第10話・先生、わたしどこかおかしくないですか?
「先生、わたしどこかおかしくないですか?」
「なんじゃい? 藪から棒に」
「この見た目になってから、皆の態度が露骨に変わりました。特に男子生徒にちやほやされるんです。今までわたしが大人しいのもあって、殿下を始め、皆わたしのことなど関心も無かったはずなのに、掌を返したように好意を向けてきて……、おかしいです」
「嬢ちゃんの魅力が相手に伝わったとは、考えられないかの?」
「それは無いと思います。もしかしたら何かの作用が相手に働いているのでは無いかと思って、怖くなるんです」
「ほう? 作用とは?」
「魅了とか? 先生、よく見て」
ジネベラは、男子生徒達の態度の変化に納得がいかなかった。以前の自分の事など歯牙にもかけなかった人達が次々、声をかけてくるのだ。それを良く思わない女子生徒達には、媚びていると思われて嫌われている。
知らぬ間に何かの作用が働いて、男子生徒達を魅了しているとしか思えなかった。ナーリックの前に顔を突き出すと、注視したナーリックは手を横に大きく振った。
「ないない。あり得んよ。嬢ちゃんから魅了のみの字も感じられん」
「本当ですか?」
「ああ。本当じゃ。わしの目を疑うのかね? 魅了魔法は遙か昔の話しじゃ。この国では禁術とされて廃止されておる」
ナーリックは、王宮お抱えの医師だった過去がある。古くから王宮に仕える医師達は、呪術の事も学んで来たという。禁術に触れる機会もあり、それを解く仕事も請け負っていたことがあると聞いていた。そのナーリックは、ジネベラの体に異常は感じられないと言った。
「だったらどうして……?」
「別におかしな事では無いぞ。自然の摂理じゃ」
「……?」
「嬢ちゃんはまだまだ幼いからの。簡単に言えば、嬢ちゃんの見た目を良く思う男子が現れだしたと言う事じゃ。嬢ちゃんの良さが気になりだしたのだろうて」
「じゃ、これはおかしな事でも何でも無いの?」
「そうじゃ。何も恐れることは無い。そう言えば嬢ちゃんの、お昼を共に取っていた友達は、同じクラスの子かの?」
「いいえ。薬草学科の子よ」
「薬草学科? ヒロイン病になってから、その友達とは一度も会ってないと?」
「そうなの。全然、会えなくて寂しいわ」
「そうか。そのお友達と会えると良いのう」
ナーリックは、塞ぎ込みそうになるジネベラを気遣った。そこには孫を見るような温かな眼差しがあった。
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