宮城への呼び出し
することがなく、ダラダラと日々を過ごしていたらアランが大慌てで入ってきた。
「緊急事態です、服を整えてください。新調は不要です、印象が悪くなります。侍女長!申し訳ありませんがカール様の御髪を整えてください」
「何が会ったんだ?襲爵ですら何もなかったのに?父上になにかあったのか?」
「だとしたら我々が死んでるような事態です、こちらを」
父上は評価されてるのだな、一撃で屋敷の人間ごと刈り取らねば勝ちきれん程度の能力はあるわけか。
侍女長は苦笑してるな……万が一にも起こり得ないというわけだろうか。
普通はこんな感じの息子が2人も出たらもう少し反応がありそうなもんだが大物なのか、はたまたこれくらいは普通なのか。
差し出された手紙を見ると何の変哲もない手紙だ、はて誰からだろう?クレインさんか?紋章がないが……。
「これは?」
「ご自分で封をお開けください、黒い蝋をちゃんと破って、その蝋と手紙は別々に持ったままでお願いします」
「わかった……」
アランの剣幕に押されるがまま封を開けて……蝋がやけに汚れてるなな……。えーと……
カール・ジョストン伯爵様
帝国及び皇家は貴公を個人として帝国に貢献して頂いたことを認めます。
つきましては手紙が届いた後の使者に同行して宮城に参上していただきたい。
届いた際に統治、平民の危機に直接関わることがあるのでしたら後回しにしていただいてかまいません。
平民の守護者兼皇帝
帝国人事省承認
「これは……?すまないのが……この手のことは疎いのだ、どうしたらいいのか含めて確認してもらえるか」
「…………おお!おめでとうございます!帝国席次を与えられます!」
「そうなのか!?なぜだ?」
「わかりませんが……宮城参内ですので雑な席次ではありませんよ!いやーハリスン侯爵家は……いえジョストン伯爵個人ですね、安泰ですね!」
「それで……どうしたらいいのだ?」
「書いてあるとおりに使者と参内していただければ良いかと」
帝国席次を貰えるなんて安泰じゃないか!雑ではないということはまぁまぁだろう!中の下くらいでいいんだが……。
でも貰うようなことしたか……アランですら、そうはもらえないだろうみたいな空気だったぞ?
……位打ち《 くらいうち》か?出世させて能力がないうちに仕事を増やして自滅させるという……いや、する理由は……公爵家の財産?5歳相手に?席次を得る事は厳しいみたいな言い方だったが……?
「アラン、位打ちだったりするか?」
「だったら人事省は粛清でしょうねぇ……帝国の対しての貢献のみで評価されますから、統治をより良く、苦しむ平民を救う、後は官僚として活躍するだいたいそんな感じですが……たしかになんででしょうね?」
「父上が巻き込まれた謀殺だったり……」
「ありませんな」
なんて澄んだ目で答えるんだ……一見すると冷めた目で鼻で笑いそうな勢いすら感じる。ここまでの信用をアランから得たいものだな。
先程のことも合わせて父上の屋敷内での信用の高さを感じるぞ。
「可能性としてはオリバー様のことかもしれません」
「兄上の?」
「今は……カール様の兄では……」
「ああ、すまない……聞き流してくれ」
そうだった、もう兄と呼べないんだったな……。
うっかり言うことはあるが……心底残念に思う。
「……それでオリバー……氏?」
「カール様はオリバーさんでよろしいかと……オリバー様は学院時代から評価が高く内務省か文部省か……入省の誘いが会ったとか牽制し合っていたとか」
「すごかったのだな……オリバーさん……」
「ハリスン侯爵家は持ちな……さらなる発展をすると言われていました」
「ん?」
「噛んだことは流石に見逃してほしいですね……」
「ああ、話の腰を折ってすまんな、続けてくれ」
なんか引っかかる感じだったが……まぁ噛むことくらいあるしな、噛んだことを指摘しても笑いも起きないで怒りを買うだけだよな普通は。
そもそも笑いがいる場面じゃなかったわ。にしても、噛んだだけであんな真剣な目で制してくるとはね。
「つまり、カール様の席次授与はオリバー様の助命による可能性があります」
「なるほど、ならよいか……」
兄貴……そんな優秀だったのか……!そりゃ俺程度では驚かんか……。
「なあ、アラン……オリバーさんの教師の席次と官僚席次ってどっちが上なんだ?」
「……学科次第というか……初年度ではどちらも同じようなものです、どちらも活躍すればですから……貴族学院だと……まぁ……やはり学科次第かと……」
「父上と比べたらどうなるだろうか」
「圧倒的に上でしょうね、ええ流石です」
「私は兄上……オリバーさんより上の席次を貰える可能性があるのか」
「オリバー様の将来性を考えたらありますが……オリバー様が抜くであろう位置の可能性はあります」
まぁ流石に父上は官僚だしな……噂では文部大臣候補らしいし。父上のほうが圧倒的に上か……。
アランも質問に呆れたような目を向けている、またやってしまった……今日だけで何度呆れられたかわからないな。あの目線は所詮5歳とかそんなものか。
「まぁ、とにかく兄上のおこぼれで貰えるわけだ」
「あくまで可能性です、別かもしれません……飢えてる平民に食料を渡したこととかはありますか?」
「ないな……」
あればやってるだろうけどな……それで助けたやつがどっかの王子とか、命狙われた貴族の娘だか妾の子かで話が進んだり、将来側近になる能力高いやつなんだろう?定番だぞ!?まぁそんな飢えた平民見たことがないんだが……。
「でしょうねぇ……私も首都にしろ、領都にしろ、今では見たことがありません。あったら大問題でしょうし……。帝国の統治指標に平民たちが食料に困ることだけはないようにと厳命があるくらいですし……。さすがに外れの村ならその手のことがあるかもしれませんが……貴族領とか周辺領主に直訴するでしょうしねぇ……一時期荒れてた時代じゃあるまいし」
「うん、まぁ……いないならいいことだろう」
「そうですね……」
こうして俺とアランは使者が来るまで不毛な会話を続けた。
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