。流石に精査は間に合わないから現状の情報ですべて通したんですよ」

「さてね、これで齟齬がでたら大変だっただろうな」

「帝国の名前で終わりを宣言した以上帝国が身銭を切るしかありませんからね、カール様が返還はすると意欲的で今までケチらなかったのもあって帝国が間違えてその後物流回復のため金額を使った後不足分を払ってほしいとはいえないので」

「真面目にやった甲斐があるね」


 へー……そんな感じなんだ……

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