論功行賞

 とうとう論功行賞の日となったが特に何もない、いつもの日のようだ。いや、これはもういつもの日だな。先日までクレインさんから貰った優先リストの家に金返してたほうがよっぽど仕事感あったな。

 なんかもうすこし家中もソワソワしてたりしてほしいんだけど。


 この手のだと朝から忙しかったり使者が来たりと、まぁまぁ忙しそうなんだけどな。まぁ貴族に対する帝国の価値観が低いせいなのだろう、服の新調とかも前言われた通り一切なかったな。礼儀の講習とかあーだこーだと言われて辟易すると思ったんだけどな。不安すぎてあの後も何度書かアランに聞いたものの不要ですと毎回言われてしまう始末だ。


 流石にアランの方が心配になったらしく深く聞いてきたが本当に何も必要がないことに不安を覚えてることがわかると物珍しいものを見るようにしていた。5才児だぞ?この世界って5才児も達観してるのが普通なのか?兄貴の事例もあるからかな……。


 さてこの後はどうするのか、迎えが来るのかこちらが行くのか……アランに聞いておくか。


「えっ?ああ……適当な時間に宮城に向かってください」

「適当?それでいいのか……?」

「宮城の門に入ってすぐ横くらいでやってますよ、読み上げも聞きたかったのですか?」

「襲爵読み上げにもいなくていいのか!?参加するのではないのか!?」

「えっ?カール様、建国記は行政の完成までは読みましたよね?初等用に紙一枚くらいのものではありましたけど」

「ああ……」

「どうでもいい襲爵儀式は帝国の役には立たないではないですか」

「ああ……」


 でも、宰相が参加するっていうくらいだしさ……。一応行ったほうが良くないか?これでなんか言われるのも嫌だしなぁ……。


「先に行っておく……」

「行ってらっしゃいませ、多分読み上げには間に合うかと」




 宮城は初めてなんだが……ひと目見て場所がわかるとは思わなかった。薄ぼけた古い大きな看板に襲爵発表上の文字と矢印が書いており、絶対にこの程度のことで経費は出したくない意志すら感じる。大半の貴族はそれをちらりと見て視線を戻し進んでいく、前世で見たことあるな……怪しいセミナーに向ける視線だな。

 幾人かの貴族が立っており書類を見ながら、あるいはメモを取りながら……本当に寝間着のやつがいるな……。さていつ始まるんだろうな……


「襲爵式を始めます、この表にあるものの襲爵を認めます、以上です」


 えっ、終わり?名前読み上げとかじゃないの?襲爵を認めますの分だけが読み上げなの?皆帰り始めてるな……寝間着の人、宮城で寝ずの番明けみたいだな……なんかそんな会話してる。

 他の貴族も書類持って宮城にいったり省へ向かっていったりで、本当に権威ないんだな……宰相がいるから顔出しておこう程度だったんだな、そりゃ適当な時間とか言うわ。読み上げに間に合うってこれかと思うと間に合わなかったほうが良かったかもしれん。本当にあれが宰相だったのかも怪しいよ……。


 本来の予定である襲爵式、式?が終わり伯爵となったわけだが一応名前を確認しておく必要がある。

 これでなかったら帰ると気まずいだろうなぁ……

 カール……カール……あー!あったぞ!


 カール・ジョストン伯爵


 よし、伯爵になってるな。

 …………本当に終わりか?本当に帰っていいのか?名前書いてあるだけだぞ?


 今になってきた貴族が表をじっと見て帰ってく……ああ、本当にそういうものなんだな……帰ろうか……本当に適当な時間で良かったよ……。



「ただいま……」

「おかえりなさいませジョストン伯爵」

「カールでいい……」

「わかりました、おかえりなさいませカール様。ずいぶん遅かったですね?なにかありましたか?」

「何もなかったというか……何をすればいいかわからなかったというか」

「…………?」

「いや、なんでもない」


 多分疑問に思うことは何もなんだろうなぁ


「ああ、あのボロ看板が倒れてたか飛ばされてでもいましたか?」

「いや、それは普通に……ボロ看板は周知の事実か」

「ええ、先代の頃から同じものだったはずですが」

「そんなにか……」

「もしかして……大して人がいないから迷いましたか?」

「いや、迷うことはなかったが……」

「なにか問題でも?」

「いや、うーん……あっさりしすぎててな」

「?」


 完全に噛み合わないな……でもな、なんで派手じゃないんだとはいえないしな……派手な方が良かったかと言われるとそうでもないが……。

 これレベルなら襲爵の紙届けてくれれば良くないか?そう言っておいたほうがいいか?有耶無耶にしてごまかすよりはいいか……。


「いや、なに……宮城にいかなくても紙の一枚でも送れば良かったのではないかとな」

「宮城で掲示すればそれこそ紙1枚で済みますし……その程度のことに国費を使うには」

「ああ、それもそうだな……」


 それでもダメなんだ……まぁ貴族がどれだけいるかわからんが。聞いた前の戦争レベルで死んだらめんどくさいことにはなるだろうしな……認めてやるからお前が来い!ってのはまだよくあるけども……見に来い、よし!帰れみたいなのはそうないだろう……その程度のなんだな。

 とりあえず今後は勉学以外は伯爵領の統治を第一にやるしかないな……。生まれた時は比較的勝ち組かと思ったんだけどなー……。


「ジョストン伯領のことなんだが」

「流石にもう少しかかりますね」

「ああそれは仕方がない。1週間たったたかどうかだしな」

「ええ、色々調査も必要なので期間を伸ばしていただけませんか?」

「もちろん、急いでも仕方がないことだからな」


 じゃあもう勉学するしかないな……。あとは後回しにされた貴族に金の返還をするくらいか……。いや、それはクレインさんの追加リスト待ちだな、うーん……何もすることがないよ。

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