第27話 ダンジョン探索をしよう! ⑤
既に消えてしまったモンスターの遺体。 名残惜しそうに彼は立ち上がった。
先に進みながらアリッサが、
「ユウキさん、あのハンニバルの行動ってなんだと思います?」
――――と訪ねてきた。
「俺も、その事について考えていた。 ハンニバルが興味を抱く物と言えば、『スキル』の関係だろう」
「私もそう思います。思うのですが……」
言い淀むアリッサの気持ちはわかる。 先程、出現したモンスターたちに、どれほど『スキル』の要素が……それも、スキル研究の第一人者とも言えるハンニバルの興味を引くようなものがあったというのだろうか?
「う~ん」と俺は頭をひねった。 考えてみると確かに少しだけ奇妙な点はある。
ワイバーンに騎乗するコボルトの集団。
モンスターに騎乗するモンスターの例。珍しいが、ないわけではない。
例えば、魔狼に騎乗するゴブリン。 大きなスライムに騎乗する彷徨える騎士。
そう言えば、俺自身もミノタウロスに騎乗する競技の選手だったな。 忘れていた。
では―――ワイバーンに騎乗するコボルト―――俺がどこに奇妙な印象を持ったのか?
「そうか、そんな珍妙なモンスター。低層のダンジョンで出現することが珍しいのか」
考えて見れば、まだ4層……いや、何度か階段を下ったのだから、6層か。
6層で高速移動してくるワイバーンと戦うだけでも、高難易度ダンジョンの部類。
さながら『徘徊する怪物』のようにいるはずのない場所。出現するはずのない場所に出現していたのか……
「しかし、わからん! ワイバーンもコボルトもスキルを使用していた様子はなかったぞ」
『騎乗スキル』というものがあるが、あれは訓練された騎兵のように、どのような生物でも乗りこなすスキル。
けれども、あのコボルトたちに対して
「訓練された騎兵のように洗礼された戦い方だったか?」と問われたならば「NO!」と答えるレベルだろう。
少し昔の嫌な記憶が思い出されてきた。
騎乗スキルの上位系『人馬一体』を持つ奴と戦った事あるが、化物だった。
きっと呂布と赤兎馬ペアもあんな感じだったのだろうと、三国志最強武将を連想させるくらい強かったなぁ……
閑話休題
「あのモンスター、ワイバーンたちはスキルを使ってくるモンスターではなかった。それを前提に考えると……第三者的な、たとえば他のモンスターのスキルを使って操っていた。あるいは強化していた可能性はあるか?」
前に冒険者ギルドで、「オ、オデなら催眠スキルを使えるようになりたい!」なんて事を言ってた奴がいたのを思い出した。
それに、先の昇格試験で出会った召喚術士と魔物使いは『凶化』スキルを使ってモンスターを暴れさせていた。
モンスターを操ったり、強化するスキルを俺は体験済みということになる。
その事をアリッサに伝えると……
「確かにあり得ますね。何者かが、ダンジョン内のモンスターを操り、強化して暴れさせる事自体は……」
「何か腑に落ちない点でもあるか?」
「誰が、何のために? ダンジョンでモンスターを操って暴れさせるためのメリットはなんですか?」
おっと、ミステリでいう『フーダッニット、ハウダット、ホワイダット』ってやつだ。
要するに
フーダッニット 犯人は?
ハウダニット どうやって殺した?
ホワイダニット 何のために?
この場合だと、フーダッニットとホワイダニット…… 犯人と動機になるわけだ。
「そうだよな。ダンジョンのモンスターを強化させて、暴れさせる理由か。一部の冒険者が資源を独占したいから?」
「ないと思います」とアリッサは断言した。
「遭難事件そのものは35層で起きています。ハンニバルさんが追随しているのは、そこで何らかの『スキル』が使用されたから……と私は考えています」
「あぁ、なるほど。35層だと、上位冒険者しか入れないから、最初から資源は独占状態に近いのか」
事件はここで起きているのではない。35層で起きているのだ!
「そう考えると俺は35層で何が起きたのか具体的な状況を知らない」
わかっているのは、獅子のゼインという男の仲間たちが35層で遭難している事。
たしか、『徘徊する怪物』に教われ、パーティが瓦解した……だったよな?
ゼインを送り届けた時、彼は何かを持っていてギルド職員に渡してた事を思い出した。
それは、居場所をマッピングされた地図なのは間違いないが、他にも手紙のような物を渡してなかっただろうか?
そこに書かれていたパーティ瓦解の詳細をリリティに読み、ハンニバルが招集された。
いやいや、ハンニバルが同行しているだけで『スキル』関連の事案だと思い込んでいるが、それも思い少しかもしれないわけで……
「もうわかんねぇな、これ」と頭をパンクしそうになった。
「それじゃ、もう答え合わせしませんか?」
「うん? 答え合わせって何をするつもりだ?」
「聞けばいいじゃないですか、リリティさんやハンニバルさんに、35層で何が起きているのですか? って!」
彼女は、さも当たり前のように言ってみせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます