伯爵領の報告
「そのようなことよりも伯爵領ですね」
「ああ、頼む」
すごい触れられたくない感じで打ち切ったな……。父はやはり触れづらい地位にある可能性があるな。100番以内とかか?そのようなことで片付けることではないだろうに……。
「まず結論から言って、ジョストン伯爵領ですが……なんの問題もありません。皇家から直属の文官達が派遣され無難以上の統治をされています。よって統治によって席次の上昇を狙うことは難しいかと」
「ああ、まぁ……直轄地の統治が悪いってことはないだろうしな、仕方あるまい。」
「困りましたね……伯爵領民から信任を得るには前より統治を良くする必要があるのですが……」
「維持ではいけないのか?」
「皇家直属からカール様に領統治を任される形になったのに前より良くない、悪くなったというのは致命的です。実際は現状維持でもそう思うものです」
それは……困ったな……。良いところを作らないといけないわけだ。偉い人たちから俺ってハメられてたりする?現状維持でも前のほうがよかったと言われることなんて多々あるぞ、しかも物流混乱とかもある時期に……これは皇家もめんどくさいくなって早渡ししただけかもしれないな。
「普通はどうするのだ?」
「まぁ……数年減税とかで身銭を削って人気取りをしたりですね。なければ現状維持宣言をしてお茶を濁します、明確に悪くさえならなければ大多数は納得していただけるかと。まぁ絶対そうならないから身銭切って借金して人気取りするんですが」
「そこまでか……ちなみに皇家直轄から直接委ねられた家はどのような対策を?」
「ほぼ同じですよ、まぁ金があったら公共施設を作ったりしますけど……皇家文官は陳情があれば作ってるはずなので……無駄な箱物作るだけですね、箱物行政ってやつですよ。」
「……問題が起きそうな予感がするんだが」
「まぁ領主の自腹で作ってるから非難や暴動につながることはないですよ。数年統治してる最中だと自腹か税金かはっきりさせとかないと帝都に税金の無駄遣いをしてる領主がいると御注進が来て査察官がやってきますよ。」
「じゃあ減税するしかないか……」
「一応言っておきますが、皇家直属文官なので適正な税率なので少しでも落とせば即赤字に転換します。領主の給料も館の使用人雇う必要もないですし、代官雇用費用は皇家持ちなのでで全部浮くんですよ。そこで残った金額を最低限プールした金を作っておこうくらいなんで……」
「じゃあ下げるどころか通常税率だと……」
「地位が大きければ大きいほど赤字ですね、だから数年人気取りをして減税するんですよ。戻した時には数年前と物価も多少は変わってるから納得させるんです。あとはプール金は一応引き継がれるんで多少は……雀の涙ですけど」
詐欺みたいなやり方してるな……これはセーフなのか……アランが堂々と言ってるくらいだし適法ではあるんだろうな。まぁ名目上は領地の統治をさせてやるみたいなもんだし、いくらなんでも破産してもやれってわけでもないんだろう。それにしても現状維持でも実質詰むのか、なるほど……絶対そうならないっていうのはそういうことなんだな。これどうするんだ……?
「ちなみに……私はハリスン侯領にいるべきなのか?ジョストン伯領にいるべきなのか?」
「微妙ですね……ハリスン候領にいても年齢的に非難はされないでしょうが……」
「勉学の間に視察をするくらいはした方が良い?もしくは半年程度の滞在をするべきか?」
「貴族の教育もあるので滞在期間は最低でもこれくらいとすべきとまではいいませんが……やはり視察にしろ査察にしろ何らかの行動を起こしたほうが良いでしょう」
「どちらでもいいが……何らかは何をすればいいんだ……?」
「それを視察に行って陳情を受けるんですよ」
「それもそうだな……」
至極真っ当な意見だったな、まぁそりゃそうか。そうと決まれば査察に行くぞ!
「よし、アラン!査察の準備を進めるように頼むぞ」
「クレイン様が例の件で金銭返還予定の人間のリストをまだ送ってきていますが……」
「それが終わる頃に行きたいが……数年かかるか……?」
「彼ならもう1週間くらいでしょう、あとは会って返すなり手紙で返すなりしてしまえばよいでしょう」
「そういえば会って返す人間とそうでない人間はどういう基準なんだろうな」
「奪われた金が返ってきたからと行って奪われた恨みはあるでしょう?」
……返す言葉もないな、言えるのなら多分だが、それを見て見ぬふりをしていた今の当主にもですねと言いそうだ。鉢合わせたら会わなければならないだろうしな……。父はあれがやらかしてる時に処分できなかったからな……。まぁ俺が恨まれてないならまだなんとかなるかもしれないが。
「やはり俺も恨まれてるか?」
「カール様は恨まれてはいないと思いますが……この状況で5才児を恨むような相手ならクレイン様も注釈付きで資料を送ると思いますが……そのような注釈はありましたか?私も一応確認していますが」
「いや、なかった」
「ではカール様は恨まれてはいませんね、気になさらず誠実にお金を返せばいいのですよ……おっと、状況を考えれば返す時点で誠実でしたね」
「とりあえず返済を続けて、その上で浮いた金をどうするか……投資するものもなさそうだしな……」
「まぁ視察次第でしすかね……意外と却下前提だろうから言わない人間もいます。統治者が変わると人気取りだと察して言えなかったことを言ってくれるかもしれません」
相手もさるものというわけだ、嫌な頭脳戦だな。上に政策あり、下に対策ありよりはマシだと思っておこうか。
「現金なものだな、足元を見られてるようだ……」
「答えるだけで前よりいいと思ってくれるなら何でもいいではありませんか。まさか意味なく要塞がほしいと言うわけでもないでしょうし、仮に却下しても帝国も陳情周辺の領民も支持を下げませんよ。要望に答えさえすればいいのですよ。井戸がもう1つほしいとかそんなのならラッキーですね。」
「ちなみに最悪の場合は?」
「じつは頼みたいことがあるけど要望はありませんと言われることです」
「なるほどな……」
場合によってはこちらが察する必要があるわけだ。これじゃ上司の機嫌を損ねないよう立ち回る部下だな……。まぁ平民が強い時点で間違ってないか、もしかして初代宰相は民主国家でも目指してたんだろうか……。それにしては……いや奴隷制度を一度推進するくらいだ、よほど現時点では不可能だとの認識だったんだろう。
立憲君主制に持って行きたがっている気配は感じるんだがなぁ……。
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