第27話・殿下とはどうなったの?


「ところでねえさん。殿下とはどうなったの?」


「近々婚約解消になると思うわ」


「……!」




 バーノが核心を突くことを口にする。それはジネベラも気にはなっていたが、アンジェリーヌの心情を思い、彼女の方から口にするまでは聞くのを止めようと思っていたというのに、姉弟のように育った従姉弟同士の気安さというものだろうか? バーノは易々とジネベラの遠慮という垣根を軽々と越えていった。それが羨ましく感じられる。




「ねえさんはそれで良いの?」


「勿論よ。馬鹿だった。あんな人を想い続けてきただなんて……。あの日はごめんなさい。せっかく二人には計画を色々と練ってもらったのに、勝手に引導渡して先に帰ってしまったりして悪かったわ」


「ねえさんは悪くないよ」


「そうよ。悪いのはあの御方よ。思い出の少女が誰か思い出せない上に、アンジェのことを批難して」




 許せなかったとジネベラが言えば、アンジェリーヌは寂しそうに微笑んだ。




「ありがとう。その気持ちが嬉しいわ。あの後、護衛からお父さま達に報告が上がって、憤慨したお父さまやお祖父さまが二人で王宮に向かったの。もともと二人は、陛下からこの婚約話は側妃さまの希望と聞かされて面白くなく思っていたし、乗り気ではなくて機会さえあれば潰そうと考えていたみたい。でもね、陛下がなかなか認めて下さらないみたいで……」




 ため息を漏らすアンジェリーヌに、バーノとジネベラは顔を見合わせあった。その二人の間を、何も知らないモモが行き交っていた。

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