第9話・異常事態にしか思えません
「もう、どうしてこうなったの?」
なかなかバーノに会えない苛立ちを抱えつつ、ジネベラは学園帰りにナーリックの元を訪れた。ヒロイン病になってから経過観察と言うことで、一ヶ月に一度の割合で、お爺ちゃん先生のもとを訪れていたのだ。
「おう、今日はどうじゃった?」
「何も変わりないです。男子生徒には異常なほど声をかけられて、クラスメートの女子達にやっかまれています」
「そうか。ヒロイン病の特徴じゃな。モテモテの女子も大変だろうて」
カッカッカと、ナーリック先生は笑う。
「先生、笑い事じゃないです。そのおかげでわたし、唯一の友人を無くしそうです」
「唯一の友人?」
「はい。今まで言えなかったけど学園ではわたし、いつも独りぼっちで……。でも、そんなわたしにもたった1人だけ気に掛けてくれる人がいて。それなのに……」
「嬢ちゃんは、人見知りを拗らせておったのか。悪かったのう」
ナーリックは、未だにジネベラが人見知りのせいで人付き合いに苦労していたと知り、申し訳ないと謝ってきた。
「いいの。先生。わたしも思ったことの半分も言えないから、クラスメートと親しく出来なくて。それでもお昼は一緒に出来る友達が出来て嬉しかったの」
「その友人を無くしそうだと言うのは?」
「わたしのことを一方的に気に入ったらしい殿下がお昼を誘いに来るようになって、その友人とお昼が取れなくなってしまったからよ」
ナーリックには、自分の外見が変貌した日、登校したらアヴェリーノ殿下達に出くわし、その日からなぜか付きまとわれるようになったことは話してあった。
「殿下達が教室に誘いに来る前に逃げ出そうとしても無理だし、殿下にお昼をお断りしても、身分差を気にして遠慮していると思われているようで、そこが謙虚だと思われてしまうの」
昼食時間や放課後には、必ず迎えに来る殿下達を見て、皆がジネベラのことを「殿下のお気に入り」と認識している。殿下がジネベラの愛称である「ベラ」を本人の許可なく呼び始めたので尚更だ。
しかも、ベラという愛称は両親しか呼ばない愛称なのに、どこで聞きつけて来たのか、殿下が「ベラ」と、呼び始めたときにはゾッとした。殿下が思うほど、こちらは親しくなりたいと願ってもいないのに。
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