春のうらら

本日は春のうららという言葉がぴったりな具合で

雲一つない晴天、昔懐かしい春の香り、熱すぎず寒すぎずのちょうどのいい気温は幼い日々の感動を想起させる

しかしどうにも心は落ち着かない

「イケェー山田ァー!!」「抜かれるぞ江坂ァー!!」

まったく騒がしすぎるのだ、これさえ無ければ完璧であったのに

 さて今日は部活紹介から一夜あけ、皆が何処の部活に入ろかという話題で持ち切りな昼休みを過ごし、

昼の陽気が眠気を誘う、五時間目を耐えた六時間目、つまりは体育の時間である

ちなみに神崎川は五時間目の時点で学校に来ていなかったので今日は欠席であろう

そんな事はおいといて、今日は運の悪いことに100ⅿ走である

俺の運動能力が高ければ多少はましだったかも知れないがあいにく運動は得意ではないうえ、

春休みの自堕落な生活のおかげで

お世辞にも足が速いとは言えない

その証拠に一回目はビリであった

「おい小笠原、勝負しよぜ!」

話しかけてきたのは

「なんだサヴォタァジュ沢良木じゃないか」

「売れない芸人みたいな二つ名をつけるな!!」

「それで何だっけ?じゃんけんでもするのか?」

「投げやりだな…それじゃ最初はグー…じゃなくてだな!」

騒がしい奴め

こうしている間にも歓喜の声や悲哀の声があがり俺の番がすぐ次というところまで迫っていた

「じゃあなんだっていうんだい?」

俺が位置につきながら問うた途端、沢良木はほくそ笑み

「100ⅿ走だよ!!負けた方がジュウスおごりな!!」

そう叫んだ!!刹那!!ぱんと言う音が鳴り響いた


目には目を


「フっふーん実に清々しい気分だ、歌でも一つ歌いたいようないい気分だァ」

俺は有名なセリフを呟いていた

そうさっきの勝負、なんと沢良木がスっ転び、保健室へかつがれってた

やはり、天におわす方は善良なる俺を見守ったくれてるんやなって

「ところで、DIOやジョジョはなんで飛べたんですかね?」

俺はすかさず声の方を凝視した

「あぁなんだ神崎川か…」

「なんだって!」

少し神崎川は俺の肩に手をかけた

「ところでお前、今日休みじゃなかったのか?」

「いっいえ今日は用事があって」

神崎川はしゅんとなったどうやらこれ以上は聞かれたくないらしい

「まさか方向音痴で学校にたどりつけなかったとかいわないよな」

しかし俺は問うた!!

「いっいやァ?今日はいい天気ですねェ…」

神崎川はあからさまに目線を外し、肩を掴んだ腕は若干、俺を揺らしている

「ふっ図星か」

神崎川は涙目になりながら

「ああああああ!」

俺の肩を揺らした、

しかしマジで方向音痴で学校に遅れたってのか?

まあ俺の興味はもうその話題にはなかった

「ところで神崎川、なんでここにいるんだ?高校の体育ってやつは男女別で受けるもんじゃないのか?」

「ああああ!あ?あぁ…」

神崎川は肩を揺らす手を止めた

「うちの体育は男女一緒ですよ、何せ流石は工業高校、女子が極端に少ないですからね」

そういえばそうだその証拠にうちのクラスには神崎川以外、女子はいないのである

「ていうか男女別だったら、二人で組むやつできないじゃないですか、セルフボッチなんていやですよ」

「でもお前、ボッチがスタンダードだろ」

俺がそう言うと少しきょとんとした顔をした後に神崎川は俺の肩を激しく揺らし始めた

「やめろォ脳震盪になるわ!!」

俺の悲痛の叫びをあげるがその手は止まらない

ふと遠くに目をやるとベンチに白髪に白い肌、中性的な顔つきの奴がズボン型制服で座っていた

その姿は神秘的という表現が似合う程に神々しく見えた

だがその顔には表情というものがなかった、いや無表情という言葉では表せない程に表情がない

この時間に外にいるのだからおそらくはうちのクラスなのだろう

「おい神崎川ぁ!!止めろォ!!」

俺が再び叫ぶと神崎川はやっと肩を揺らすのをやめた

「おい神崎川、あのベンチに座っている生徒は誰だ?」

俺は顔で先ほどのベンチの方を指した

「ん?どこです?」

神崎川はとぼけた声で聞き返してきた

「ほらあのベンチのところいるだろ」

おれは指をさしたが

「そんなのいませんよ、目がおかしくなったんじゃないですか?」

やはり神崎川はすっとぼけていた

ふとベンチの方に目をしかしそこにやはりいる

たしかにそこにいるのにいない

全く不思議な奴だ

もし教室で見かけたら声をかけてみよう


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