席次

 席次も頂いたもののすることもなく、学院入学までの日々をどう過ごしたものかと思案しながら新聞を読み続ける毎日。やれ記事には取り潰された貴族や罰せられた平民やらの話がだらだらと書かれている。このアウェイでよく貴族も事を起こすな……。貴族至上主義でも多いんだろうか?まぁ誰であろうと罰しはするんだな、正直この国は死刑一択だと思ってた。


 物流の混乱、統治者不在、治安の悪化記事はないのがそれはそれで怖いな、平民も平民で容易に蜂起するみたいだしな。これでも圧政働いてるやつがいるってマジ?ゲールさんみたいな一人で無双ゲーしてるタイプのやつが自ら鎮圧してるのか?効率悪いだろうに……。爵位返上欄結構あるな、断絶でも剥奪でもないってことは自主的なんだろうけど……。やっぱ統治がしんどいのかもしれないな……。アランに任せられてよか……アドマン侯爵爵位返上?侯爵!?詳しく載ってないか?


 えー……先の謀反で領内が荒れたこと、動かせる領兵がいないと静観したこと、此度の帝国席次の大幅な低下をもって地域の寄親として活動することは不可能となり、息子にはアドマン伯爵位を譲りアドマン侯爵は爵位返上。侯爵家自体を断絶にするかは帝国の判断にお任せする。

 席次の大幅な低下ってもしかしてめっちゃまずいのか?失敗を許さない世界みたいな?ちょっとアランに聞いたほうがいいな。




「はぁ……いやそこまででもないと思いますけど」

「そうなのか?」

「私も帝国席次は100くらい変わることがありますし……そもそも家宰としてそこまで席次を上げることが多い領土って違う問題がありますから」

「まぁ……たしかにそうだな……ではこのアドマン侯爵はなぜ理由に上げたのだ?」

「帝国席次で周辺にマウント取ってたか、それを理由に寄子を御していたのでしょう」


 やっぱマウントの取り合いもあるんだな……。胃が痛くなりそう……。


「それは……いいのか?」

「まぁそうする時はどちらかに問題があった時でしょうが……伯爵位を譲ることが出来たのでなんとかなってはいるのでは?席次低下自体が問題だったら譲ることも出来ないかもしれなせんしね、そもそも寄子が阻止に動いたりしますよ、侯爵とて周りが敵視している中で息子に押し付けはしないでしょう……爵位以外は相続したのですか?」

「書いてなかったな」

「では領土統治自体は伯爵位の息子のほうがなんとかするでしょう、領地返上ではないのですし」

「結果的にアランはこの爵位返上をどう見る?」

「まぁ、どちらにせよ寄親に疲れたのでしょう、下から今回のことでせっつかれて嫌になったのでは?」

「許されるのか?」

「まぁ……寄親なんてやりたい人間がやればよいわけですしね」


 意外と軽いな……。侯爵家は寄親やってるからなかなかなもんかと思ったけど……そんないいもんでもないんだな。


「そういえば……アランの帝国席次はどれくらいなのだ?」

「確か……350番代をウロウロしていたはずです」

「アランさん」

「おやめください」


 俺より300番くらい上じゃないか!統治じゃ上がりづらいんじゃなかったのかよ!いや、それ以外の功績もあるかもしれないか……。


「アランさんは他にどのような」

「改めてやめてください、家宰が領主に敬語を使われてるのはよくありませんので」

「わかった……アランは他にどのような功績を上げたのか?」

「家宰の仕事くらいしかしておりませんが……?」

「一応聞いておきたいんだが……父上から全権委任される前の席次は……?」

「流石に覚えてませんね……1000番よりは上だったと思います。侯爵領のいくつかの代官とか侯爵領の一部地域の臨時領主の経験もあるので……先代がいた頃は500番代もあったと記憶してますが……あの頃は変動が多いですからね、当てにはなりませんよ」


 君、異世界転生してきてない?ちょっと攻略法教えてくれませんかね?この後の動きなんですけど統治をお願いしたいんですよ、家宰として発展させていただけませんか?領地発展成り上がり系ですよね?今のパート。序盤の強キャラですよね?将来新帝国と戦争するかもしれないんで今のうちに足元固めていただけませんか?


「そういえば兄上……オリバーさんの席次はどうなるのだろう?」

「教師は席次が高いですけど頭打ちですからねぇ……自分が専門分野で教えて教え子が先生のおかげといえば上がるでしょうが……流石に今は無理でしょうねぇ……」

「まぁ、そうか……」

「初任で謀反調査に関して功績あるから500番代は硬いんじゃないんですか?」

「大分偉いんだな……」

「教師ですからね、その分問題があれば首で席次も剥奪です、まぁ問題もそうないですよ、知っていて嘘を教えるとか権力で迫るとかじゃなければ安泰ですし」

「オリバーさんはしなそうだな」

「しないでしょうねぇ……」


 兄上は俺より席次は上か、まぁ俺のほうが上だと気まずくて仕方がないからな。教師で500番代なのか……教育に力を入れてるだけあって評価高いんだな……。


「そういえば農民とかの席次はどうなるのだ?」

「大抵は1000番代じゃないですかね?平民では一番高いのでは?あとは作った穀物量次第ですね」

「じゃあ街にいる平民は?」

「功績なければ普通に働いて納税すれば5000番代とかじゃないですかね?5英雄の宰相の旗になってる青薔薇を品種改良で作った花屋は800番代くらいですしまちまちですね。ベストセラー作家とかも売れ行きで席次が上がりますし……お気に入りの作家がもうすぐ500番代から400番代に行きそうなんですよ」

「そんなものか……」


 やっぱそんなとこには配慮があるんだな、英雄の旗のもとになったものを作りましたみたいなのだと。作家は……国益?納税?かな?アランが言うには100番くらいは変わるらしいから来年には花屋のほうが上かしれないな、作家?現状の俺が何すりゃそこまで上がるんだよ。


「そういえば……アラン、父上の席次はどれくらいだろうか」

「わかりません、本人にお聞きになったほうがよろしいかと」


 知らないのか?まぁ次期大臣とか言われてるし……上位なんだろうな。それにしてもものすごく食い気味で知らないと言ったな。それほどまでに情報を出せないのだろうか。心なしか控えていた侍女も重い空気をまとっていた。

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