第3話 単語:筆箱、復習、週明け月曜日



 明日は週明け月曜日、恐怖の月曜日だ。


 学校や仕事が始まり、世の学生及び社会人が阿鼻叫喚の有様で、世界は混沌の渦に包まれ、世の救いのなさを噛み締める。神は死んだ、と人々は言う。惰性の上で人は生きることしかできない。そう突きつけられる。そんな日曜日の夜だった。


 けれど、俺にはそこにさらなる追い討ちがかかっていた。明日の月曜日は試験なのだ。期末試験ではないが、成績には入ると先生が断言している。それも、明日ある試験全てに……。なんて酷いことを……。


 1時限目に毎週行われる英語の単語テスト、4時限目には不規則な曜日で行われる古文単語テスト、最後に、章末として行われる数学の確認テスト、それらがかちあって、あら大変、3教科もテストが、が、が、が。


 誰も得しない月曜日と相成りました。


 あぁ、明日が来なければいいのに。なんで、こんなに勉強をしなければいけないのだろうか。英語は期末が近いと言うことで中間が終わってからの内容のそう復習とも呼べるのだが、それでも範囲は600単語と幅広く、いくらある程度覚えていると言っても、ここまでくると全てをカバーするのは大変だ。なのに、なのに、古文単語と数学もあるのだ。


 古文単語は20単語と良心的。で、問題は今俺が取り組んでいる数学のテストだ。


 章末ということで、図形と計量という範囲。三角比だとか、三角形の面積だとか、聞くだけでも頭痛が起こり、ガンガンと耳鳴りを伴うような、そんな気分になるのだ。


 そんなことを考えていたからか、シャーペンを持つ手がブレて、数字がどこかにありそうな外国語に様変わり。あわてて、筆箱から消しゴムを取り出してケシケシする。


 生まれたケシカスを机の脇にあるゴミ箱にポイする。その時、わざわざ手のひらに一度のせてから、パンパンと手を叩く。


 そして、机の上に向き合って…………スマホを手にしていた。


 画面には大好きなワンちゃんのLIVE映像が流れている。


 ハッ、いつの間に!? と思うも、もう手が言うことを聞かない。


 クッ、この俺が破れるだとっ!?


 急いでスマホの電源を切ろうとするも、犬の『く〜ん』という撫で声には抗えなかった。




 気づけば、スマホを手にしてから30分の時が経っていた。時計を見れば00:12と出ている。


 一体、何が起こってしまったのだろう。人類が抗うことのできないナニカに引き込まれてしまったのだろうか?


 あと40分もすれば、寝る時間だ。もう、ダメなのか?


 抗い難いナニカをねじ伏せ、いつの間にか仕舞われていたシャーペンを取り出す。そして、問題集を解く。ノートに問題を写してあれやこれや書き連ね、頭を捻り、問題を解いていく。


 ページがいっぱいになったので、捲ってみれば、そこには犬の絵がページの上らへんに書かれていた。


 う〜ん。上手い絵だ。けれど、これは随分前に書いたものでは? このタッチはまだ書き方に迷っていた時のやつに見える。


 う〜む。


 チャッチャッチャッと隣に絵を描く。もちろん、題材は同じで。結果は一目瞭然。自分的には今の方が明らかに上手い。


 違いは、鉛筆に入れる力の違いか? それとも、芯の硬さも関係あるかもしれない。今は2bだが、これは無駄に鉛筆の硬さを変えていた時のものに違いない。


 シンプルこそ最強だと言うのに。


 シャッシャッシャッ


 気持ちの良い音ともに、形作られる犬たち。



 10匹ほど描き終えて、「ふ〜」と息を吐けば


 01:06 の文字。


「……寝るか」


 こうして、テストを控えた前日の勉強は終わった。なぜだろうか、二重の意味に聞こえるな……。


 え? テスト結果はだって?


 察してくれ。


 なお、すくなくとも当初の目標を下回ったことは書き記しておく。





作者メモ


一言:なんて使いやすい言葉! むっちゃやりやすかった。


単語数3つ

・筆箱

・復習

・週明け月曜日


主要登場人物


起:明日はテストがある! ということで勉強中の主人公

承:ミスをしたので消しゴムで消して、ケシカスを捨てる

転:いつの間にか、犬の映像を見たり、絵を描いたり

結:結局、眠る時間に……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る