陸話 「アイツ、いい奴だな」
国防男子との婚活パーティー当日。
夜勤明けの疲労と緊張により、おかしな精神状態で、現地入り。
場所は、地元では人気のある釜飯屋でした。
会場に入ると、そこはまるで披露宴会場のように円卓が並べられており、指定されたテーブル席に着きました。
国防男子と参加女性が交互に配置され、本日のスケジュール説明が始まりました。
説明を聞きながら、不自然にならない程度に、国防男子と参加女性をチェック。
うん、いいぞ。
皆、熱意に溢れ、良い表情だ。
是非ともカップル成立となって欲しい。
まるで主催者側の目線。
何しにきたんだ、私。
ハッと我に返ると、説明は終盤。話、聞いてろよ。
取り敢えず、周りに合わせていく事にしました。
最初は、右隣りの国防男子との会話からスタート。
私よりも二つ下の、眼鏡の国防男子さんでした。その方は当直明けで、出席は上司から強制参加を余儀なくされたようでした。独身、彼女無しだから、お前は出ろ、と。でも俺は早く帰って寝たいんだ、と。
噴き出しました。そんな感じなのね。
眼鏡男子さんには、気を遣わず、会話が弾みました。
そして、いよいよあの回転寿司タイムがやってきましたが、今回は人数が凄い。
すると、眼鏡男子さんは、「じゃ、行ってくる」と言い残し、次の席へ流れて行きました。
様々な国防男子さんがいらっしゃいました。
何者をも視界に入れない勢いで、只真っ直ぐを見つめ自己紹介される方、女性慣れしている方、落ち着いている方、普通の方、自己紹介だけで固まる方、緊張の為か挙動不審な方。
あの、すみません。挙動不審は、伝染します。
全員と対面を果たし、最初の面子が戻って参りました。
眼鏡男子さんは、疲れ切ってボロボロでした。
うん、早く寝た方が良い。
その後は一旦トイレ休憩を挟み、今度は、お気に入りの方へのアプローチタイムが始まりました。
御目当てへ向け、命を掛けた国防男子からの射撃開始です。
私は席から離れず、座ったまま。眼鏡男子さんは、「あれ?行かないの?」と言ってきましたが、私も夜勤明けなのですよ。電池、切れかけなんですよ。
その時。
飲み物を口に運ぼうとすると、立て続けに何人か私の所へやって来て下さいました。ありがとうございます。
挙動不審男子さんもやって来てくれました。
私も、挙動不審が伝染します。
ですが、最初よりも、やや多弁気味でした。
何、これ、国家的な策略ですか?
その中で、五歳歳下の、チョコレートプラネットの松尾似の国防男子さんとは会話が弾みました。
私もチョコプラ男子さんも、異業種交流による友人探しが目的。そして彼はここで終わらせず、先輩にも繋げていくという使命もあった様で、お互いの利害は一致し、連絡先の書いたメモを交換しました。
何より、礼儀正しさに好感を持てました。
チョコプラ男子さんは、気になる女性が居たようで、私は全力で応援。
パーティーはいよいよ佳境に入り、何組かのカップルが成立。
チョコプラ男子さんの射撃はうまくいった様で、無事にカップル成立し、安堵しました。
最後は釜飯が運ばれ、食事が始まりました。
眼鏡男子さんは、疲労によりおかしなハイテンションになっており、「釜飯、旨くね?」、「何やかんや言って、結構、モテてたじゃん」など、終始話し続けておりました。最後には「じゃ、帰って寝るわ〜、またね」と。
またね、って、我々、連絡先、交換してませんよ、と心の中で突っ込みましたが、
「お疲れ様!ゆっくり寝なさいよ!」と、母のような一言を告げ、別れました。
翌日。
早速チョコプラ男子さんよりLINEが来ました。
パーティー会場で話た時と変わらず、礼儀正しい文面。
流石、日々、厳しい訓練を耐え抜いている国防男子。恋愛感情では無く、人として仲良く出来そうだな、と、改めて思いました。
私の目的は達成された。
アウトドア要因捕獲。
私は、LINEを読みながら、呟きました。
「アイツ、いい奴だな」
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