第7話 単語:待ち合わせ、鳥、シュレッダー
『クルッポー』とは、言わずと知れた鳩の鳴き声。
個人的感覚として、鳩はどこにでもいるイメージがある。それこそ、外を数分歩いていれば一回は鳩の鳴き声を聞くぐらい。
言い過ぎかもしれないが、誰がどう言おうと俺の体感を否定することはできない。
なぜそんなことを思ったのか。それはとても簡単に説明できる。
それは今まさに鳩が目の前に数匹周りを歩いており、『クルッポー、クルッポー』と鳴いているからだ。
鳩の鳴き声がうるさいと騒いでいる人がいるようだが、今ならその人たちの気持ちもわかる。
『待ち人来らず』状態で、鳩の鳴き声を延々と聞かされる苦行。今日、靴箱に入れた手紙の相手、その彼女にこれから告白をするというのに、なんと苛立ちを煽る鳴き声だろうか、という考えがぐるぐると頭を回っている。
放課後とあり、人の気配ひとつない学校の裏。遠くから吹奏楽部の、あのよく聞くお馴染みの旋律が届いてくる。その旋律に耳を傾けて、待ち人が来ないかと首を長くしながら待つ。
だが、来ない。
誰一人通ることのないこの場所で、ただただずっと立っているこの苦痛よ。
あと、どれくらい待っていればいいのかと思いながら、首を振り、足を無意味に動かしていた。
──そして、太陽が地平線の向こうへと消えた。
「……」
誰も来なかった。
待ち人も、それ以外の人も、誰もだ。
こんなことが許されていいのだろうか?
虚しく、ただただ時間だけを消費した。
悲しみと絶望に押しつぶされそうになる。
諦めが胸中に広がり、呆然と立っていた。
ゆっくりと帰路へと足を向ける。
いつもは当たり前の風景が、哀愁を漂わせる風景へと様変わりしているように思えるのは、現在の心境がもたらすものだろう。
悲しかった。
空しかった。
全てがどうでもいいように感じた。
あぁ、もはやどうだっていい。
家の扉を無意識のうちに開けて、自室へと飛び込むようにして入る。扉のバタンという音にようやく現実に戻され、部屋を見つめる。
よろよろと学校かばんを開き、教科書とノートを取り出す。
宿題はない。
なので、それらをそのまま棚に投げ入れ、明日の用意を整える。
あぁ、なんて暇なのだろう。
窓の外は真っ暗。曇り空で、月もなければ星一つもない。まるで、今の僕の心情を反映しているかのようで、憂鬱になった。
──後日知ったことだが、あの手紙はシュレッダーにかけられたと聞いた。鬱になりそうで鬱だ。
「はぁ……」
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