ゲーム箱

おいくら・いくらヾ(⌒(_*Φ ﻌ Φ*

この箱の隙間が埋まるときまで

「あぁ、またまけたぁ」

「やった! これで5勝目!」

「やっぱり悠斗は強いな!」

「いやいや、大翔も強くなってきてるよ!」

「そう? それじゃあもっと強くなって悠斗に勝つぞ!」

「ちっち、甘いな。大翔が強くなっても、僕がもっと強くなればいいんだよ。」

「なんだと~! 絶対勝って見せるから覚えとけよ!」


悠斗と大翔は親友で、いつも一緒にゲームをしている。


「あ、そろそろ時間だ。帰らないと」

「もう? 今日は一段と早いね」

「うん、ちょっとな」


悠斗は大翔が変だとは思ったが、さほど気にしていなかった。


「それじゃあ、バイバイ!」


大翔が歩き始める。その後ろ姿は、妙に暗く思えた。


「悠斗、ごはんよ~」

「わかった~」

「あ、そうそう。ちゃんと大翔くんにお別れの言葉を言った?」

「え? お別れって!?」

「あれ?大翔くんから聞いてないの?実は大翔くんのお父さんが転勤で東京に行くことになったの。だから大翔くんも一緒に東京にいくのよ」

「あいつ...だから帰るときに元気がなかったのか...母さん、ちょっと行ってくる」


悠斗は、大翔とやっていたゲームのカセットが入ったカセットケースをゲーム箱から取り出して、ポケットに入れた。乱暴に靴を履き、飛び出すように玄関から出て走る。見えてきたのは、車に乗ろうとしている大翔の姿。


「ハァ...ハァ、大翔!」

「悠斗!? 何でここに!?」

「おい! なんで黙っていこうとしてたんだよ!」

「...悠斗に言うと、余計にさみしくなるから」

「そんなの...」

「もう行かなきゃ。バイバイ、悠斗」

「...わかった。それじゃあ、これをあげる。」


悠斗はポケットからカセットケースを取り出した。


「これは...今日やったゲーム。」

「うん。そして、またここに来たら返してね!」

「わかった! その時になるまでにいっぱい練習して、悠斗に勝てるぐらいに強くなるから!それまでまっててね!」

「わかった! ゲーム箱の隙間が埋まるときまで...バイバイ!」

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