拾弐話 「ビールと、挨拶と、入籍と」
重苦しい雰囲気の日々が
空港へ迎えに行く為に出発する私に向け、父は、「絶対に、会わないからな!」と、玄関先で言い放ちました。
胃の痛みを
というか、本当に交際もせず結婚する為に、
感謝、尊敬、嬉しい、泣きたい、好き、と、あらゆる感情が溢れ出てきました。
空港から私の自宅迄は、車で約一時間程。
途中、コンビニに寄り、トイレに行って出ないおしっこ振り絞ってみたり、私が親役をやりながら挨拶シミュレーションしてみたり、無駄に時間稼ぎし始める。
待って。余計に緊張倍増。
やらなきゃ良かった、シミュレーションなんて。と、自分でやり始めておいて、情緒不安定が加速します。
いいや、もう、破れかぶれだ。
そんなこんなで、着々と自宅への距離はあと僅かに。
彼にも私の緊張が伝染し始めましたが、無情にも到着し、意を決して、家の中へ。
リビングへ案内すると、
声の張った挨拶が始まりました。
え、ここ、部隊ですか?
すると…。
「いやあ〜、遠くからよく来たね〜、まあ、まず、飲みなさい!」
お酒を飲む人の居ない我が家の冷蔵庫から、母はビールを出して、彼に渡しました。
え…?激昂してなかった…?
布袋先輩も、私も、きょとん。
ですが、「はい!いただきます!」と、ロング缶のビールを、秒で飲んだ。
すると、又、ビール出てくる。
又、飲む。
この状況、何なの?
元々お酒が強い布袋先輩。
緊張により、一切酔えもせず、でしたが、両親からの質問や、仕事についてなど、色々と話をしました。
そこから一週間近く滞在し、彼は両親と交流を深めてくれ、無事に結婚を認めて貰い、笑顔で帰って行きました。
認めて貰えた安堵もありましたが、今までの緊張や疲労で、私はしばらく廃人でした。
そして、両親にはかなり感謝です。
やはり、人生の先輩。
達観してると言いますか、少し会って話しただけでも、その人がどういう人間か、見抜いてしまう。
認めて貰えたという事は、布袋先輩は、そういう人だったんだ、と、私は一人、嬉しくて泣けてきました。
ですが、やる事が盛り沢山。
九州への引っ越し準備やら、私の退職準備、御世話になった方への挨拶や、これから中々会えなくなる為、会える人には会っておくなど。
そんなこんなで、あっという間に、日々は過ぎていきました。
そして、布袋先輩が帰ってから、数ヶ月後の夏。
彼は、飛行機に乗って、私を迎えに来ました。
そして――
2019年7月1日、16
布袋先輩と私は、まさかの交際ゼロ日婚を果たしたのです。
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